高年齢労働者の労災が過去最多に 熊本の中小企業が今、取り組むべきリスク管理とは

厚生労働省が発表した令和6年の労働災害統計によると、休業4日以上の死傷災害が4年連続で増加し、60歳以上の労働者が占める割合が初めて3割に達しました。熊本でも人手不足の中、高年齢者の雇用は不可欠ですが、労災リスクの高まりは見過ごせません。経営者として、今こそ取り組むべき安全対策と労務管理の視点を解説します。
高年齢者の労災、なぜ増えているのか?
厚労省の統計では、令和6年の労災死傷者数は13万5718人(前年比0.3%増)と4年連続で増加し、特に60歳以上の労働者は4万654人、全体の30.0%を占めました。これは過去最高の割合です。中でも「転倒」「無理な動作」「墜落・転落」が多く、体力・バランス感覚の衰えが事故要因となっていると見られます。
熊本でも高年齢者の就労が進む中で
熊本県内でも、建設業・製造業・サービス業を中心に高年齢者の就労が広がっています。特に後継者不足の中小企業では、経験豊富な60代以上の人材に頼らざるを得ないケースも多く見られます。しかし、安全配慮義務は年齢にかかわらず使用者にあります。従来の「慣れ」に頼った作業指示や設備管理が、重大な労災に直結するリスクが高まっているのです。
今こそ見直すべき3つのポイント
1. 作業環境の再点検
段差や滑りやすい床、視認性の低い表示など、年齢による身体機能の変化を前提にした環境整備が必要です。
2. 定期的な安全教育と体力測定
「知っている」から「できる」へ。年齢を重ねた従業員にも定期的な安全教育を行い、場合によっては配慮が必要な業務の再配置も検討します。
3. 高年齢者雇用に応じた就業規則と労務管理
年齢や健康状態に応じた労働時間・勤務体制の柔軟化と、労災が起きた際の対応体制整備も重要です。
経営者に問われるのは「予見と対応」の力
高年齢者を含む多様な人材を活かすためには、リスクを見越した環境整備と制度設計が不可欠です。「労災が起きてから対応する」のではなく、「起きる前に備える」こと。中小企業経営における人的資源の価値を最大化するためにも、今こそ「攻めの労務管理」に転じるタイミングです。
当事務所では、高年齢者を含む多様な働き手が安心して働ける職場づくりを支援しています。労災リスクの診断、就業規則の見直し、安全衛生体制の整備についてお気軽にご相談ください。
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