社会保険料を抑える「形だけの法人加入」が違法に──厚労省の指導強化と個人事業主が知っておくべきこと

社会保険料を抑える「形だけの法人加入」が違法に──厚労省の指導強化と個人事業主が知っておくべきこと

2026年9月14日、厚生労働省は、勤務実態のない法人役員として社会保険に加入し保険料負担を不当に軽減していた違法行為に対し、38事業者への指導を完了し、1万1000人超が被保険者資格を喪失したと発表しました。今回の措置は、個人事業主やフリーランスの方々にとって「社会保険加入の適正性」を改めて考える重要な転換点です。本記事では、この問題の背景と、今後求められる対応について社会保険労務士の視点から解説します。

■ 何が問題だったのか?

個人事業主やフリーランスの方は、通常、国民健康保険と国民年金に加入し、保険料は全額自己負担となります。一方、法人の役員として報酬を得ると、厚生年金保険・健康保険(いわゆる社会保険)が適用され、保険料の半分を法人が負担する仕組みになっています。

今回問題となったのは、この仕組みを悪用し、実際には勤務実態がないにもかかわらず、一般社団法人などの役員に形式的に就任して社会保険料を低く抑える手法です。

具体的には、以下のようなケースが該当します。

– 一般社団法人の役員として登記されているが、実際の業務は個人事業のまま
– 法人での勤務時間が極端に短く、報酬も形式的に設定されている
– 法人の従業員として雇用契約を結んでいるが、実質的には個人事業主として活動している

厚生労働省は2026年3月にこれらの行為を違法と位置づけ、日本年金機構を通じた調査と指導を進めてきました。

■ 厚労省の対応と今後の方針

今回の発表では、38事業者が指導に応じ、合計1万1610人が被保険者資格を喪失しました。調査では当初想定されていた「形式的な役員就任」だけでなく、「従業員としての形式的雇用」も新たに確認されています。

これを受けて厚生労働省は、日本年金機構に対し以下のようなケースも違法行為に該当すると通知しました。

– 法人での勤務時間が極端に短い
– 個人事業主としての業務を、そのまま法人で行っている
– 実態として法人に雇用されている状態とは言えない

今後も調査は継続され、違法行為が確認されれば厳正に対処するとしています。

■ 個人事業主・フリーランスが知っておくべきこと

1. 「形だけの加入」はリスクが高い

一見、保険料負担が軽くなるように見えるこの手法ですが、違法行為と認定されれば、遡って資格喪失となり、保険料の返還や追徴が発生する可能性があります。また、将来的に年金受給額にも影響が出るおそれがあります。

2. 実態に基づいた加入が大原則

社会保険の適用は、「実態として法人に雇用され、報酬を得ている」ことが前提です。単に書類上の役員や従業員であるだけでは認められません。

3. 適正な制度利用を検討する

もし法人設立を検討されている場合は、事業の実態に即した形で役員報酬や雇用形態を設計することが不可欠です。社会保険労務士などの専門家に相談し、適法かつ合理的な制度設計を行うことをお勧めします。

■ 社会保険制度の公平性と持続可能性

今回の措置は、制度の公平性を守るための当然の対応です。一部の違法行為が放置されれば、真面目に保険料を納めている多くの事業者や働き手の信頼を損ない、ひいては制度そのものの持続可能性が危ぶまれます。

私たち社会保険労務士は、適正な労務管理と社会保険制度の健全な運用を支援する立場にあります。今回の件を機に、ご自身の加入状況に不安がある方、法人設立を検討中の方は、ぜひ専門家にご相談ください。

■ まとめ

– 勤務実態のない法人役員・従業員としての社会保険加入は違法
– 厚労省は今後も調査を継続し、厳格に対処する方針
– 個人事業主・フリーランスの方は、実態に即した適正な制度利用を

社会保険制度は、私たちの生活を支える重要な基盤です。正しい理解と適切な運用で、安心して事業に取り組める環境を整えていきましょう。

ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

■ 参考情報

NHKニュース 2026年9月14日「社会保険料抑える違法行為 厚労省指導で1万人余が資格喪失」

【NHK】勤務実態がないにもかかわらず、社会保険が適用される法人の役員に就任して保険料を低く抑える違法行為をめぐり、厚生労働省は、38の事業者が指導に応じ、あわ…
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