外国人材の定着に向けて、熊本の中小企業が「優良受入れ企業」になるために必要なこと

茨城県が創設した「外国人材受入優良企業等認定制度」は、今後の熊本県内の中小企業にも大いに参考になる制度です。本記事では、その制度のポイントを踏まえつつ、「外国人材を受け入れて定着させるために、熊本の中小企業が今すぐ整えるべき視点と取組」について、実務に基づいて解説します。
外国人材の受入れは「採用」だけで終わらない
外国人材を活用する中小企業が全国的に増加する中で、「採用できたが定着しない」という課題も多く見受けられます。茨城県が創設した新制度では、定着支援まで行う企業を「優良企業」として認定し、支援を強化しています。
熊本の企業にとっても、こうした視点は重要です。特に地域性や生活環境が大きく影響する地方都市では、「受入れ体制」が整っているかどうかで定着率が大きく左右されます。
茨城県の制度に見る「優良企業」の共通点
茨城県の認定制度では、以下のようなポイントを満たした企業を優良としています。
– 採用時にキャリアパスや研修制度を明示
– 社内規程の多言語化
– 留学生のインターン受け入れ
– 外国人社員への生活支援
– 地域との交流機会の提供
– 日本語学習・スキルアップの支援
– 外国人向け相談窓口の設置
これらはそのまま、熊本の企業でも取り組める実践事項です。
熊本の中小企業が取り組むべき4つの視点
① 採用・人材確保
– 明確なキャリアパスと成長イメージを提示
– わかりやすい求人情報(やさしい日本語、多言語対応)
② 異文化理解・社内環境
– 社内ルールの多言語化
– 宗教・文化への配慮(例:礼拝室、食事対応)
③ 定着支援・キャリア構築
– メンター制度、定期的な面談の導入
– 日本語教育や資格取得の支援
④ 生活支援・地域共生
– 住宅確保のサポートや生活ガイダンス
– 地域住民との交流イベント参加の促進
これらを社内制度として文書化し、実際に運用することが「優良企業」への第一歩です。
定着には「法令遵守」と「生活支援」が鍵
外国人材の活用では、労働契約・社会保険・在留資格管理などの法令遵守が土台になります。あわせて、生活面(住居、医療、地域との関係)への支援が整っているかどうかで、早期退職の有無が決まるといっても過言ではありません。
熊本で今から始めるべきステップ
1. 現状把握・自己診断(チェックリストを活用)
2. 採用段階での制度説明と環境整備
3. 社内マニュアル・規程の整備
4. 相談窓口やメンター制度の導入
5. 地域と連携した生活支援体制の構築
この5ステップを踏むことで、外国人材を「採用」から「定着・活躍」まで導ける体制が整います。
外国人材を「企業の成長エンジン」に
外国人材の受け入れは、単なる人手不足解消策ではありません。多様性が職場の創造性や柔軟性を高め、企業文化や成長力を進化させる可能性を秘めています。
熊本の中小企業がこの機会を活かすために、今こそ「優良受入れ企業」へと進化する時です。
当事務所では、就業規則の多言語対応や外国人材の定着支援、社内制度整備のご相談を承っております。お気軽にご相談ください。
関連記事
-
「娘の出産・孫の誕生」に寄り添う孫休暇制度が中小企業にもたらす価値 「娘の出産・孫の誕生」に寄り添う孫休暇制度が中小企業にもたらす価値 -
熊本市の中小企業が抱える人材課題と社会保険労務士が提案する顧問活用戦略 熊本市の中小企業が抱える人材課題と社会保険労務士が提案する顧問活用戦略 -
IPOやM&Aで“詰む”!?EXIT前に見直すべき社会保険の落とし穴 IPOやM&Aで“詰む”!?EXIT前に見直すべき社会保険の落とし穴 -
助成金申請は「労務監査」から始めましょう – 荻生労務研究所の対応方針 助成金申請は「労務監査」から始めましょう – 荻生労務研究所の対応方針 -
2025年最低賃金引上げと補助金要件緩和――熊本の中小企業にとっての意味とは? 2025年最低賃金引上げと補助金要件緩和――熊本の中小企業にとっての意味とは? -
ゴールドマン・サックスの生成AI導入が示す未来:中小企業も他人事ではない ゴールドマン・サックスの生成AI導入が示す未来:中小企業も他人事ではない
