「週3勤務×副業OK」ロート製薬の挑戦から学ぶ、地方中小企業にできる実践とは?

大手企業の柔軟な働き方改革が注目を集めています。ロート製薬が打ち出した「週3勤務+副業推奨」という制度は、単なる時短勤務ではなく、“社員の成長”を軸にした本質的な取り組みです。熊本県内の中小企業にとっても、規模や業種に応じた形で応用可能なヒントが詰まっています。社会保険労務士としての視点から、この制度の本質と地方企業における実践のポイントを読み解きます。
ロート製薬の「週3〜4勤務+副業推奨」制度とは?
2025年10月、ロート製薬は正社員向けに勤務日数を週3〜4日に減らす選択制制度を導入しました。対象は「自己成長・自己実現につながる活動」に取り組むことを条件としており、給与と労働時間は日数に応じて5分の3または5分の4に調整されます。
副業、学び直し、社会活動、資格取得などが推奨されており、単なる時短勤務とは一線を画しています。特筆すべきは「評価制度や福利厚生はフルタイム勤務者と同等」とした点。これは“働く時間”よりも“成果と成長”を評価する考え方の表れです。
「成果は業務量に比例しない」という視点
ロート製薬の人事総務部は、「アウトプットは必ずしも業務量と比例しない」と明言しています。この考え方は、労働生産性やエンゲージメントを重視する欧米型の人事制度とも親和性があります。
とくに、育児・介護などのやむを得ない理由ではなく、「自己成長を目的とする時短勤務」を制度化した点は、日本企業においては革新的です。
地方中小企業にとっての「現実的な応用方法」
では、熊本県内の中小企業において、このような制度は導入可能なのでしょうか? 答えは「工夫次第で十分可能」です。すべてを模倣するのではなく、以下のような形で段階的導入が現実的です。
① 自己啓発目的の「週1副業デー」の設置
完全週3勤務ではなく、まずは「週1日だけ、社外活動・学習のために業務を免除する日」を設けてみる。これにより、社員の学び直しや社外での刺激が社内に還元されやすくなります。
② 評価制度の見直し
「働いた時間」ではなく「成果」や「スキル向上」を評価軸に取り入れることで、多様な働き方を容認しやすくなります。制度変更よりも、評価の柔軟化が第一歩となるでしょう。
③ 短時間正社員制度の活用
現在の雇用区分の中で、労働時間が短くても正社員とする「短時間正社員」制度を活用すれば、労働条件通知や社会保険適用もスムーズです。社労士の支援を受けながらの運用が安心です。
働き方の柔軟化は「人材確保」と「定着」へのカギ
地方中小企業においては、優秀な人材の確保と定着が年々難しくなっています。労働力人口の減少が加速する中、「働く側に選ばれる会社」になることが不可欠です。
とくにZ世代やミレニアル世代は、「成長できるか」「自由度があるか」を企業選びの重要な軸としています。今回のロート製薬の制度は、大企業でなくとも“成長支援型の職場づくり”が人材戦略の鍵になることを示しています。
まとめ:柔軟な働き方は、リスクではなく「投資」
制度の柔軟化や副業解禁は、一見すると業務管理の煩雑さや労務トラブルのリスクを想起させがちです。しかし、目的とルールを明確にした上で段階的に導入すれば、むしろ「人が育ち、人が集まる企業文化」への投資となります。
熊本の地場企業だからこそできる、社員一人ひとりに寄り添った制度設計。今こそ、自社の働き方を見直す好機です。
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社会保険労務士荻生労務研究所では、柔軟な働き方制度の設計支援・副業ルールの整備などを含む「労務コンサルティング」を実施しています。ご相談はお気軽にどうぞ。
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