外国人従業員の給与計算で注意すべき住民税対応とは?

給与計算に潜む落とし穴
給与計算を担当していると、毎月の残業代や社会保険料など、日々の処理で頭がいっぱいになりがちです。そんな中で意外と見落とされやすいのが「外国人従業員が退職・帰国する際の住民税対応」です。
一見すると日本人と同じルールで進められるように思えますが、実務上は「帰国の有無」を早めに確認しなければ、会社も従業員も困る事態になりかねません。今回は、社労士の視点から実務で注意すべきポイントを解説します。
外国人従業員と住民税の関係
住民税は、その年の1月1日時点で日本に住所がある人に課税されます。つまり、外国人であっても日本に居住していれば、日本人と同じく住民税を納める義務があります。
ここで問題になるのが、年の途中で退職し、そのまま帰国するケースです。退職後も住民税の残額は納めなければならないのですが、帰国してしまうと納付が困難になります。
日本人従業員の場合は「退職後に給与所得者異動届出書を提出する」ケースが多いのですが、外国人の場合は退職前に提出を済ませておく必要性が高いという点が実務の重要な違いです。
帰国前に必要な住民税の異動届
たとえば、外国人従業員が6月に退職して7月に帰国する予定だとします。この場合、住民税は前年の所得に基づいて6月以降も課税されていますので、残額を納める必要があります。
しかし、本人が帰国してしまえば納付書の送付先もなくなり、滞納リスクが高まります。こうした事態を防ぐために重要なのが給与所得者異動届出書の事前提出です。
市区町村への提出を早めに行えば、退職前の給与から一括徴収するなどの対応が可能となり、会社としてもトラブルを避けることができます。
退職前の確認フローを作る
実務上のポイントは、「退職予定者が帰国するのかどうかを必ず確認する」ことです。
帰国予定の場合は、以下の流れをフロー化しておくと安心です。
- 退職の申し出を受けた際に、帰国予定の有無を確認する
- 帰国予定の場合は、できるだけ早く給与所得者異動届出書を作成・提出する
- 住民税の残額を退職前の給与から一括で控除できるよう調整する
- 従業員本人にも「なぜこの手続きが必要か」を丁寧に説明する
このフローを定着させることで、給与計算担当者の負担も減り、従業員側の理解も得やすくなります。
社労士に相談して安心の給与計算を
外国人従業員の給与計算は、日本人と大きく変わらないように見えて、退職や帰国時には特有の注意点があります。特に住民税の対応を誤ると、会社側も「税金の取り漏れ」といった責任を問われかねません。
「どのタイミングで異動届を出すべきか」
「退職前に住民税を一括徴収する方法はどうするか」
「従業員への説明はどう行えばよいか」
こうした細かな実務判断は、専門家である社会保険労務士に相談することでスムーズに解決できます。給与計算業務に不安を感じる場合や、外国人従業員が多い職場では、ぜひ社労士にご相談ください。安心できる給与計算体制を整えることが、会社の信頼にもつながります。
外国人従業員の給与計算や退職時の住民税対応にお悩みの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
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