熊本地震から9年、そしてコロナ禍を経て——企業を守るために必要だった“平時の備え”とは

熊本地震から9年。企業に必要な「平時の備え」を考える
2025年4月14日、熊本地震から9年という節目を迎えます。
そして、私たちはこの間、新型コロナウイルスという未曾有の社会的混乱も経験しました。
この9年間、現場で数多くの中小企業の支援に関わる中で、強く感じたことがあります。
それは——「非常時に企業を守れるかどうかは、平時の備えにかかっている」ということです。
私は社労士として、熊本地震の被災企業の復興支援や、コロナ禍における助成金申請や労務対応など、危機対応の現場に身を置いてきました。
その中で、支援が届いた企業と、届かなかった企業。その違いを分けた要因について、今回は少しだけお話しさせてください。
災害時の情報格差が、企業の命運を分ける
熊本地震では、国や自治体から多くの復興支援情報が発信されました。しかし、商工会議所や金融機関とのつながりがない中小企業には、その情報が届かず、結果として支援策を活用できないまま、再建を断念した事業者も存在しました。
事業所が被災しても、何をすればいいのか、どの制度が利用できるのかがわからない。あるいは、設備の復旧に必要な資金調達の方法すら情報が届いていない。これは非常に深刻な課題です。もし平時から社労士と顧問契約を結び、継続的なサポート体制ができていれば、こうした情報の「届かないリスク」は大きく軽減されていたはずです。
コロナ禍では「社労士に断られる」ケースが続出した
もう一つの教訓は、新型コロナ禍における助成金対応です。雇用調整助成金の申請が殺到する中、社労士に相談したが「対応できないと断られてしまった」という声や苦情・批判が、多く寄せられました。
これは決して社労士側の怠慢ではなく、むしろ社労士事務所自身も感染症の影響を受け、業務が逼迫し人的リソースが限られる中で、既存の顧問先への対応を最優先せざるを得なかったという事情があります。中には、「顧問先以外はお断り」という対応を掲げた事務所も、多数ありました。
また、助成金対応においては、日頃の労働・社会保険関係法令の遵守が大前提となります。スポットで依頼された場合、そうした法令遵守の状況を短期間で確認することが難しく、非常時に十分な支援ができないのが現実です。
このような事態は、今後の災害でも、十分に起こり得る事態です。
社労士との顧問契約は「非常時の備え」そのもの
こうした災害や感染症などの非常事態において、企業が迅速に対応し、雇用と事業を守るためには、何よりも「平時からの労務管理体制の準備」が不可欠です。
社労士とともに取り組むべき「平時の備え」例
・企業および従業員の備え(避難経路の確認、食料の備蓄、BCP(事業継続計画)の策定など)
・雇用契約書の整備
・就業規則の最新化
・適正な労務管理体制の構築
・法令遵守の状況把握
これらを、専門家である社労士と共に日頃から取り組むことで、危機の際にもスムーズに支援制度を活用し、早期の事業再開につなげることが可能になります。
まとめ:災害に強い企業づくりは、日頃の労務管理から
「非常時に頼れる体制を、平時に築く」
これは、熊本地震やコロナ対応の現場で、多くの企業を見てきた社労士としての実感です。
災害時にスムーズに情報を得て、適切な支援を受けられる体制は、日頃から社労士との顧問契約を結び、継続的な労務サポートを受けているかどうかに大きく左右されます。
熊本地震から9年というこの機会に、ぜひ貴社の「平時に必要な、労務の備え」について、改めて見直してみてはいかがでしょうか。
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