男性育休の実態と課題:復帰後の働き方こそが真の分岐点

2025年4月に改正育児・介護休業法が施行され、男性育休をめぐる制度は確かに前進しました。しかし、現場では「育休は取ったが復帰後が地獄だった」という声も少なくありません。制度の整備だけでは乗り越えられない「現実の壁」とは何か。社労士として見過ごせない課題を、実務視点で読み解きます。
育休取得率30%の光と影
男性の育休取得率は2023年度に30%を記録。10年前の2.7%から飛躍的な伸びです。しかし、注目すべきはその”後”。復帰後の職場環境が整っていなければ、男性の育児参加は一時的なイベントで終わり、家庭への影響は深刻なものになります。
長時間労働の常態化と職場文化
復帰後すぐに残業が常態化し、育児分担の約束が破綻しているケースが多発しています。背景には、人手不足と「残業ありき」の職場文化があります。東京都の調査では、出産後も1日10時間以上働く父親が45%、12時間超えが19%。育児どころか、自身の健康すら危ぶまれる状況です。
法改正の内容と限界
2025年4月の改正では、残業免除申請の対象が子の小学校入学前までに拡大されました。しかし、利用実績はごくわずか。厚労省の調査では、男性正社員のうち残業免除申請経験者は6.5%。制度があっても使われない要因として、周囲の理解不足とロールモデルの不在が挙げられます。
この問題に社労士が果たせる役割
このようなギャップを埋めるには、企業における実態の把握と制度運用の再設計が欠かせません。とりわけ、
- 就業規則や社内制度の見直し
- 育児と仕事の両立支援に関する研修の実施
- 管理職への意識改革
など、社労士として中小企業に伴走することが今こそ求められています。
育休後こそが支援の本番
育休を取らせることは”スタート地点”に過ぎません。真の課題は復帰後の働き方。制度と職場文化のズレを是正し、男性が育児に継続参加できる環境を整備することが、企業の持続的成長と働き方改革の鍵となります。
当事務所では、熊本市に拠点を置く事務所として、熊本県内の企業への育児支援制度の導入から実務運用まで、企業の現実に即したサポートを行っています。お気軽にご相談ください。
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