中高年の人材が企業を救う時代へ リストラではなく「活用」の視点を熊本の中小企業へ

少子高齢化が進む中、日本企業の人材構成にも大きな変化が起きています。最新の調査では、45歳以上の中高年が社員の半数以上を占める企業が全体の64%に達しました。特に人手不足が深刻な地方の中小企業にとって、中高年人材は「切る対象」ではなく「活かす対象」に変わりつつあります。本稿では、このトレンドを熊本県内の中小企業がどう捉え、経営や人事戦略に取り入れるべきかを解説します。
45歳以上が半数を超える企業が6割超 進む企業の高齢化
東京商工リサーチの調査によると、45歳以上の社員が半数以上を占める企業は64%。運輸業や建設業など熊本にも多い業種でその割合は70〜80%に達しています。つまり、もはや「高齢化」は一部の企業の課題ではなく、広く中小企業が直面する共通の現実です。
「リストラしない」が主流 99%の企業が早期退職を検討せず
意外にも、調査では99%の企業が早期退職や希望退職を「実施も検討もしていない」と回答。これは、業績低迷と高給与が重なる一部上場企業を除けば、中小企業においては「人材は貴重な資源」として捉え直されている証左といえます。
50代の転職が12倍 キャリア経験が地域企業に求められている
リクルートエージェントによると、50代の転職者数は10年前の12倍。企業経営の現場では、専門性と経験を持つ中高年人材が「即戦力」として重宝されつつあります。特に内部統制、IPO準備、経営企画などの分野では、大企業での経験を持つ人材が地方企業の改革を支えています。
熊本の中小企業こそ「中高年活用」の先進事例になれる
熊本では、建設業、農業、運輸業など人材確保が難しい業種が多く、働き盛りの中高年の力が必要不可欠です。「再雇用」や「定年延長」だけでなく、「顧問的ポジション」や「兼業・副業での関わり」など、柔軟な活用が企業の持続可能性を高める鍵になります。
まとめ
「人が足りない」「若い人が採れない」と嘆くより、まず今いる人を最大限活かす視点が重要です。年齢ではなく「できること」に目を向けた人事戦略が、熊本の中小企業の未来を拓くと私は考えます。
特定社会保険労務士 荻生清高(社会保険労務士 荻生労務研究所)
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