実質賃金プラス定着のカギは「中小企業の持続的賃上げ」――2025年春闘の最終集計から読み解く

連合が発表した2025年春闘の最終集計によると、平均賃上げ率は5.25%と高水準を維持したものの、中小企業に限ると4.65%にとどまり、連合目標の「6%以上」には届きませんでした。熊本をはじめとする地方の中小企業経営者にとって、持続的な賃上げと実質賃金のプラス定着は、いまや企業経営の重要テーマです。この記事では、賃上げの現状と課題、そして中小企業がとるべき戦略的対応について考察します。
春闘賃上げ率、平均5.25%でも中小企業は目標未達
2025年春季労使交渉(春闘)で、連合が掲げた「全体で5%以上」という目標は達成されました。しかし、組合員300人未満の中小企業では賃上げ率が4.65%と目標の6%には及ばず、大企業との差が依然として存在しています。この背景には、業績回復が十分でないことや、インフレ高止まりによるコスト増への対応が影響しています。
実質賃金マイナスの継続とその意味
厚生労働省の統計によると、2025年4月の実質賃金は前年比2.0%減で4カ月連続のマイナス。賃金が上昇しても物価上昇を上回らなければ、従業員が生活の向上を実感することはできません。5月以降の賃上げ分が統計に反映される見通しですが、実質賃金のプラス定着には、継続的・構造的な賃上げが必要です。
賃上げ余力と労働分配率の地域差・企業規模差
財務省の法人企業統計によれば、資本金1000万〜1億円未満の企業では労働分配率が70.21%と前年より上昇。一方、10億円以上の企業は36.81%と低下傾向。中小企業はすでに人件費に多くを割いており、さらなる賃上げには限界があります。熊本のような地域では、賃上げによる人材定着と経営の持続可能性の両立が求められます。
中小企業がとるべき戦略的アプローチ
- 業績連動型・評価連動型の報酬設計:固定給ではなく、成果や業績に応じた変動報酬制度を導入することで、従業員のモチベーション向上と経営の柔軟性を確保。
- 補助金・助成金の活用:熊本県や国の賃上げ支援施策を積極的に活用し、財源の確保を図る。
- 人材育成と生産性向上:研修投資や業務プロセス改善による付加価値向上が、長期的な賃上げ余力につながります。
まとめ
2025年春闘の結果から見えるのは、「実質賃金のプラス定着」が単なる賃上げだけでは達成できないという現実です。熊本県内の中小企業においては、単年度での対応ではなく、持続的な人材投資と経営戦略の見直しが不可欠です。当研究所では、賃上げ戦略の設計から助成金活用、制度構築まで総合的に支援しております。ご相談はお気軽にどうぞ。
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