地元の味を次世代へ 「弁天堂」の事業承継に学ぶ、地域企業の未来

熊本県合志市の人気いきなり団子店「弁天堂」が、廃業の危機を乗り越え、事業承継によりその味を未来へと繋ぎました。この地域密着型のストーリーは、中小企業経営者にとっても他人事ではありません。事業承継の現場で見える「課題」と「支援のあり方」を、社会保険労務士の視点から掘り下げます。
こだわりの味に込められた経営者の想い
創業16年。平日も休日も行列ができる人気のいきなり団子店「弁天堂」。芋の品種や配合にまでこだわった商品開発に、創業者・矢守さんの職人としての誇りが見え隠れします。
しかし、どれだけこだわりがあっても、体調や家族の状況次第で事業の継続は難しくなる―。これは、熊本県内の中小企業にも広く共通する課題です。
地域の支援がつないだ未来
商工会が事業承継支援センターへの登録を勧めたことをきっかけに、地元ベンチャー「フードラボ合志」が事業を引き継ぐことに。重要なのは「誰が引き継ぐか」だけでなく、「どのように引き継ぐか」。
蔭山社長が語った「同じ味だと言ってもらえるように覚悟を持って取り組む」という姿勢は、単なる商業的継承ではなく、文化と信頼の継承そのものです。
社労士の立場から見た事業承継のポイント
事業承継には、以下のような課題が伴います:
- 経営者の健康や高齢化への備え
- 後継者の確保と育成
- 技術やノウハウの見える化
- 従業員や顧客との信頼関係の維持
地域支援機関の関与、外部アドバイザーの活用、経営者自身の早期の意思決定がカギとなります。
社会保険労務士としては、従業員の雇用継続や労務管理体制の移行支援など、承継後の安定に向けた仕組みづくりも大切な支援領域です。
最後に:熊本の企業経営と地域経済を守るために
「弁天堂」の事例は、地域の味だけでなく、地域経済そのものを次世代に引き継ぐための一つのロールモデルといえます。
事業承継は「終わり」ではなく、「第二の創業」ともいえる大事な節目。経営者の皆さまには、ぜひ早めの準備と外部支援の活用をおすすめします。
参考情報
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