いよいよ使えなくなる「保険証カード」企業として何を準備すべきか

12月1日で健康保険証カードは有効期限切れ。企業として何を準備すべきか?
2025年12月1日をもって、いよいよ「紙の健康保険証」のすべてが使用できなくなります。
これにより、今後は「マイナ保険証」または「資格確認書」が医療機関受診の際に必要になります。
本記事では、中小企業の経営者・人事労務担当者の方に向けて、制度変更の概要と実務上の注意点を整理します。
紙の保険証は12月1日で全て失効へ
厚生労働省は、2024年12月2日から「マイナ保険証」への完全移行を進めています。
すでに国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険証は今年7月末で有効期限を終え、
残る被用者保険(協会けんぽ・健保組合・共済など)の保険証も2025年12月1日で全て無効となります。
つまり、12月以降は「保険証カード」「紙の保険証」は使えません。
まだ手元の保険証を使っている従業員がいる場合、早急な周知と対応が必要です。
「マイナ保険証」への登録が基本に
今後の医療機関受診は、原則として「マイナ保険証」(=マイナンバーカード+利用登録)が必要です。
ただし、2025年9月時点の全国利用率は約35%と、普及はまだ道半ば。
企業としては、次の点を社内で整理・案内しておくと安心です。
- (1)マイナンバーカードの取得を従業員に促す
- (2)健康保険証としての利用登録を行うよう案内(マイナポータルまたは医療機関)
- (3)登録未完了者には「資格確認書」が交付されることを伝える
「資格確認書」とは?
マイナ保険証をまだ登録していない方には、保険者(協会けんぽ・健保組合など)から自動的に「資格確認書」が送られます。
申請不要・無料で、提示すれば保険診療が受けられます。
ただし、有効期限は最長1年。また、マイナ保険証とは異なり、オンライン資格確認端末での本人確認がスムーズに行えない場合もあります。
企業としての実務対応ポイント
特に中小企業では、次のような対応を行うことが望まれます。
- 従業員への社内通知:「紙の保険証」は12月1日で使えなくなる旨を案内
- 入社時の案内資料の更新:「保険証が届くまでの流れ」等を見直す
- マイナ保険証登録の支援:希望者への登録サポート(昼休み時間の案内など)
- 資格確認書が届かない従業員へのフォロー:本人確認と再交付手続き支援
視点:制度移行は“労務DX”の第一歩
今回のマイナ保険証化は、単なる保険証の切り替えではありません。
医療・行政・企業間での情報連携を前提とした「労務DX」の始まりです。
企業が今できるのは、
- 従業員がスムーズに医療を受けられるようサポートすること
- マイナンバーカードを「給与・年末調整・雇用保険手続き」などの電子申請と一体的に活用していくこと
変化を前向きに捉え、社内の手続きを一段階アップデートする好機といえます。
まとめ
✅ 12月1日で紙の保険証は全て失効
✅ マイナ保険証 or 資格確認書の提示が必須
✅ 社内での周知・案内・サポートが重要
✅ 制度移行を「労務DX」の第一歩に
荻生労務研究所より
当事務所では、マイナ保険証対応や雇用保険・社会保険の電子申請導入支援も行っています。
制度移行に関する社内説明資料や、従業員向けの案内文テンプレートが必要な方はお気軽にご相談ください。
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