大学教授が起業すると社会保険はどうなる?大学発ベンチャーが知っておくべき注意点

大学教員が起業したら社会保険はどうなる?
大学発ベンチャーやスタートアップを立ち上げた経営者の皆様の中には、大学教授の立場を維持しながら起業される方も多くいらっしゃいます。
その際に、意外と見落とされがちなのが「社会保険の取り扱い」です。
今回は、国立大学教員がスタートアップを設立・運営する際の社会保険について、社会保険労務士の立場から詳しく解説します。
国立大学の教員は国家公務員ではないけれど、共済組合に加入している
2004年4月に国立大学が法人化され、大学教員は「国家公務員」ではなくなりました。
しかし、社会保険については引き続き「国家公務員共済組合」(正確には文部科学省共済組合)に加入しています。
つまり、教授である限りは、公務員時代と同様、共済組合の被保険者となっているのです。
教授を続けながら設立した法人で、社会保険に加入できるのか?
結論から言うと、教授の地位を維持したまま設立した法人で、社会保険(協会けんぽ・厚生年金)に加入することはできません。
これは、厚生年金保険法第18条の2により、「共済組合に加入している者は、民間の厚生年金被保険者になれない」趣旨の規定がされているためです。
同様に、健康保険についても協会けんぽや健康保険組合に加入することはできません。
つまり、教授としての立場を続けながら起業した場合、設立した法人単体で社会保険に加入することはできず、共済組合一本で対応することになります。
(ただし、教授を退職し、法人専業になれば、法人で社会保険に加入可能です。)
まとめ:教授のままでは法人の社会保険に入れない
大学教授がその職を維持したまま起業した場合、法人での社会保険加入はできません。共済組合と協会けんぽ・厚生年金保険は併用できないため、本業である教授職の共済組合一本となります。
なお、大学発ベンチャー、あるいは一般企業で、大学教授を役員に迎える場合の社会保険にも、注意が必要です。これは次回に解説します。
起業・法人設立時の社会保険で、迷ったらご相談ください
社会保険の制度は複雑で、兼業・副業・起業の形態によっても扱いが変わります。
制度の誤解が後のトラブルにつながるケースも、多く見られます。
もし現在、設立準備や社会保険の手続きでお悩みの方は、当事務所までぜひご相談ください。大学発ベンチャーの支援経験もございます。
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