熊本県の外国人雇用最前線 TSMC進出で変わる労務管理のポイント

熊本県の外国人雇用が注目される理由
日本全体で人手不足が深刻化する中、特に製造業や建設業、介護業界などでは国内の労働力だけでは需要を満たせない状況が続いています。熊本県も例外ではなく、労働力確保の手段として外国人雇用がますます重要視されています。
さらに、TSMC(台湾積体電路製造)による熊本進出が地域の雇用環境に大きな影響を及ぼしています。TSMCは世界最大級の半導体メーカーであり、熊本県菊陽町に建設された工場(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing、以下JASM)は、2024年12月に量産を開始しました。この工場の稼働により、約1,700人の新たな雇用が生まれ、県内外から多くの人材が必要とされています。
しかし、熊本県の労働力はすでに限界に達しており、TSMCや関連企業による大量の人材確保がさらなる人手不足を引き起こす可能性が高まっています。地元企業からは「優秀な人材がTSMCに流れてしまう」「慢性的な人手不足がさらに深刻化する」といった懸念の声が上がっています。このような背景から、外国人労働者の受け入れが熊本県の企業にとって避けられない選択肢となりつつあります。
熊本県の外国人労働者の現状
熊本県内では、技能実習生や特定技能の外国人労働者が増加傾向にあります。農業、製造業、建設業、宿泊業、介護などの分野では、外国人労働者の力なしには成り立たない企業も多く存在します。熊本労働局の最新統計によると、2024年10月末時点で県内の外国人労働者数は21,437人に達し、前年から3,211人増加し過去最高を記録しました。国籍別では、ベトナム出身者が最も多く6,259人(全体の29.2%)を占め、次いでフィリピンが3,162人(14.8%)、インドネシアが2,890人(13.5%)となっています。
ただし、外国人を雇用する際には適切な労務管理が求められます。文化や言語の違い、労働環境への適応など、外国人労働者が安心して働ける環境を整えることが企業側の重要な責務となります。
TSMC進出と外国人雇用の関係
TSMCの熊本工場では、日本国内からの人材確保を最優先としていますが、今後は外国人技術者やエンジニアの採用が進む可能性も指摘されています。半導体産業は高度な専門知識が求められるため、特定技能や高度人材ビザを活用した外国人技術者の受け入れが進むと考えられます。また、TSMCの進出に伴い、周辺の関連企業や協力会社も増加し、熊本県全体の労働市場に大きな変化をもたらしています。その結果、中小企業を中心に人手不足がさらに深刻化し、外国人雇用の必要性が一層高まることが予想されます。
このような状況を踏まえると、熊本県の企業は今後、外国人労働者をどのように受け入れ、適切に労務管理を行うかが重要な経営課題となります。本記事では、熊本県の企業が外国人を雇用する際に押さえておくべきポイントや具体的な成功事例、労務管理の注意点などについて詳しく解説していきます。
TSMC進出で熊本県の人手不足はどう変わるのか?
1. TSMC進出がもたらす雇用拡大と人手不足の深刻化
TSMCの熊本工場(JASM)は2024年12月に量産を開始し、すでに1,700人以上の雇用を生み出しています。今後、第2工場の建設も計画されており、さらに数千人規模の人材確保が必要になる見込みです。これにより、熊本県の経済は活性化する一方で、深刻な人手不足が加速しています。
特に、TSMCに人材が集中することで、地元の中小企業の人手不足がさらに悪化する可能性があります。実際、2024年時点で熊本県の有効求人倍率は1.5倍を超えており、企業が求人を出しても人材を確保しにくい状況が続いています。特に製造業では、TSMCの給与水準が比較的高いため、労働者がそちらへ流れる傾向があり、中小企業の採用競争は一層激しくなっています。
また、TSMCだけでなく、その関連企業や半導体サプライチェーンに関わる企業も熊本県内で増加しており、さらなる人材不足を引き起こしています。半導体産業が盛んな台湾や韓国では、すでに外国人技術者を積極的に採用する動きが見られますが、熊本でも今後、外国人労働者の受け入れが不可欠になるでしょう。
2. 外国人労働者の需要が高まる業界とは?
