就業規則で企業文化を育てる!中小企業こそ挑みたい“第二段階”の形

就業規則は「法律で決められているから作るもの」と思っていませんか?
確かに最低限の整備は必要ですが、それだけで終わってしまうのは非常にもったいないことです。
就業規則には、企業の価値観や文化を社員と共有する“攻めのツール”としての可能性があります。
今回は、就業規則を「会社らしさ」を育てる制度へと進化させる“第二段階”の考え方について、中小企業の事例を交えながらお伝えします。
就業規則は“守り”から“育てる”ツールへ
「就業規則」と聞くと、法的トラブルを避けるための“守り”の道具と思われがちです。実際、従業員数が10名未満の企業でそもそも就業規則が存在しない、あるいは何年も更新されていないといったケースは珍しくありません。
そのような状況では、たとえば解雇や懲戒が法的に適切に行えない、休職制度が使えない、ハラスメント防止のルールが明文化されていないなど、重大なリスクを抱えることになります。これは「第一段階」の課題であり、早急な整備が必要です。
しかし、ここで終わってしまってはもったいないのです。就業規則は、企業理念や価値観を社内に浸透させる“攻め”のツールにもなります。企業文化を制度として定着させ、社員との信頼関係を深める“第二段階”の就業規則こそが、これからの中小企業に求められる姿です。
第一段階の就業規則とは何か?
就業規則の整備には“段階”があります。その第一段階は、法律で求められる最低限のルールや、会社を守るためのリスク対策として機能する規則を整えることです。
具体的には、労働時間・賃金・服務規律・懲戒・退職・休職といった基本的な事項を定め、従業員とのトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。さらに、ハラスメント防止規定の未整備や、数年前から内容を見直していない就業規則は、トラブル時に会社の立場を危うくするリスクも高くなります。
この第一段階は「最低限」であっても、決して軽視できるものではありません。むしろ、ここができていなければ就業規則が存在しても形骸化しており、制度として機能しないこともあります。まずはこの土台をしっかり固めることが、次のステップにつながる重要な出発点なのです。
第二段階の就業規則で企業が変わる
ある製造業の中小企業では、従業員が10名を超えた段階で第一段階の就業規則を整備しました。懲戒や休職の制度、ハラスメント防止の規定などをきちんと設けたことで、会社としての“守り”の土台はできました。
しかし、その後社内の雰囲気や人材定着には大きな変化が見られず、「何かが足りない」と感じた社長は、顧問の社労士に相談し、第二段階の就業規則づくりに着手することにしました。
まず経営理念や社長のメッセージを就業規則の冒頭に明記し、次に顧問社労士のサポートのもとで、全社員との意見交換の場を複数回設けて、“この会社らしい働き方のルール”を一緒に検討していったのです。
その結果、社員の納得感が高まり、自発的にルールを守ろうという空気が職場に生まれました。また、「うちの会社の考え方が明文化されていて安心できる」という声も上がり、職場に一体感が生まれるきっかけにもなりました。
企業文化を“カタチ”にする就業規則づくり
第二段階の就業規則づくりは、ただの制度設計ではありません。会社がどんな想いで経営しているのか、どんな職場を目指したいのかを“ルール”という形で社員と共有する、大切なコミュニケーションの一つです。
まずは、経営理念や会社の価値観を見直すところから始めましょう。そして、それを就業規則にどう反映させていくかを、社員と一緒に考えていくプロセスが何より大切です。
「こんなルールがあれば働きやすくなる」「うちの会社らしいってこういうことだよね」といった声を取り入れていくことで、社員の納得感や主体性も自然と育っていきます。
とはいえ、どこまで自由に決めてよいのか、法的に問題がないかなど、不安もあるはず。そんなときこそ、社労士のサポートが活きてきます。企業の想いを尊重しながら、しっかり制度に落とし込む。そんな就業規則づくりを、ぜひ一緒に進めてみませんか?
“うちの会社らしいルール”を一緒に作りませんか?
就業規則は、単なる法的なルール集ではありません。企業の考え方や働き方の価値観を社員と共有する、大切なメッセージツールでもあります。
まずは第一段階として、リスクを回避するための最低限の整備をしっかりと。そのうえで、ぜひ第二段階に踏み出し、「この会社で働くことの意味」を形にしていく就業規則づくりに挑戦してみてください。
就業規則が変われば、社員の意識が変わり、組織の文化が育っていきます。
その第一歩を、一人で悩まず、専門家と一緒に始めてみませんか?
“うちの会社らしいルール”をつくるお手伝い、社労士として全力でサポートいたします。
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