目次
過去30年経験したことのない「賃上げの波」が到来
直近の2年間において、約5%という非常に大幅な賃上げが続いています。これほど急激な立ち上がりは1990年代前半以来であり、日本企業はここ30年ほど本格的な賃上げを経験してきませんでした。そのため、多くの中小企業にとって、このかつてない賃上げの波にどう対応すべきか手探りの状況が続いています。
1. 賃上げは続くのか?現状の動向と「物価上昇」の圧力
この賃上げのトレンドは一過性のものではありません。2025年度も人件費は平均で4%以上の増加が見込まれており、高い水準での賃上げが続く予測です。さらに、最大の労働組合である連合は、2026年春闘に向けて「賃金上昇が当たり前の社会」を定着させることを目指し、全体で5%以上、中小企業においては6%以上の賃上げを目標に掲げています。その背景には物価の高騰があり、2025年の物価は2020年比で約2割近く(111.9%)上昇しています。この物価上昇を考慮すると、現在のペース、あるいはそれを上回る規模の賃上げが今後も続く可能性が高いと言えます。
2. 「最低賃金1500円」は通過点?国の目標と急激な引き上げ
国は、2020年代のうちに最低賃金を全国平均で1,500円まで引き上げるという明確な方針を打ち出しています。これを達成するためには、向こう数年間、毎年100円前後の引き上げが続く計算になります。地方への影響も甚大であり、例えば熊本県では全国トップとなる82円の上げ幅を記録し、最低賃金が1,034円に達するなど、急激な変化が起きています。
3. ヨーロッパの基準に学ぶ「その先」の最低賃金(1,900円時代へ)
では、最低賃金が1,500円に到達した後はどうなるのでしょうか。その先行事例として、ヨーロッパ(EU)では「賃金中央値の60%(または平均値の50%)」を最低賃金の新たな参照指標とする動きが始まっています。日本は他国に比べてまだこの水準に届いておらず、今後はこのヨーロッパの基準に合わせていく議論が進められています。連合の試算によれば、日本の賃金中央値の6割水準を満たすには、2035年に「1,600円から1,900円程度」まで引き上げる必要があるとされています。つまり、現在のような大幅な最低賃金の引き上げペースが、向こう10年ほど継続する可能性があると想定しておく必要があります。
おわりに:賃上げが「当たり前」の時代に向けた中小企業の備え
今後、連合が目指すような賃上げが「当たり前」の社会へと変わっていく中で、単に初任給や最低賃金を引き上げるだけでは、中高年層の給与が伸び悩む「賃金カーブのフラット化」を引き起こし、既存社員の不満や離職を招く危険性があります。特に労働分配率がすでに限界に近い中小企業においては、従来の仕組みのまま賃上げ競争を戦うことは困難です。この流れを長期的なトレンドとして捉え、自社の状況に合った人事・賃金制度の根本的な見直しに着手することが、今まさに求められています。