TSMC進出の影響で人手不足が加速している業界は、半導体産業だけではありません。TSMC工場の稼働により、熊本県全体で以下の業界でも人材需要が急増しています。
(1) 製造業(半導体関連を含む)
TSMC本体だけでなく、そのサプライチェーンに関わる企業も多くの人手を必要としています。特に、部品製造や機械メンテナンスなどの分野では、特定技能や技能実習生の活用が期待されています。
(2) 建設業
TSMCの新工場建設に伴い、熊本県内では建設業の求人が急増しています。しかし、若手の人材確保が難しく、外国人技能実習生や特定技能の活用が今後の課題となっています。
(3) 物流・運輸業
半導体製品や関連部品の流通が活発化することで、倉庫業や運送業の人手不足も深刻化しています。これに対応するため、外国人労働者の採用が進む可能性があります。
(4) サービス・飲食業
TSMCや関連企業の進出により、熊本県には多くの技術者や労働者が移り住んでいます。それに伴い、飲食業や小売業、宿泊業などのサービス業の需要が増加し、人材不足が発生しています。特に、留学生や特定技能ビザを活用した外国人労働者の採用が鍵となるでしょう。
3. 熊本県の企業がとるべき対策
今後、熊本県の企業が人手不足に対応するためには、以下のような対策が求められます。
(1) 外国人労働者の積極採用
すでに多くの企業が技能実習生や特定技能ビザを活用して外国人労働者を受け入れています。今後は、より専門的な業務に対応できる高度人材(エンジニアなど)の受け入れも視野に入れる必要があります。
(2) 労働環境の改善と定着支援
外国人労働者が長く働きやすい環境を整えることが重要です。具体的には、日本語教育の充実、社内のサポート体制の整備、住宅支援などが求められます。
(3) 給与・待遇の見直し
TSMCの高待遇が話題になる中、中小企業が優秀な人材を確保するためには、給与水準の見直しや福利厚生の充実も重要なポイントとなります。特に、住居手当や交通費の支給など、外国人労働者にとって魅力的な条件を整えることが必要です。
4. まとめ:TSMC進出が熊本の雇用市場に与える影響
TSMCの進出は熊本県の経済成長に大きく貢献していますが、同時に人手不足を深刻化させる要因ともなっています。特に、製造業や建設業、サービス業では、労働力確保が今後の重要課題となるでしょう。
今後、熊本県の企業が生き残るためには、外国人労働者の活用を積極的に進めることが不可欠です。本記事の次の章では、外国人雇用の具体的なポイントについて詳しく解説していきます。
熊本県で外国人を雇用する際のポイント
TSMCの進出に伴い、熊本県では半導体関連企業を中心に外国人労働者の需要が高まっています。しかし、外国人を雇用するには、労働法や社会保険制度への適切な対応、労務管理、職場環境の整備が不可欠です。本章では、熊本県の企業が外国人雇用を進める際に押さえておくべきポイントについて解説します。
1. 在留資格の基礎知識
外国人を雇用する際、まず確認すべきなのが在留資格です。日本にはさまざまな在留資格がありますが、熊本県の企業で働く外国人に多いのは以下の3つです。
- 技能実習:発展途上国からの労働者が技術を学ぶための制度。製造業や建設業で多く利用される。
- 特定技能:特定の業種で即戦力となる外国人を受け入れる制度。製造業や介護業、飲食業などで活用されている。
- 技術・人文知識・国際業務:エンジニアや事務職など、高度な知識を持つ外国人が対象。TSMC関連企業での技術職採用に適している。
在留資格の申請や手続きは複雑なため、行政書士などの専門家に相談することを推奨します。企業側は、外国人労働者が適正な在留資格で働いているかを必ず確認し、不法就労を防ぐことが重要です。
2. 労働法・社会保険の対応
(1) 外国人にも適用される労働法
外国人労働者も日本の労働法の適用を受けます。特に以下の点はしっかりと理解しておきましょう。
