人手不足に悩む熊本の中小企業へ 奨学金返済支援制度を人材確保戦略の一手に

熊本県が若者の県内就職を促進するために創設した「奨学金返済支援制度」。制度開始から5年が経過したものの、毎年の利用者数は目標の半数以下にとどまっています。しかし、これは裏を返せば、今こそ中小企業がこの制度を活用して人材確保の差別化ができる好機です。
制度の概要と背景
熊本県は2021年度より、県内企業に就職した若者(大学卒・大学院修了者)の奨学金返済を県と企業で折半して支援する制度を開始しました。
支援額は最大で以下の通りです:
- 大学院修了者:456万円(年間最大45.6万円 × 10年)
- 大学卒業者:244万8千円(年間最大24.48万円 × 10年)
この制度の目的は明快です。
若者の県外流出を防ぎ、地元企業に定着させること。そして、地元企業の人材確保を支援すること。
しかしながら、実績は振るわず、直近2025年度でも41人の利用にとどまり、目標の110人には遠く及びません。
なぜ制度が活用されていないのか?
県の調査によれば、登録企業数・学生登録数は着実に増えているものの、「学生が就職したいと思う魅力的な企業」とのミスマッチが依然として課題となっています。
つまり、制度そのものが知られていない、あるいは活用されていないだけとも言えます。
中小企業こそ活用すべき理由
中小企業にとって人材採用は年々難しくなっています。特に、優秀な若手人材の確保には、「給与」や「福利厚生」だけでなく、他社と差別化されたアプローチが必要です。
この制度を活用することで、
- 初任給は変えずに、実質的な支援価値を提供できる
- 地元志向の学生に響くインセンティブを提供できる
- 企業としての社会的責任・地域貢献性をアピールできる
といったメリットがあります。
実務的なポイントとアクション
1. 県の制度登録企業になる(現在115社。まだ枠あり)
→ 熊本県商工労働部への申請が必要です。詳細は県HPに記載。
くま活サポート「2026年度就職者を対象とした学生等の制度登録について」
2. 自社の採用情報に制度の活用を明記する
→ 採用ページや説明会で「奨学金返済支援制度対応企業」と明示しましょう。
3. 制度を活用した支援モデルを設計する
→ 年間の費用負担額を明確にし、経営計画に組み込みます。
4. 学生・親世代への発信強化
→ ホームページやSNS、地元大学との連携を通じて「地元に就職する経済的メリット」を訴求します。
最後に:若者定着=地域の未来
制度が活用されないままでは、熊本から若者が流出し続ける構図は変わりません。
逆にいえば、今、この制度を活用する企業こそが、人材確保の先手を打てるのです。
人材不足の時代、補助金や支援策を上手に使えるかどうかが、経営の持続性を左右します。
御社の採用戦略に、「奨学金返済支援制度」という選択肢を加えてみてはいかがでしょうか?
※詳細情報や申請のご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
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