「130万円の壁」対応で新設された助成金|パート・アルバイトの労働時間延長を支援

厚生労働省は、いわゆる「130万円の壁」に対応するため、キャリアアップ助成金に新たなコースを創設しました。社会保険加入による手取り減少を補いながら、労働者の定着とキャリアアップを後押しする制度です。本記事では、制度の概要と活用のポイントを、熊本県内の中小企業経営者の皆様に向けて解説します。
130万円の壁とは?
年収130万円を超えると、配偶者の扶養から外れて社会保険に加入する必要があることから、パートやアルバイトの中には「働き損」を避けて労働時間を抑える傾向が見られます。これがいわゆる「130万円の壁」です。
新設された支援策の概要
2025年7月1日からスタートした新たな助成金「キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長支援コース」は、次のような企業の取組みを支援します。
- 社会保険加入を見越して「労働時間を週5時間以上延長した場合」または「2時間以上5時間未満の延長、かつ一定の基本給増額」
- さらに2年目には、週2時間以上の追加延長や基本給5%以上の増額などを実施した場合
助成額は最大75万円(1人あたり)。小規模事業者の場合、初年度50万円、2年目25万円が支給されます。
対象となる労働者
支援対象は次のような条件を満たす労働者です。
- 社会保険加入の前後で、所定労働時間を一定以上延長したこと
- 社会保険の加入前6カ月以内に雇用された者ではないこと
- キャリアアップ計画に基づき6カ月継続して取り組んだ場合
なお、既存の「106万円の壁」対応コース(社会保険適用時処遇改善コース)と併用は不可ですが、支給決定前であれば本コースへ切替申請が可能です。
実務での活用ポイント
社会保険加入による人件費増は企業側にも負担となりますが、助成金を活用すれば一定程度の相殺が可能です。実務上は以下の点が重要です。
- キャリアアップ計画の策定
- 労働条件通知書や就業規則の整備、労働時間の正しい管理
- 6カ月の継続要件を見据えたスケジュール管理
制度を有効活用するためにも、社労士など専門家の支援を受けることをおすすめします。
まとめ
人手不足が深刻化する中、パートやアルバイトの安定雇用は企業の持続可能性にも直結します。今回の助成制度は、労働者の不安を軽減し、働き続けやすい環境づくりを支援する好機です。130万円の壁問題に直面している企業様は、早めに情報を収集し、計画的な対応を進めましょう。
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社会保険労務士 荻生労務研究所では、助成金活用のご相談にも対応しております。お気軽にお問い合わせください。
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