問題社員を辞めさせれば解決するのか? ― 私は「店長より強いパート」が生まれた時点で組織の問題だと考えます

問題社員を辞めさせれば解決するのか? ― 私は「店長より強いパート」が生まれた時点で組織の問題だと考えます

中小企業の現場では、ときどきこんな相談があります。

「長年頑張ってくれたベテラン社員やパートがいる。しかし最近、ハラスメントの訴えや内部告発が出ている。辞めてもらうべきだろうか。」

この相談に対して、多くの人はまず「その人が悪いのかどうか」を考えます。

もちろん、それも重要です。

しかし私は、この問題の本質は別のところにあると考えます。

重要なのは、その人が悪いかどうかではありません。

なぜ会社が、その人にそこまでの影響力を持たせてしまったのかです。

相談事例

ある地方の食品スーパーで起きた事例です。

惣菜部門を長年支えてきたベテランパートリーダーがいました。

売上への貢献は大きく、お客様からの評判も良い存在です。

ところが、

・新人への嫌がらせ
・シフト上の不利益扱い
・仕事を教えない
・職場内での孤立化

といった問題が指摘されるようになりました。

さらに内部告発によって、

・売れ残り商品の再加工販売
・消費期限表示の貼り替え

といった食品衛生上の問題まで疑われる状況になりました。

社長は悩みます。

「今すぐ辞めさせるべきか。」

しかし私は、この問いの立て方自体が危険だと思います。

この問題の本質

私は、この問題の本質は「問題社員」ではなく「管理職不在」だと考えます。

なぜなら、

店長が止められない。

専務も止められない。

社長も強く言えない。

それなのに一人のパートリーダーだけが現場を支配している。

この状態は偶然ではありません。

組織が長年かけて作り上げた結果です。

現場で起きる多くのトラブルは、加害者だけで発生するわけではありません。

放置する組織があって初めて大きな問題になります。

よくある失敗

このようなケースでよくある失敗は3つあります。

1つ目は、感情で処分することです。

内部告発が出た瞬間に激怒し、即日解雇を検討する経営者がいます。

しかし事実確認が不十分なまま動けば、別の労務問題を生みます。

2つ目は、売上を優先して先送りすることです。

「今辞められると困る」

これは経営者として自然な感情です。

しかし問題を放置すると、後でより大きな損失になります。

3つ目は、人間関係の問題として矮小化することです。

「仲良くやってくれ」

「話し合えば解決する」

という対応です。

しかし食品衛生や内部統制の問題は、人間関係だけでは解決できません。

私ならどう考えるか

私はまず、誰が悪いかを決める前に、被害拡大を止めることを優先します。

経営判断で最も重要なのは順番です。

今回であれば、

第一に顧客の安全。

第二に会社の信用。

第三に証拠保全。

第四に従業員保護。

その後に処分の議論です。

経営者はどうしても、

「犯人探し」

をしたくなります。

しかし本当に怖いのは犯人ではありません。

問題が続いていることです。

最善策

私ならまず事実調査を行います。

特に食品衛生に関する疑惑は最優先です。

なぜなら、これは顧客への影響が発生する可能性があるからです。

その上で、

・製造記録
・廃棄記録
・関係者ヒアリング
・過去のクレーム履歴

を確認します。

同時に、内部告発者への不利益取扱いが起きないよう注意します。

ここで重要なのは、

「告発者を守ること」

ではありません。

「真実を把握すること」です。

結果として、それが会社を守ることにつながります。

なぜ法律だけでは解決できないのか

法律上は、

ハラスメントの問題があります。

食品衛生上の問題があります。

場合によっては労務管理上の問題もあります。

しかし法律上の正解だけでは経営判断はできません。

仮に違反が認定されたとしても、

・誰が代わりをやるのか
・売上をどう維持するのか
・現場の不安をどう抑えるのか
・顧客への説明をどうするのか

という課題が残ります。

法律は重要です。

しかし経営者が向き合う現実は、それだけではありません。

だからこそ優先順位が必要になります。

実務上のチェックポイント

私なら次の項目を確認します。

・内部告発内容の具体性
・写真や記録の有無
・店長の認識
・過去の退職者情報
・ハラスメント相談履歴
・衛生管理マニュアル
・惣菜部門の権限構造
・シフト決定者
・代替人材の有無
・顧客クレーム履歴
・SNS投稿の兆候
・経営陣の認識の違い

特に確認したいのは、

「誰が本当の権力を持っているか」

です。

組織図と実態はしばしば違います。

肩書では店長でも、実際は別の人が現場を支配していることがあります。

まとめ

私は、この問題の本質は問題社員ではなく組織設計にあると考えます。

法律上は処分の検討が必要かもしれません。

しかし経営判断としては、それだけでは不十分です。

重要なのは、

誰が正しいかではなく、会社を守れるかです。

感情的に動けば損失は拡大します。

一方で放置しても損失は拡大します。

だからこそ、

短期・中期・長期を分けて考える必要があります。

短期では被害拡大を止める。

中期では事実を確認する。

長期では組織を立て直す。

私は、この順番を間違えないことが最も重要だと考えます。

【免責文】

本記事は一般的な経営課題に関する考察です。個別事案によって事実関係や適用される法令は異なります。実際の判断にあたっては、具体的事実を確認したうえで検討する必要があります。