就業規則と記録が命!トラブル社員に対する適正な解雇の手順

「解雇」は最後のカード。感情ではなく、手続きと証拠が全て!
社員にトラブルがあったり、明らかに勤務態度が悪かったりすると、「もう辞めてもらいたい」と思うのは、経営者や人事担当者として自然な感情です。
しかし、労働法の観点からは、解雇はあくまでも“最終手段”。感情的な判断や、安易な手続きで進めてしまうと、かえって会社が大きなリスクを負うことになります。
「とはいえ、もう限界…」という場面でも、重要なのは“適切なプロセス”と“客観的な証拠”。
今回は、トラブル社員への対応を進める中で、会社を守るために知っておくべき「解雇の正しい進め方」について解説します。
安易な解雇はトラブルの元。会社には「解雇回避努力義務」あり!
労働契約法では、企業が従業員を解雇する際には「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当である」ことが求められています。
さらに、裁判実務では、いきなり解雇に踏み切るのではなく、配置転換や指導・教育など、解雇を避けるための努力(解雇回避努力義務)を尽くすことが求められています。
つまり、問題社員がいるからといって即座に解雇にすることはできず、まずは段階的な対応が不可欠です。
それにもかかわらず、こうした義務を軽視して手続きを進めてしまうと、「解雇無効」とされて従業員が職場に戻るリスクや、金銭的な損害が発生するおそれがあります。
だからこそ、会社がリスクを避けるためには、正しい手順を理解したうえで慎重に進めていくことが必要です。
「証拠がない」は通用しない!改善指導と記録のリアル
たとえば、ある社員の業務パフォーマンスが著しく低く、上司が繰り返し口頭で注意をしていたとします。
「何度も言ってるのに、全然改善しない」という状況が続けば、解雇も選択肢として検討したくなるでしょう。
しかし、いざ解雇に踏み切ったとしても、「指導の記録が残っていない」「具体的な改善要求が不明確」な場合、労働者側が争えば解雇が無効とされる可能性が高くなります。
こうしたトラブルを避けるには、指導の日時・内容・本人の反応などを、時系列で文書やデータとして残しておくことが必要不可欠です。
たとえ小さな注意であっても、積み重ねた記録が「解雇に至るまでに十分な指導を尽くした証拠」として、会社を守ってくれるのです。
「就業規則+記録+手続き」で会社を守る。社労士と進めるのが安心!
問題社員への対応で会社を守るためには、まず「就業規則」の整備が出発点です。
解雇や懲戒処分の事由が明確に定められており、それが従業員に周知されていることが大前提になります。
そのうえで、実際の指導や注意喚起の場面では、記録を残すことを徹底することが重要です。
記録の形式は、面談記録、指導内容のメモ、メールなど何でも構いませんが、できるだけ客観的・継続的に残すことが望まれます。
さらに、懲戒処分や解雇の前には、必ず本人に「弁明の機会」を与えるなど、適正な手続きを踏むことが不可欠です。
このように、就業規則・記録・手続きの3つを押さえて初めて、「会社としてやるべきことはやった」と言えるのです。
手順に不安がある場合は、経験豊富な社会保険労務士に相談しながら進めることで、リスクを最小限に抑えることができます。
「解雇しても大丈夫?」その前に社労士にご相談ください。
社員を解雇するという判断は、経営上とても大きな決断です。
感情だけで進めてしまえば、後に労働トラブルへ発展するリスクは高まります。
しかし、適切なルール整備と手続き、そして証拠の蓄積を丁寧に行っていれば、会社はしっかりと自分自身を守ることができます。
解雇は「最後の手段」であるからこそ、プロセスに慎重さと専門性が求められます。
「このまま進めて問題ないのか?」「どこまで記録を取るべきか?」といった疑問があれば、まずは社会保険労務士にご相談ください。
会社と従業員、双方にとって納得のいく対応を目指すために、専門的なサポートをご活用ください。
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