警備業の死亡災害が多発――新宿労基署の指導強化に学ぶ、熊本の中小企業が取るべき安全対策

東京都・新宿労働基準監督署が、警備業での死亡災害が相次いだことを受けて監督指導を強化しています。3件すべてが50代以上の警備員による事故だったという報道を受けて、熊本県内の中小企業、とくに建設業や交通誘導業務に従事する企業にとっても他人事ではありません。本稿では、今回の事例をもとに、労働災害防止のために経営者が取り組むべき対策を考察します。
なぜ新宿労基署が動いたのか
2024年、新宿労基署管内で発生した死亡災害は3件。すべてが警備業で、被災者は全員50歳以上。事故の内訳は、車両誘導中の交通事故、階段からの墜落、解体工事現場での飛来物との衝突でした。
このように、業務内容に起因するリスクに加え、加齢による身体能力の低下も無視できない要因です。
熊本でも同様のリスクが
熊本市内を含む県内でも建設現場やイベント会場などでの交通誘導業務は多く、高年齢の警備スタッフが現場に出るケースも一般的です。高齢化の進行と人手不足により、未熟練者の現場投入や教育不足が懸念されます。こうした背景は、都市部に限らず地方でも共通です。
経営者が今すぐ取るべき3つの安全対策
1. 教育・指導の強化
業務前のKY(危険予知)活動、死角への立ち入り禁止などを明文化し、マニュアルだけでなく実地訓練も取り入れましょう。
2. 年齢に応じた配慮
高齢者には階段使用や長時間の立ち作業を避け、作業前のストレッチや準備運動を励行する体制を整えましょう。
3. 作業計画の明確化
車両の動線や重機の特性を理解したうえで、警備配置や避難経路を事前に共有し、日々更新できるようにします。
最後に
労働災害は「ヒヤリ・ハット」の積み重ねの先に起こります。安全対策はコストではなく、企業の信頼と人命を守る投資です。熊本県内の中小企業でも、今回の新宿労基署の事例を他山の石とし、ぜひ現場の見直しを進めていただきたいと思います。
安全第一で、企業も、働く人も、守っていきましょう。
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