「ストレスチェック制度」とは?実施方法と労務顧問の役割
ストレスチェック制度とは?実施方法と労務顧問(社労士)の役割をわかりやすく解説
働く人のメンタル不調は、休職・離職だけでなく、生産性低下や職場の人間関係悪化にも直結します。そこで重要になるのが「ストレスチェック制度」です。単にアンケートを配って終わりではなく、結果通知、必要時の医師面接、集団分析から職場改善までをつなげて初めて制度の効果が出ます。さらに近年の法改正で、これまで「努力義務」だった小規模事業場にも義務化が拡大する方向が明確になり、準備の重要性が一段と高まっています。
ストレスチェック制度の定義と目的
ストレスチェック制度は、労働者のストレス状況を定期的に検査し、本人に結果を通知して“気づき”を促すとともに、高ストレス者には医師による面接指導の機会を与え、必要に応じて就業上の措置(配置転換・労働時間の配慮など)につなげる仕組みです。さらに、個人情報に配慮しつつ集団分析を行い、職場のストレス要因を把握して環境改善につなげる「一次予防」が中核です。
対象となる事業場と義務の範囲(2026年1月11日時点の最新)
従来は「常時使用する労働者が50人以上」の事業場に年1回の実施が義務でした。一方、50人未満は当分の間“努力義務”でしたが、2025年5月14日に公布された改正(令和7年法律第33号)により、50人未満の事業場にもストレスチェック実施を義務化する方針が法律上明記されました。施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」とされ、2026年1月11日時点では具体的な施行日が確定していないため、“義務化に向けた準備期間”と捉えるのが実務的です。
実施までの準備:社内ルールと体制づくりが8割
運用の成否は事前設計で決まります。まず、実施方法(紙・WEB)、実施時期、実施者(医師等)と実施事務従事者、外部委託の範囲、結果の保管方法、同意取得のフロー、不利益取扱い禁止の周知などを「実施規程」として整えます。ここで労務顧問(社労士)が強いのは、就業規則・個人情報・労務運用の整合を取りながら“揉めない設計”に落とし込める点です。衛生委員会の活用や議事録整備も、監査・トラブル予防の観点で重要です。
ストレスチェックの実施手順:配布→評価→結果通知
一般的には質問票の配布・回答、ストレス状況の評価、本人への結果通知という流れです。代表的な質問票として「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」等が使われます。注意点は、ストレスチェックは健康診断と違い、労働者に受検義務がないことです。受検率を上げるには「目的は評価ではなく予防」「結果は本人の同意なく会社に渡らない」など、制度趣旨を丁寧に周知するのが近道です。労務顧問は周知文・FAQ作成、管理職研修(不利益取扱い禁止、声かけ方法)まで一体で支援すると効果が出ます。
個人情報と同意:結果を“誰が見られるか”が最大のリスク
ストレスチェックで扱う情報はセンシティブで、運用を誤ると信頼が崩れます。事業者が個人結果を取得するには原則として本人同意が必要で、同意のない結果を人事評価や配置判断に使うことは厳禁です。また、高ストレス判定や面接申出を理由に不利益取扱い(降格、退職強要、契約更新拒否など)をすると、法令違反リスクだけでなく、労務紛争・風評にもつながります。社労士は、同意書式や情報の流れ(閲覧権限・保管期間・委託先管理)を“運用できる形”に設計し、現場に定着させる役割を担います。
高ストレス者への面接指導と就業上の措置
高ストレスと判定された労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施する義務があります。面接後は、医師の意見を踏まえ、労働時間の短縮、業務量調整、配置転換、休業措置などを検討します。ここは医学的判断と人事労務のバランスが必要で、産業医(または面接指導医)・人事・現場責任者・労務顧問の連携が欠かせません。社労士は、措置内容が就業規則・休職制度・安全配慮義務と矛盾しないかを点検し、記録化・説明方法まで含めてリスクを下げます。
集団分析と職場改善:やらないと“ただのアンケート”になる
制度の本丸は、個人のケアに加えて職場の改善につなげることです。集団分析は職場単位でストレス要因を可視化し、業務設計・人員配置・コミュニケーション・ハラスメント対策・長時間労働是正などの打ち手につなげます。改善策は大掛かりでなくても、会議体の見直しや業務の棚卸し、繁忙期の応援体制、相談窓口の整備など“小さく始めて継続”が現実的です。労務顧問は、過重労働対策やハラスメント防止とセットで改善計画を作り、施策の実行と検証(PDCA)まで伴走できます。
50人未満の事業場が今から備えるポイント
義務化の施行日が未確定でも、先に体制だけ整えておくと負担が分散します。小規模では産業医確保が課題になりやすいため、外部委託や地域産業保健センター等の支援を組み合わせ、面接指導の受け皿を確保しておくのが現実的です。併せて、個人情報の扱いと同意の運用、管理職の対応(声かけ・相談導線)を先に固めると、制度が“形骸化”せずに回り始めます。
まとめ:法改正の流れを踏まえ、労務顧問と“揉めない運用”を
ストレスチェック制度は、実施そのものよりも「結果の扱い」と「面接・就業措置」「職場改善」まで含めた設計が重要です。2026年1月11日時点では、50人未満事業場への義務化が法律上決まっており、施行日を待つフェーズに入っています。今のうちに、実施規程・委託先管理・同意フロー・不利益取扱い防止・衛生委員会運用を整えておけば、施行後も慌てず対応できます。制度導入や運用に不安がある場合は、産業医等の専門職と連携できる社労士(労務顧問)に相談し、自社の実態に合った“継続できるストレスチェック制度”へ落とし込むことをおすすめします。
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