- 最低賃金の遵守:熊本県の最低賃金は、2024年10月時点で952円に改定されており、これを下回る給与設定は禁止されています。
- 労働時間・休日の管理:時間外労働や休日労働は、適正な割増賃金を支払う必要がある。
- 雇用契約書の作成:労働条件を明記した雇用契約書を、外国人労働者が理解できる言語で用意する。
(2) 社会保険と税金の手続き
外国人労働者も、一定の条件を満たせば社会保険に加入する義務があります。
- 健康保険・厚生年金保険:通常の労働者の4分の3以上の所定労働時間、所定労働日数を働く外国人は、原則として加入義務あり。
- 雇用保険:週20時間以上働く場合に加入義務あり。
- 住民税・所得税:外国人労働者も納税義務があるため、企業は適切な手続きを行う。
外国人労働者が社会保険や税金について正しく理解できるよう、説明会の実施やサポート体制を整えることが望ましいでしょう。
3. 人手不足を補うための労務管理と定着支援
外国人労働者を雇用した後、長く働いてもらうためには、定着支援が重要です。
(1) 言語・文化の違いを考慮したコミュニケーション
外国人労働者との円滑なコミュニケーションを図るために、以下のような取り組みが効果的です。
- 日本語教育の支援:社内で日本語研修を実施する、もしくは外部の語学学校と連携する。
- 多言語対応のマニュアル作成:業務手順や社内ルールを英語・ベトナム語・中国語などで記載したマニュアルを用意する。
- 相談窓口の設置:労働者が困ったときに相談できる窓口を設ける。特に、文化の違いや生活面での悩みを相談できる環境があると安心感が生まれる。
(2) 研修・教育制度の整備
外国人労働者のスキル向上をサポートすることで、企業にとっても戦力として成長しやすくなります。
- 業務研修の実施:日本の仕事の進め方や安全管理などを学べる研修を用意する。
- キャリアアップ支援:長期的に働けるよう、資格取得支援や昇進の機会を提供する。
(3) 生活支援と地域社会との連携
外国人労働者が熊本県で安心して暮らせる環境を整えることも、定着率向上に重要です。
- 住居支援:外国人が住みやすい住宅を企業側が斡旋する。自治体の支援制度を活用するのも有効。
- 生活サポート:銀行口座の開設、病院の利用方法、公共交通機関の使い方などをサポートする。
- 地域交流の機会提供:地元住民との交流イベントを実施し、外国人が地域に溶け込みやすい環境を作る。
4. まとめ:外国人労働者の受け入れで企業の競争力を高める
熊本県の人手不足が深刻化する中、外国人労働者の受け入れは今後ますます重要な選択肢となります。ただし、雇用するだけでなく、適切な労務管理と定着支援を行うことで、企業にとっても大きなメリットを生み出すことができます。
次の章では、熊本県の企業が外国人雇用に成功した事例を紹介し、具体的な取り組みを解説します。
外国人雇用の成功事例(熊本県の企業ケーススタディ)
熊本県では、TSMCの進出に伴い外国人労働者の受け入れが進んでいます。しかし、「実際に外国人を雇用すると、どのような課題があるのか?」「定着率を上げるには何が必要か?」といった疑問を持つ企業も多いでしょう。そこで本章では、熊本県内の企業が外国人雇用に成功した事例を紹介し、具体的な取り組みを解説します。
1. 事例①:製造業(半導体関連企業)— 特定技能制度を活用し人手不足を解消
【課題】日本人労働者の確保が困難
熊本県内のある半導体部品メーカーでは、TSMC進出の影響で日本人技術者が不足し、工場の稼働率が低下していました。特に、組立・検査ラインのオペレーターが不足し、生産計画の遅延が発生していました。
【取り組み】特定技能制度を活用し、外国人労働者を受け入れ
そこで同社は、2023年から特定技能ビザを活用し、ベトナム人・フィリピン人の労働者10名を採用しました。特定技能制度は、一定の技能試験に合格すれば、最長5年間の就労が可能なため、技能実習生よりも即戦力となる人材を確保できるメリットがあります。
【成果】定着率向上&生産性アップ
