「みなし労働時間制」とは?裁量労働制・事業場外労働との違い
みなし労働時間制とは?裁量労働制・事業場外労働との違いをわかりやすく解説
働き方改革の推進により、多様な勤務形態が広がる中で「みなし労働時間制」という言葉を耳にする機会が増えています。テレワークや直行直帰が一般化する現代において、実際の労働時間を正確に把握することが難しいケースも少なくありません。みなし労働時間制は、こうした実務上の課題に対応するための制度です。本記事では、その定義や仕組み、裁量労働制・事業場外労働との違いについて、社会保険労務士の視点も交えながらわかりやすく解説します。
みなし労働時間制の定義と概要
みなし労働時間制とは、実際の労働時間の算定が困難な場合に、あらかじめ定めた時間を労働したものと「みなす」制度です。労働基準法では主に「事業場外労働のみなし労働時間制」と「裁量労働制」の2類型が定められています。実労働時間にかかわらず、所定の時間働いたと扱うため、時間管理の方法や賃金計算に大きな影響を与えます。
企業にとっては業務の効率化や柔軟な働き方の実現につながる一方、制度設計を誤ると未払い残業代請求、長時間労働による健康被害などのリスクが生じます。社会保険労務士としては、制度導入前に業務実態を精査し、適法性を慎重に検討することが重要だといえます。
事業場外労働のみなし労働時間制とは
事業場外労働のみなし労働時間制は、営業職の外回りや出張など、会社の外で業務を行い、使用者が労働時間を具体的に把握することが困難な場合に適用されます。この場合、原則として所定労働時間働いたものとみなされます。ただし、通常所定労働時間では足りない場合には「通常必要とされる時間」をみなし時間とすることもあります。
ここで重要なのは、本当に「算定が困難」であるかどうかです。近年はスマートフォンや勤怠管理アプリの普及により、外出先でも労働時間を把握できるケースが増えています。形式的に事業場外であるという理由だけでは適用できません。導入の可否判断や労使協定の整備については、専門家の助言が不可欠です。
裁量労働制との違い
裁量労働制は、業務の性質上、遂行方法や時間配分を労働者の裁量に委ねる必要がある場合に、あらかじめ会社と労働者の間で定めた時間を働いたものとみなす制度です。研究開発など専門的業務、企画業務が対象となります。事業場外労働との大きな違いは、「場所」ではなく「業務の性質」に着目している点です。
また、裁量労働制の導入には労使協定の周知や労使委員会の設置と決議、労働基準監督署への届出など厳格な手続きが求められます。単に自由な働き方を認める制度ではなく、長時間労働を助長しないための健康確保措置も必要です。社会保険労務士としては、制度の趣旨を理解せずに安易に導入することは強く避けるべきだと考えます。
みなし労働時間制導入時の注意点
みなし労働時間制を導入する際には、就業規則への明記、労使協定の締結、対象業務の明確化など、複数の法的要件を満たす必要があります。また、みなし時間が法定労働時間を超える場合には、時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。
さらに、制度を導入しても、実態として過重労働が発生していれば安全配慮義務違反が問われる可能性があります。社会保険労務士の立場からは、単なる管理・労務コスト削減策としてではなく、労働者の健康管理やコンプライアンス体制の一環として設計することが不可欠です。
まとめ
みなし労働時間制は、現代の多様な働き方に対応するための有効な制度ですが、適用要件や手続きには厳格なルールがあります。事業場外労働と裁量労働制では対象や趣旨が異なるため、自社の業務実態に即した制度選択が重要です。
制度設計を誤れば、未払い残業代や労使トラブルに発展するリスクもあります。導入や見直しを検討する際は、社会保険労務士などの専門家に相談し、法令に適合した形で整備を進めることが、企業と労働者双方を守る最善の方法といえるでしょう。
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