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人事労務ニュース

教員を守る「カスハラ」対策 ― 中小企業が東京都教育委員会(都教委)の骨子案に学ぶべきポイント

学校現場での保護者から教員への「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を念頭に、都教委が新たにガイドラインの骨子案を示しました。中小企業における従業員対応やクレーム対応にも通じる示唆が多く、経営者・人事担当者の皆さまにとっても見逃せない内容です。

ニュースの概要

都教委は、教員が保護者からの過剰な要求・暴言などにさらされる「カスハラ」を防ぐため、面談・電話対応のルールを整理したガイドライン骨子案を公表しました。

骨子案の主なポイントは以下です。
・保護者から求められた面談は「原則30分以内(必要があれば1時間程度)」
・面談・電話通話を録音・記録することを義務付け
・1~2回目の面談は複数教員で対応、3回以降は管理職が、4回目からは弁護士・心理士も同席、5回目以降は弁護士単独で対応

都教委は、今年4月に全国初となる「カスハラ防止条例」を施行しており、学校現場での実効性を高めるため骨子案を今後ガイドラインとして年度内にまとめ、来年度から都立学校での運用を予定しています。

中小企業経営者にとっての意味・示唆

教員・学校現場の話ながら、これは「職場でのクレーム対応」「従業員を守る体制づくり」という観点で中小企業にも十分に応用可能な内容です。以下、ポイントを整理します。

(1) 対応時間・回数の区切り

教員が「無制限・場当たり的」に保護者対応を繰り返すと、業務に支障を来し、疲弊やミスの温床になります。都教委が「原則30分以内/必要に応じ1時間」「回数ごとに対応レベルを上げる」というルールを示したことは、対応に上限・構造化を設けるという点で参考になります。
→ 中小企業でも、顧客・クレーム対応・問い合わせ対応において「1回あたり◯分まで」「〇回以上は責任者同席」などをあらかじめ決めておくことで、現場の負荷軽減・リスク低減に繋がります。

(2) 記録・録音という「証跡」確保

面談・通話を録音・記録することが明記されている点も重要です。何が言われたか・どのように対応したかを証拠として残すことで、後のトラブルや過剰な要求に対する対応に備えることができます。
→ 中小企業でも「対応履歴の記録」「重要な通話は録音・ログ化」「クレーム・問い合わせのエスカレーション記録」を制度化することで、従業員を守る、かつ会社として説明責任を果たす体制が整備できます。

(3) 段階的対応・専門家介入の設計

都教委の骨子案では、対応回数が進むにつれ、責任・対応レベルを段階的に引き上げ、最終的には弁護士が単独対応という流れを設定しています。これは「軽度 → 組織責任者 → 外部専門家」の構造を示しており、リスク管理の観点で有効です。
→ 経営者・人事担当者は、自社において「初期段階は現場対応で」「エスカレーション段階には管理職・人事部門を」「更に重大化したら法務・顧問弁護士等を含める」というフロー設計をあらかじめ策定しておくことが望ましいです。

(4) 従業員の「守る体制づくり」と制度的な裏付け

このガイドライン案が示すのは、単なる応急対応ではなく、制度・体制として教員を守ろうという姿勢です。これは、従業員が「自分が相談できる」「会社が守ってくれる」という安心感をもつことにもつながります。
→ 中小企業においても、クレーム対応・顧客からの理不尽な要求に直面する従業員を守る制度(相談窓口・記録体制・エスカレーションルートなど)を整えておけば、離職抑制・モチベーション維持・企業ブランド向上にも資します。

熊本県内中小企業向けの具体対策提案

― 当事務所の顧問先にも推奨する実務プラン ―
1. 「顧客面談/クレーム対応」時間・回数のルール化
・面談・電話応対の上限時間(例:30分/1回)を設ける
・一定回数以上の再対応は管理職も同席とする社内基準を設ける
2. 「対応記録・証跡」のルール作成
・重要な面談・電話については録音・ログを残す(社内ルール・従業員説明)
・クレーム対応履歴をフォーマット化し、対応者・日時・内容・結果を残す
3. 「対応レベルの段階化」フロー策定
・初期:担当者対応
・次段階:管理職・人事部門同席
・最終:法務・社外顧問弁護士を含めて対応
4. 従業員への「守る制度」の告知・浸透
・従業員向けハンドブックに「顧客から過度な要求を受けた場合の社内報告フロー」などを明記
・定期的な研修・情報共有(「こんな要求が実際にあった」「どのように対処したか」)
5. 定期的な制度レビュー・改善
・対応ルールが機能しているか、過去クレームの傾向・対応実績を振り返る機会を設ける
・必要であれば社外専門家(弁護士・顧問社労士など)と連携し、体制を強化

まとめ

今回、都教委のガイドライン骨子案は、教員という立場の「職場」の問題でありながら、実はあらゆる企業の「顧客対応」「従業員保護」「クレーム・理不尽要求への備え」という構造と重なります。
熊本県内で中小企業を経営されている皆さまにおいても、「顧客=正しい」「お客様は神様」という従来の固定観念に頼らず、現場に立つ従業員を守る体制を整備することが、長期的に企業の持続可能性・社員の安心感・トラブル抑止に資すると私は考えます。
本稿を機に、ぜひ自社の顧客対応ルール・従業員保護制度を見直してみてください。

荻生労務研究所では、カスタマーハラスメント対応マニュアルの作成や、相談窓口・相談体制構築のご相談を承っております。お気軽にご相談ください。

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