導入当初は、日本語の壁や業務習熟のスピードに課題がありました。しかし、同社は次のような工夫を行い、定着率を向上させました。
✅ 多言語マニュアルの整備:作業手順書を英語・ベトナム語・フィリピン語で用意
✅ 社内日本語教室を実施:週に1回、日本語学習の時間を確保
✅ 先輩社員とのメンター制度:日本人社員が外国人労働者をサポート
その結果、外国人労働者の業務習熟度が向上し、導入1年後には生産性が15%アップ。また、離職率も低く、企業としての安定した生産体制を構築できました。
2. 事例②:建設業— 技能実習生の定着率向上で長期雇用を実現
【課題】外国人技能実習生が定着しない
熊本県内のある建設会社では、技能実習生の採用を進めていましたが、3年間の実習期間が終了すると帰国してしまうケースが多く、人材の入れ替わりが激しいことが課題でした。
【取り組み】生活支援の充実と特定技能への移行サポート
同社は、技能実習生の定着率を上げるために、次のようなサポートを実施しました。
✅ 住居支援:社宅を用意し、家具・家電を完備
✅ 生活サポート:銀行口座開設・スマホ契約・病院の利用方法を手助け
✅ 特定技能への移行サポート:技能実習3年修了後、特定技能ビザへ切り替えられるよう研修を実施
【成果】長期雇用が可能になり、技術力が向上
これらの取り組みの結果、技能実習生の80%以上が特定技能へ移行し、同じ会社で長く働くようになりました。 長期雇用が可能になったことで、技術力の向上も進み、ベトナム出身の従業員がリーダーとして活躍する事例も生まれました。
3. 事例③:飲食業— 外国人アルバイトの活用で人材不足をカバー
【課題】店舗スタッフの確保が難しい
熊本市内のある飲食チェーン店では、深刻な人手不足により営業時間の短縮を余儀なくされていました。 特に夕方以降のシフトに入る日本人スタッフが少なく、店舗運営に支障をきたしていました。
【取り組み】留学生や特定活動ビザを持つ外国人を積極採用
同社は、熊本県内の大学に通う留学生をターゲットに、次のような施策を実施しました。
✅ 外国人向けの求人サイトを活用し、英語・ベトナム語で募集を実施
✅ 簡単な業務から始め、少しずつ専門的な仕事を任せる
✅ 社員登用の道を用意し、長期雇用を目指せる環境を整備
【成果】人手不足を解消し、売上アップ
現在、同社の外国人スタッフは全体の20%を占め、特に夕方以降のシフトを支えています。多言語対応が可能になったことで、インバウンド客への対応力も向上し、売上が前年比15%増加するなどの成果が出ています。
4. まとめ:成功のカギは「受け入れ体制の整備」
熊本県で外国人雇用に成功している企業には、次のような共通点があります。
- 在留資格に応じた適切な雇用方法を選択(特定技能・技能実習・留学生など)
- 日本語教育や研修制度の充実
- 生活面での支援を強化し、定着率を向上させる
- 外国人労働者がキャリアアップできる仕組みを用意
今後、熊本県内の企業が人手不足を補うためには、単に外国人を雇用するだけでなく、長期的に定着させる仕組みを構築することが重要です。
次の章では、外国人雇用における法的リスクと、その対策について詳しく解説します。
外国人雇用で注意すべき法的リスク:社労士が解説
外国人労働者の受け入れが進む中で、企業が注意すべきポイントは労働法や社会保険の適用、適切な雇用契約の締結、不法就労の防止です。外国人雇用に関するルールを正しく理解しないまま採用を進めると、企業側が法的責任を問われるケースもあります。本章では、外国人雇用における代表的な法的リスクと、その対策について解説します。
1. 在留資格の不備による「不法就労」リスク
(1) 在留資格の確認は企業の義務
外国人を雇用する際、最も注意すべきリスクが「不法就労」です。適切な在留資格を持たない外国人を雇用した場合、企業側にも罰則が科される可能性があります。
【不法就労に該当するケース】
✅ 在留資格が「留学」の外国人を週28時間を超えて働かせた
