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人事労務ニュース

資格確認書の「一律交付見直し」で、介護施設の実務は軽くなるのか?―2026年8月以降を見据えた5つの備え

2025年12月2日から、受診時の提示は「マイナ保険証」または「資格確認書」が基本になりました。介護施設にとっては、入居者のカード保管・持ち出し・紛失時対応・更新(電子証明書は5年)など、“現場で回す実務”が最大の論点です。
そんな中、2025年12月18日に、後期高齢者医療制度の「資格確認書」を一律で交付する仕組みを見直す方針が示されました。これが施設負担の軽減につながるのか、熊本の施設運営の目線で整理します。

介護現場が抱えてきた「マイナ保険証」実務の重さ

2023年に示された施設向けマニュアルで、出張申請や施設内での管理方法(鍵付き保管、管理者の限定、持ち出し管理など)が具体化しました。一方で、現場の懸念は大きく3つに集約されます。

(1)貴重品管理の責任が重い
健康保険証よりも「本人確認+多用途カード」である分、紛失・盗難・不正利用リスクへの心理的負担が増します。

(2)意思確認・代理手続きが難しいケース
認知症等で意思確認が難しい/身寄りが薄い場合、施設の判断だけで申請を進めにくい場面が残ります。

(3)“5年更新”の壁
カード自体は10年でも、電子証明書は5年。更新が滞るとマイナ保険証として使えなくなるため、施設側で「更新管理台帳」を回す必要が出ます。

今回のニュース:資格確認書の交付が「申請制」に寄る(2026年8月以降の案)

今回の見直し案のポイントは次の通りです。

・85歳以上:これまで通り、資格確認書を一律交付する方向
・84歳以下:マイナ保険証を一定程度利用している人は、2026年8月以降「申請があった場合のみ」資格確認書を交付する方向
(要件案:直近1年で6回以上の利用+直近3か月以内にも利用)

つまり、「普段からマイナ保険証で受診できている人」には資格確認書を自動で送らない方向です。

施設の負担は軽くなる?結論:入居者構成次第で“増える”可能性も

ここが経営者として押さえたい要点です。

■(A)多くの特養・老健は「85歳以上」が中心 → 影響は限定的

85歳以上に一律交付が続くなら、熊本の多くの施設では“今の運用”が大きく崩れない可能性があります。
(=資格確認書を施設で預かって運用する、という選択肢が残りやすい)

■(B)75~84歳の入居者が一定数いる施設は注意

・入居前は外来受診が多く、家族がマイナ保険証で受診していた
・入居後は施設職員が受診同行・持ち出し管理を担う
この切り替わり局面で、資格確認書が“自動で届かない”人が出ると、施設側が申請支援を求められる可能性があります。

■(C)前回記事の課題(カード管理・更新負担)が「解決」するか?

今回の見直しは、資格確認書の“配り方”の調整であり、

・カードの保管責任
・受診のたびの持ち出し管理
・電子証明書の更新管理(5年)

といった介護現場の実務負担を直接軽くする制度変更ではありません。
むしろ、84歳以下で「資格確認書を標準装備にしておきたい」施設運用の場合、申請が増える分だけ事務負担が乗るリスクがあります。

熊本の介護施設が今から打てる、現実的な5つの対策

(1)入居者を“3区分”で棚卸しする(最優先)

A:85歳以上(原則:資格確認書が一律交付の方向)
B:75~84歳でマイナ保険証の利用実績が多い(将来:資格確認書が申請制に寄る)
C:マイナ保険証の利用が難しい(配慮が必要、申請で資格確認書を確保する対象)
→ この棚卸しだけで、2026年夏以降の混乱がかなり減ります。

(2)「施設で預かる書類」を1つに寄せる

現場は、持ち出すカードが増えるほど紛失リスクが上がります。
施設方針として、マイナ保険証を預かるのか/資格確認書を基本にするのかを、入居契約・重要事項説明の運用に落とし込みましょう。

(3)更新管理は“カレンダー化”して属人化を防ぐ

電子証明書の更新(5年)は、担当者の記憶に頼ると必ず漏れます。
入居者台帳に「電子証明書の満了月」を項目として持たせ、半年前にアラートが出る運用(Excelでも可)をおすすめします。

(4)意思確認が難しいケースは「家族・後見人・市町村」を早めに巻き込む

入居時点で、
・キーパーソン
・法定代理人(成年後見等)の有無
・同意書(カード預かり、申請支援、受診同行の範囲)
を“書面で”整えておくと、現場の迷いが減ります。

(5)熊本県後期高齢者医療の案内ページを「施設内リンク集」に入れる

制度は運用変更が入りやすく、現場の問い合わせ対応が増えます。
担当者が迷わないよう、公的ページ(広域連合・市の案内・厚労省)を施設内で共有しておくのが実務的です。

まとめ:2026年8月が“次の山”。今は棚卸しと運用設計の時期

今回の「資格確認書」見直しは、国としては“使えている人には重複交付しない”合理化です。
しかし介護施設の現場では、「受診のたびに誰が何を持つか」「紛失時にどう復旧するか」「更新を誰が管理するか」が本丸です。

結論としては、

・85歳以上が中心の施設:大きな影響は出にくいが、更新・管理の仕組み化が必須
・75~84歳の入居者が一定数いる施設:2026年夏以降の申請・書類不足リスクを先回りして潰す

この2点を軸に、2026年8月を“混乱の起点”にしない準備を進めるのが安全です。

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