シフト制の運用、見直しはできていますか?
厚生労働省は令和8年6月、「いわゆるシフト制」に関する留意事項を改正しました。
今回の改正では、特にシフト制で働く従業員の年次有給休暇(年休)の取扱いについて、実務上の疑問が多かった点が整理されています。
熊本県内でも、小売業、飲食業、介護・福祉、医療、サービス業など、多くの企業でシフト制が採用されています。
「本人の希望に応じて毎月シフトを組んでいるから問題ない」
「アルバイトだから年休は関係ない」
このような認識のまま運用していると、思わぬ労務トラブルにつながる可能性があります。
今回は、改正内容と企業が確認しておきたいポイントを解説します。
「シフト制」とは?
ここでいう「シフト制」とは、勤務日や勤務時間があらかじめ固定されておらず、毎月または一定期間ごとに勤務日を決定する働き方を指します。
パート・アルバイトだけでなく、契約社員や正社員でも採用されているケースがあります。
柔軟な働き方を実現できる一方で、
- 労働日数が変動する
- 年休の付与日数が分かりにくい
- 労働条件が曖昧になりやすい
という特徴があり、労使間のトラブルも少なくありません。
今回の改正ポイント
令和8年6月の改正では、主に年次有給休暇について次の内容が追記・整理されました。
① 年次有給休暇の付与日数を明確化
シフト制だからといって、年休が付与されないわけではありません。
週の所定労働日数に応じて、
- 通常付与
- 比例付与
のいずれかが適用されます。
パート・アルバイトであっても、一定の要件を満たせば年休は法律上の権利です。
② 所定労働日数が決めにくい場合の考え方
シフト制では、
「毎月勤務日数が違う」
というケースが珍しくありません。
今回の改正では、このような場合にどのように所定労働日数を判断するのかについても整理されています。
採用時の契約内容や実際の勤務実績などを踏まえ、適切に判断することが求められます。
③ 年休取得時の賃金計算
年休を取得した日の賃金についても、
- 通常の賃金
- 平均賃金
- 健康保険法の標準報酬日額
など、就業規則等で定める方法に従って適切に支払う必要があります。
特にシフト制では勤務時間が日によって異なるため、賃金計算を曖昧にしないことが重要です。
中小企業が確認したい3つのポイント
今回の改正を機に、次の3点をぜひ確認してみてください。
① 雇用契約書の内容
勤務日数やシフト決定方法が曖昧になっていないでしょうか。
労働条件通知書や雇用契約書には、シフトの決定方法や労働条件をできるだけ具体的に記載しておくことが重要です。
② 年休管理は適切か
パート・アルバイトだからといって年休管理をしていない企業も見受けられます。
年休管理簿の整備や付与日の確認を行い、法令に沿った運用が求められます。
③ シフト変更のルール
会社都合による急なシフト変更や勤務日削減は、従業員との信頼関係を損ねるだけでなく、トラブルの原因にもなります。
シフト変更のルールをあらかじめ決め、従業員にも十分説明しておくことが大切です。
労務トラブルを防ぐために
シフト制は、人手不足への対応や多様な働き方を実現するために欠かせない制度です。
一方で、「柔軟だからこそルールを明確にすること」が、企業と従業員双方にとって安心につながります。
今回の厚生労働省の改正は、新しい義務が大幅に追加されたというよりも、「これまでのルールを分かりやすく整理し、年休管理を適正に行いましょう」というメッセージといえます。
今後も人材確保が重要になる中、適切な労務管理は企業の信頼にも直結します。
一度、自社のシフト運用や年休管理を見直す機会として活用してみてはいかがでしょうか。
社会保険労務士からひと言
シフト制に関するご相談では、「契約書が実態と合っていない」「年休の付与方法が分からない」「シフト変更をどこまで会社判断で行えるのか」といったご質問を多くいただきます。
制度は知っていても、実際の運用で悩まれる企業は少なくありません。
熊本県内でシフト制の運用や労務管理に不安を感じている経営者・ご担当者様は、早めに専門家へ相談することで、将来の労務トラブルを未然に防ぐことができます。
適切な労務管理は、従業員が安心して働ける職場づくりと、企業の持続的な成長につながります。
参考情報
厚生労働省 いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項(令和8年6月19日改正)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22954.html

