就業規則、スタートアップでも本当に必要?

自由と無秩序は紙一重。制度なき会社が抱える見えないリスクを、今回は考えてみましょう。
「うちみたいな小さな会社に就業規則なんて必要?」
スタートアップや大学発ベンチャーの経営者から、こんな声をよく聞きます。
「まだ従業員3人しかいないんですけど…」
「就業規則って、社員が多くなってからでいいですよね?」
「うちは自由なカルチャーを大事にしてるんで、ルールで縛りたくないんです」
お気持ちはよくわかります。
でも、実はこうした会社こそ、トラブルのリスクが潜んでいるのです。
義務があるのは「10人以上」でも、それ以下なら不要とは限らない
労働基準法上のルール
法律上、常時10人以上の労働者を使用する会社は、就業規則の作成・届出が義務付けられています(労働基準法第89条)。
しかし、逆に言えば、10人未満の会社でも作ってはいけないわけではない。
むしろ、制度や運用の“型”がない段階でこそ、最低限の共通ルールがあることが会社の安定につながります。
スタートアップに起こりがちな“あるある”トラブル
私が実際に関わった現場では、こんなケースが少なくありませんでした。
- 出勤時間も退勤時間も社員任せ → 勤怠トラブルに発展
- 有給休暇の取得ルールが曖昧 → 有休を「取りにくい」空気が蔓延
- 副業の可否が不明確 → 情報漏洩や競業リスクに繋がる
- 退職時の手続きが明文化されていない → トラブル対応が場当たりに
これらは、すべて「ルールが明文化されていない」ことが原因です。
「自由な会社文化」と「ルールがない」は別物
「うちは自由な会社にしたいから、ルールは要らない」──
この考えは一見魅力的ですが、自由と放任は違います。
就業規則は、社員を縛るためのものではありません。
むしろ、会社と社員が同じ土俵で働くためのガイドラインです。
「自由に働く」ためには、あらかじめ何を自由にして、何を制限するかを明確にしておくことが不可欠です。
それを言語化したのが、就業規則なのです。
なぜ“今”就業規則を作るべきなのか?
以下のようなシーンで、「就業規則がないこと」が問題になることがあります。
- 採用時に労働条件を説明できない
- 助成金申請でルール整備が必須になる
- 投資家・VC・銀行が「労務管理体制」を確認する場面
- 社員トラブルが起きたときに“社内ルールがない”ことで解決できない
スタートアップやベンチャーこそ、小さいうちから制度の基礎を作っておくことが、のちの成長スピードや信頼性に繋がるんです。
|就業規則は「守り」ではなく、会社の「基礎設計」
「まだ小さい会社だから就業規則は要らない」
そう思っていたら、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
- 社員を守る
- 会社を守る
- 自由な働き方を成立させる
- 信頼される組織になる
そのすべてを支える土台が、就業規則です。
“制度が整っている会社”は、それだけで強い。
「うちもそろそろ、就業規則を作った方がいいかも?」
そんなときは、ぜひ一度ご相談ください。
スタートアップや大学発ベンチャーのフェーズに合わせた、柔軟な制度設計をお手伝いします。
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