スポットワークにも「休業手当」義務|厚生労働省が明言、中小企業に求められる対応とは?

スマホアプリ等を通じて手軽に人材確保ができる「スポットワーク」。
中小企業にとっては便利な選択肢ですが、契約や労働法の理解が不十分なまま利用していませんか?
厚生労働省がこの7月に出した新たな見解が、多くの企業に影響を及ぼしそうです。
スポットワークとは──便利さの裏に法的リスクも
近年、空いた時間に単発で働ける「スポットワーク(隙間バイト)」の活用が広がっています。
熊本県内でも、飲食・小売・物流など様々な業種で、短時間の即戦力として導入が進んでいます。
求人アプリで人材を募り、面接もなく即日就労可能──企業にとっては効率的な手段ですが、その反面、労働契約に関する誤解が多く、トラブルも増加しています。
厚労省「応募時点で労働契約成立」が原則
2025年7月4日、厚労省は「雇用主の都合でスポットワークをキャンセルした場合、休業手当を支払う必要がある」との見解を公表しました。
具体的には以下の3点が重要です:
- 応募時点で労働契約が成立するのが一般的
- キャンセル=休業扱いで、休業手当支払い義務が発生
- 雇用主指示による待機時間も労働時間として賃金支払いが必要
つまり、たとえ「まだ来てもらっていないから働いていない」と感じても、法的には「雇用契約済み」であり、企業側に一定の義務が発生するのです。
熊本の中小企業にとっての影響と対策
地元企業の多くは、「必要なときに必要なだけ人を呼ぶ」感覚でスポットワークを利用しています。
しかし、今回の厚労省見解を受けて、以下のような対策が急務です:
- 募集・マッチング時に労働条件通知書を明示する
- キャンセル規定や契約解除ルールを事前に整備する
- アプリ利用時も契約成立のタイミングを社内で共有する
- 「キャンセル=ゼロ円」の認識を見直す
実際に労働基準監督署には賃金不払いの相談が増えており、今後さらにトラブル化するリスクがあります。
社労士の視点──「便利」の裏にある「責任」を正しく理解する
スポットワークは中小企業にとって貴重な人材調達手段である一方、労務管理の視点では「新しい責任の形」が求められています。
便利さの裏にある契約の成立時点・休業手当の考え方を理解し、「使える制度」として定着させるには適切な運用ルールが不可欠です。
不安な点があれば、社会保険労務士などの専門家に早めに相談されることをお勧めします。
本件について詳しく知りたい方、貴社の制度整備をご検討の方は、お気軽に当事務所までご相談ください。
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