同一労働同一賃金の集団指導が強化へ 熊本県内中小企業が今すぐ見直したい基本給・賞与・説明準備

同一労働同一賃金の集団指導が強化へ 熊本県内中小企業が今すぐ見直したい基本給・賞与・説明準備

厚生労働省が、同一労働同一賃金の遵守徹底に向けて、集団指導の場を活用した企業への働きかけを強めています。今回の運用変更で注目したいのは、説明会で配布される「自主点検票」です。そこでは、基本給や賞与について、正社員とパート・有期雇用労働者との待遇差の有無だけでなく、基本給が「正社員の6割未満」であるかまで確認する内容となっています。熊本県内の中小企業にとっても、これは“いずれ見直すべき課題”ではなく、“今すぐ点検すべき実務”になったといえます。

同一労働同一賃金の指導は「個別対応」から「集団周知」へ一段強化

労働新聞の報道によれば、厚生労働省は令和7年9月から、労働基準監督署や都道府県労働局の説明会・セミナーなどの場で、同一労働同一賃金に関する自主点検票を配布し、企業に対して遵守の徹底を要請する運用に改めています。

これまで同一労働同一賃金は、「裁判例やガイドラインは知っているが、実際の自社対応は後回しになっている」という企業も少なくありませんでした。しかし今回の運用変更は、行政がより実務レベルでの確認に踏み込もうとしていることを示しています。

特に中小企業では、
・昔からの賃金体系をそのまま使っている
・正社員とパートで支給ルールが慣行的に分かれている
・なぜ差を設けているのか説明資料がない
といった状態が起こりがちです。

このような状況のまま説明会や指導対応を迎えると、「合理的説明ができない」というリスクが表面化しやすくなります。

自主点検票で企業に問われるポイント

今回の自主点検票の内容を見ると、行政がどこを見ようとしているのかがよく分かります。

たとえば基本給では、
「正社員とパート・有期で差がないか」
「差がある場合、パート・有期の基本給は正社員の6割未満か」
を確認する形式になっています。

また賞与についても、
「支給の有無に差があるか」
「正社員には支給しているが、パート・有期には支給していないか」
を点検する項目があります。

ここで重要なのは、「6割未満なら即違法」と単純に決まるわけではない一方で、こうした数値や支給実態が、行政上も“注意を要する差”として見られやすいことです。つまり企業としては、差があること自体よりも、その差を職務内容・責任・配置変更の範囲・成果期待などに照らして説明できるかが問われます。

熊本県内中小企業が特に注意したい実務上の落とし穴

熊本県内の中小企業では、人材確保の観点からパート・有期社員の戦力化が進む一方、賃金制度は正社員中心のままというケースが多く見られます。

その場合、次のような点は要注意です。

第一に、「何となく違う」が最も危険です。
基本給や賞与の差について、就業規則や賃金規程には書いてあっても、その根拠が曖昧なことがあります。規程があることと、合理的に説明できることは別問題です。

第二に、「昔からそうしている」は説明になりません。
同一労働同一賃金では、歴史的経緯や慣行だけでは不十分です。現在の職務内容や責任との対応関係で説明する必要があります。

第三に、「聞かれたら考える」では遅いという点です。
自主点検票には、待遇差の説明義務について「聞かれたことはないが準備はしているか」まで問う項目があります。つまり行政は、説明を求められてから対応するのではなく、平時から説明準備ができているかを見ています。

今のうちに取り組みたい3つの見直し

今後の指導強化を踏まえると、企業としては少なくとも次の3点を進めておきたいところです。

まず1つ目は、正社員・パート・有期社員の賃金と手当を一覧化することです。
基本給、賞与、通勤手当、各種手当について、「誰に、いくら、どんな基準で支給しているか」を見える化するだけでも、問題点はかなり見つかります。

2つ目は、待遇差の理由を書面化することです。
「責任の重さ」「担当業務の範囲」「異動の有無」「成果への期待」など、差を設ける理由を言語化し、就業規則や賃金規程、説明用メモに落とし込むことが重要です。

3つ目は、説明を受けた管理職・担当者を社内に置くことです。
経営者だけが理解していても、現場で質問を受ける総務担当者や管理職が説明できなければ、実務上は不十分です。

まとめ

今回の運用変更は、同一労働同一賃金が「理念」から「点検・説明を求められる実務」へ、さらに一歩進んだことを意味します。特に自主点検票の内容を見ると、厚生労働省は基本給や賞与の差、そして説明準備の有無まで具体的に確認しようとしています。

熊本県内中小企業にとって大切なのは、指導を恐れることではなく、自社の制度を整理し、説明できる状態に整えることです。人手不足の時代だからこそ、納得感のある待遇設計は、法令対応であると同時に採用・定着にもつながります。

「うちは大丈夫だろうか」と少しでも感じた場合は、基本給と賞与の支給実態、そしてその説明根拠を、まず一度棚卸ししてみることをお勧めします。

参考情報

労働新聞「同一労働同一賃金 遵守徹底へ集団指導強める 7年9月に運用変更 厚労省・通知」

https://www.rodo.co.jp/news/215828/