“雇用を守る”だけじゃ足りない ── 雇用調整助成金と補助金の正しい使い方

新型コロナや自然災害など、突発的な危機から従業員の雇用を守るために活用された「雇用調整助成金」。
その有効性と限界について、厚生労働省が所管する独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が検証結果(速報)を発表しました。
熊本で複数の災害支援に関わってきた社会保険労務士として、現場経験から見えてきた「本当の使い方」とは?
熊本県内の中小企業・中堅企業の経営者・労務担当者の皆さまへ向けて、実践的なポイントを解説します。
雇用調整助成金は、長期的には効果が薄れる?
厚労省所管の労働政策研究・研修機構(JILPT)は、コロナ禍における雇用調整助成金の検証結果(速報)を公表しました。
宿泊業や飲食業、生活関連サービス業を中心に、助成金を受けた事業所の約85〜90%が廃業を回避できたという結果が出ており、初期段階では高い効果があったと評価されています。
しかし、支給が長期間に及ぶと、雇用維持の効果が次第に弱まる傾向が確認されました。
これを踏まえ、今後の特例措置については、「一定期間に限定すべき」という見直し提言がなされています。
熊本地震・人吉球磨豪雨・新型コロナ禍の支援で得た、社労士としての実感
私自身、熊本の社会保険労務士として、リーマンショック時や熊本地震、阿蘇地方の豪雨、人吉球磨豪雨災害、そしてコロナ禍と、数々の支援の現場に立ち会ってきました。
雇用調整助成金の活用は、従業員の雇用を守るだけでなく、企業にとって“事業をあきらめない決意”を後押しする強力なツールです。
熊本県内の中小企業では、制度の活用によって「従業員を解雇しなくて済んだ」という声が数多く寄せられました。
一方で、この助成金は「長期に依存すべきもの」ではなく、事業再建や業態転換など、次の一手と並行して活用すべき制度です。
助成金だけに頼らない「復興戦略」──補助金や専門家との連携の重要性
災害時や経営危機では、助成金だけでなく、各種補助金・融資・税制優遇なども視野に入れた総合的な支援設計が不可欠です。
特に中小企業の場合、どの制度をどう活用すべきかが分からず、機会損失をしてしまうケースもあります。
当事務所では、助成金の活用支援だけでなく、熊本県や国の復興支援策の最新情報をいち早く収集し、企業の実情に応じた補助金や融資のご提案も行っています。
また、税理士・行政書士・中小企業診断士など、地域の専門家とのネットワークを活かした「連携型支援」を提供しています。
平時から社労士とつながることが災害対応の鍵
災害や緊急事態が起きた時、「どこに相談すればいいか分からない」という声を多く聞きます。
だからこそ、平時から社労士などの専門家とつながっておくことが、雇用と事業の持続可能性を高める第一歩です。
雇用調整助成金はもちろんのこと、今後の災害や不測の事態に備えた制度活用の準備として、専門家と伴走しながら“戦略的な人事・労務管理”を行うことが、企業の強さを決める時代になっています。
雇用調整助成金を“復興と成長への架け橋”に
雇用調整助成金は「危機の延命策」ではなく、「次のステージへつなぐ橋渡し」です。
熊本のように災害リスクが高い地域では、平時から専門家と連携し、どの支援策をどう活かすかを明確にしておくことが大切です。
助成金・補助金・復興支援を活用したい方、まずはお気軽に当事務所までご相談ください。
熊本の中小企業に寄り添う社労士として、これからも皆さまの「雇用を守る力」となります。
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