中小企業の人材育成、今こそ「伴走型支援」の活用を 厚労省報告書が示す未来戦略

「人がいない」「育たない」「辞めていく」――熊本県内でも多くの経営者からこうした声が聞かれます。厚生労働省が発表した最新の報告書は、こうした課題に対して“企業に寄り添う”新たな支援の方向性を示しています。本記事では、報告書のポイントとともに、中小企業がとるべき人材育成の実践策を社会保険労務士の視点から解説します。
なぜ今、人材育成が経営課題として再注目されるのか?
人口減少・人手不足が加速する中、企業は「雇う」だけでなく、「育てて活かす」ことが求められています。厚生労働省の報告書は、「労働供給制約が強まり、人材確保が難しくなるなかで、従業員のスキル向上が労働生産性の鍵になる」と強調しました。
特に中小企業では、採用競争に不利な分、「今いる人を育てる」戦略が不可欠です。
中小企業こそ「伴走型支援」を活用すべき理由
報告書の注目点は、“個別化された伴走型支援”の充実です。これは、外部専門家が単なる研修紹介ではなく、「経営戦略に基づいた人材育成戦略の立案」から一緒に取り組むもの。
実際、多くの中小企業では人材育成の専任者が不在。OJTやOFF-JTの企画・実施に手が回らず、施策が場当たり的になることもあります。こうした現状に対し、報告書は「企画段階からの支援」が必要と提言しています。
単独では難しい育成、鍵は「共同化」と「地域連携」
「外部研修に送りたいが人数が足りない」「コストが高い」といった悩みもよく聞かれます。報告書ではこの点に対し、「産業・地域単位での共同実施」を提案。複数企業で教育資源を共有し、指導者や設備を活かす枠組みが推奨されています。
熊本県内でも、業界団体や商工団体と連携したスキルアップ研修や合同OJTの取り組みが今後ますます重要になります。
実務としての第一歩:「計画と推進者」を整える
職業能力開発促進法で企業に努力義務として求められる「職業能力開発推進者(能開推進者)」や「事業内職業能力開発計画」ですが、実際に実施している企業は2割程度とのこと。まずは、自社の育成方針と課題を言語化し、外部支援を受ける準備を整えることが第一歩です。
私たち社労士も、計画策定や推進体制づくりにおいて伴走支援が可能です。
まとめ
今後の人材戦略において、中小企業は「孤軍奮闘」ではなく「専門家との連携」がカギとなります。今回の報告書は、経営課題としての人材育成に国が本腰を入れ始めたサインでもあります。
熊本で事業を営む皆さまにおかれても、今こそ人材育成を“戦略”として見直す好機かもしれません。
人材開発支援や職業能力開発計画策定など、現場に即したアドバイスをご希望の方は、ぜひ社会保険労務士 荻生労務研究所までお気軽にご相談ください。
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