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「賃金カーブのフラット化」とは何か?
「賃金カーブ」とは、年齢や勤続年数に伴って従業員の給与がどのように上がっていくかを示すグラフの線のことです。かつては、若手のうちは給与が低く、年齢を重ねるにつれて右肩上がりに急上昇していくカーブを描くのが一般的でした。しかし近年、若い世代の給与が上がる一方で、中高年層の給与が下がり、全体的な傾きが緩やかになる「賃金カーブのフラット化」と呼ばれる現象が起きています。
1. なぜ賃金カーブのフラット化が起きているのか?
このフラット化の最大の要因は、初任給や最低賃金の急激な引き上げです。企業は人材を獲得・定着させるため、若手社員の給与を早期に引き上げる必要に迫られています。しかし、企業が人件費として配分できる総額(原資)には限りがあります。結果として、若年層の賃金を引き上げるためのしわ寄せが中高年層に向かい、既存社員の定期昇給が抑えられるなどして、中高年層の賃金が削られる形で調整されてしまっているのが実態です。
2. 既存社員・中高年層の「不満増大」と「転職リスク」
フラット化が進むと、若手と中高年との間の給与格差が縮小し、場合によっては後輩社員との差がほとんどなくなることもあります。長く働けば順調に給与が上がると思っていた中堅・ベテラン社員にとって、給与が伸び悩むことは「会社への貢献が評価されていない」「頑張っても給与に反映されない」という不満やモチベーションの低下に直結します。さらに、昨今は転職市場でも賃金が上昇しており、これまで転職が難しいとされた40代などの氷河期世代でも、転職によって年収が上がるケースが増えています。より良い条件を求めて、会社の中核を担う中堅社員が流出してしまう「転職リスク」が非常に高まっているのです。
3. 「中途採用者との給与ギャップ」という組織の歪み
既存社員の給与が上がらないまま放置していると、新たな問題も発生します。それが中途採用時の「給与ギャップ」です。中途採用市場の賃金水準が上がっているため、新たな人材を採用しようとすると、既存社員よりも高い給与を提示しなければならないケースが増えています。その結果、同じような仕事をしているのに中途入社の人の方が給与が高いという逆転現象が起き、組織内にさらなる不満や軋轢を生み、既存社員が辞めてしまうという悪循環に陥る危険性があります。
おわりに:フラット化を防ぎ、貢献度に報いる賃金制度への転換を
賃金カーブのフラット化がもたらす離職を防ぐためには、年齢や勤続年数だけで自動的に給与が上がる「年功的」な仕組みから脱却する必要があります。等級制度などを活用し、若手であれ中高年であれ、会社への「貢献度」や「役割」に応じてはっきりとメリハリをつけて賃金を配分する制度への見直しが求められています。会社の限られた原資を誰にどう配分するのか、納得感のあるルール作りを急ぐべきタイミングに来ていると言えるでしょう。

