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実務ノウハウ

団交中の「不穏当発言」と団交打切り――熊本県労委が不当労働行為を認定した事案から学ぶ実務対応

事案の概要

熊本県労働委員会は、団体交渉(以下、団交)中に労働組合側が「おい、ちゃんと聞かんかい、こら」などの発言を繰り返したことを契機に、学校法人側が団交を打ち切った事案について、不当労働行為(正当な理由のない団交拒否・支配介入)に当たると判断しました。

労働新聞 2026年1月14日報道「不当労働行為を認定 「おい、こら」で団交中止 熊本県労委」

ポイントとして、労委は次のように整理しています。

  • 組合側の発言は交渉態度として是認されるものではない
  • しかし、発言は暴力行為を示唆するものではない
  • 有形力(殴る・投げつける等)もなく、団交が継続できないほどの喧噪状態でもない
  • 発言後、法人側が十数秒で終了宣言し、団交は約9分で終了
    → 「緊急的に終了しなければならないほど危険が迫っていたとはいえない」

(報道によれば、命令日は令和7年11月20日とされています)

「不穏当発言が許された」わけではない(誤解しやすいポイント)

熊本の実務家としては、まず強調しておきたいのがここです。
今回、労委は組合側の発言を「是認できない」と述べています。つまり、今回の不穏当発言が“団交で許容される水準”とお墨付きを与えたわけではありません。

一方で、結論としては「法人側の団交打切り」が不当労働行為と評価されました。
このため、現場では 「不穏当発言が出ても我慢しなければならないのか?」 と不安が出やすいところです。

しかし、実務上の勘所は「我慢する/しない」ではなく、

“即打切り”ではなく、段階的に“継続を図る手当て”を尽くしたか

にあります。

今回の肝は「十数秒での打切り」――段階対応の欠如がリスクに

危険性が切迫していないとしても、実際の団交では、相手方の言動によって誠実な交渉ができる状況でない場面は起こり得ます。
その意味で、団交を中断または一旦終了してクールダウンを図ること自体には、一定の合理性があります。

ただし、今回の報道内容を見る限り、労委が重く見たのは、

  • 不穏当発言があった直後に
  • 代替策(注意・警告・中断・再開提案等)を挟まず
  • 十数秒で団交を終了

という運用です。

つまり、安全配慮を理由にしたとしても、終了が“唯一の手段だった”といえるだけの状況・手当てが見えにくい――この点が、実務上の警戒ポイントになります。

実務での安全な運用:おすすめは「注意→警告→中断・クールダウン→再開」の設計

では、現場ではどう備えるべきか。使用者側(法人側)・組合側の双方にとって、紛争化を避ける運用として、次のような“段階対応”が有効です。

(1) 事前に「団交のルール」を共有する

  • 発言の順番、相互尊重、威圧的表現の禁止
  • 逸脱があった場合の対応(注意→中断→再開条件)
  • 議事録(録音含む)の取り扱い
    ※最初の団交で「確認書」として簡単に残すだけでも違います。

(2) 不穏当発言が出たら、まず“是正の要請”を明確に

  • 「その表現は不適切です。訂正・撤回をお願いします」
  • 「このままでは協議が成立しないため、○分休憩します」
  • 感情的に応酬せず、“事実の指摘とルールの適用”に切り替えます。

(3) “一時中断(休憩)”でクールダウンする

  • 5~15分程度の休憩(別室移動・当事者間の整理)
  • 必要に応じて、再開条件を提示
  • 例:「威圧的表現を控える」「議題に沿って進める」

(4) 再開できない場合も、“次回期日”を提案する

  • 「本日はここまで。次回は○日○時に継続したい」
    団交の終了が必要な場合でも、“拒否”ではなく“継続の意思”を形にすることが重要です。

(5) 記録化:議事録・メモの精度が勝負を分ける

  • 不穏当発言の具体的内容
  • 注意した文言、休憩を提案した時刻、相手の反応
  • 再開提案・次回提案をした事実
    後から検証されるのは、「危険性」だけでなく「尽くした手立て」です。

まとめ:不穏当発言はNG、しかし“即打切り”は高リスクになり得る

今回の報道から読み取れる、実務上の教訓はシンプルです。

  • 不穏当発言は当然NG(是認されない)
  • ただし“不穏当発言があった”ことと“団交を即時打切りできる”ことは別問題
  • 現場対応としては、注意→中断(クールダウン)→再開提案の段階対応を設計し、記録を残すことが安全

団交は、法的評価が入りやすい場面です。
運用を少し整えるだけで、紛争化リスクを大きく下げられます。

当事務所の支援範囲(例)

  • 団交対応の社内体制づくり(事前ルール/想定問答)
  • 議事録・記録化の整備、運用フローの作成
  • 労使紛争の初動整理、再発防止策の設計 など
    ※必要に応じ、弁護士と連携のうえ対応します。

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※免責:本記事は報道内容を踏まえた一般的な情報提供であり、個別事案への法的助言を目的とするものではありません。具体的な事案は事情により結論が異なり得ます。

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