「人手不足倒産」上半期過去最多――熊本の中小企業も直面する雇用危機と対策の視点

2025年上半期、「人手不足」が一因となった企業倒産が過去最多を更新しました。特に中小企業にとっては、賃上げ圧力と人材流出の板挟みが深刻です。熊本県内の中小企業経営者の皆さまに向けて、現状分析とともに実務的な対策のヒントをお届けします。
「人手不足」関連倒産が過去最多に
東京商工リサーチの調査によると、2025年上半期(1-6月)に「人手不足」が一因とされた企業倒産は全国で172件。前年同期比17.8%増と過去最多を記録しました。内訳は「求人難」68件、「従業員退職」54件、「人件費高騰」50件と、いずれも増加しています。
熊本県内中小企業への影響
熊本でも同様の構造が進行しています。とくに資本金1千万円未満の企業では、「急な退職」「求人しても来ない」「賃上げできない」の三重苦に直面。大手企業のように事業選択・人員整理が難しい中小企業では、現場維持すら困難という声が相次いでいます。
賃上げの波に「乗る」か「のまれる」か
人材確保のための賃上げが避けられない一方で、資金繰りに直結する人件費負担の増加はリスクでもあります。とはいえ、賃金水準を下回るままでは「従業員退職」が止まらず、採用・教育コストの連鎖的負担が生じる悪循環に陥ります。
実務的な対策とは
- 定着率改善:給与以外の待遇(柔軟な勤務制度、福利厚生の充実など)も重視しましょう。
- 採用戦略の見直し:ハローワーク以外の媒体や紹介制度の活用、パート・副業人材の受け入れも一考です。
- 人件費コントロールの仕組み化:単なる賃上げでなく、評価制度・等級制度を通じた「納得の昇給」を設計することが重要です。
まとめ
人手不足による倒産は、経営努力だけでは防ぎきれない構造的な課題になりつつあります。しかし、経営者の意思決定次第で、リスクを最小限に抑える戦略は存在します。労務の視点から、熊本の中小企業の皆さまに必要なのは「人材を守るための仕組みづくり」と「持続可能な経営モデルの再設計」です。
採用・定着・制度設計の具体策については、ぜひ当事務所にご相談ください。
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