✅ 在留資格が「観光・短期滞在」の外国人を雇用した
✅ 在留期限が切れた外国人を継続して働かせた
企業側は、雇用する外国人の在留カードを必ず確認し、在留資格や就労制限の有無をチェックしなければなりません。また、定期的に在留期限を確認し、更新が必要な場合は本人に通知することが重要です。
(2) 違反すると企業にも重い罰則が
不法就労助長罪に該当すると、企業は3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。意図的でなくても、適切な確認を怠った場合は責任を問われるため、雇用管理を徹底する必要があります。
2. 労働条件の違反によるトラブル
(1) 最低賃金・労働時間の違反
日本人と同様に、外国人労働者にも労働基準法が適用されます。最低賃金を下回る給与や長時間労働を強要した場合、企業は罰則を受ける可能性があります。
✅ 熊本県の最低賃金は2024年10月時点で「952円」。これを下回る給与設定は禁止。
✅ 時間外労働には割増賃金(25%増し以上)を適用する。
✅ 1日8時間、週40時間を超える労働は「36協定」の締結が必要。
特に、外国人労働者は労働環境の違いに戸惑うことが多く、長時間労働や未払い賃金のトラブルが発生しやすいため、企業側の適切な管理が求められます。
(2) 雇用契約書を理解できる言語で作成する
外国人労働者のトラブルで多いのが、労働条件の認識違いです。
✅ 雇用契約書を外国人が理解できる言語で用意する(英語、ベトナム語、中国語など)
✅ 業務内容・給与・労働時間・休日・社会保険の適用条件を明確に記載する
✅ 入社前に契約内容を十分に説明し、疑問点を解消する機会を設ける
契約内容が不明確なまま雇用すると、「聞いていた話と違う」として労働基準監督署への相談や訴訟に発展するリスクがあります。
3. 社会保険未加入によるリスク
(1) 外国人も社会保険の適用対象
外国人労働者も、日本人と同様に一定の条件を満たせば社会保険の加入義務があります。
✅ 健康保険・厚生年金保険:通常の労働者の4分の3以上の所定労働時間・労働日数で働く場合は加入が義務。
✅ 雇用保険:週20時間以上の労働で加入義務あり。
「外国人だから社会保険に入れなくてもいい」という誤解は禁物で、適正に加入しないと企業側に過去分の保険料支払いを求められるケースもあります。
4. 文化・言語の違いによる労務トラブル
(1) 職場でのハラスメント
外国人労働者は、日本の企業文化や上下関係に慣れていないことが多く、職場でのハラスメントや差別的な発言が問題になることがあります。
✅ 指導の際は、相手の文化を尊重し、わかりやすく説明する
✅ 言葉の壁による誤解を防ぐために、必要に応じて通訳や多言語マニュアルを活用する
✅ 定期的に外国人労働者との面談を実施し、悩みや問題点を把握する
外国人労働者が働きやすい環境を整えることが、定着率の向上につながります。
(2) 退職・解雇時の注意点
外国人労働者の退職や解雇の際には、特に慎重な対応が求められます。
✅ 解雇は労働基準法に基づき、合理的な理由が必要
✅ 自己都合退職の場合でも、帰国手続きのサポートを検討する
✅ 離職後の在留資格変更が必要な場合は、適切な情報提供を行う
5. まとめ:外国人雇用のリスクを防ぐには?
外国人労働者を雇用する際は、在留資格の確認、労働条件の適正な管理、社会保険の適用、文化・言語の違いへの配慮が重要です。特に、不法就労を防ぐためには、採用時に慎重な確認を行い、定期的な管理を徹底することが求められます。
次の章では、熊本県の企業が外国人雇用を進めるにあたって今後取り組むべきポイントのまとめと、今後の展望について解説します。
まとめと今後の展望
TSMCの熊本進出により、熊本県の雇用環境は大きく変化しています。半導体産業の発展とともに、関連企業やサプライチェーン全体での人材需要が急増し、県内の人手不足がさらに深刻化しています。TSMC本体だけでなく、その周辺の製造業や建設業、サービス業など、幅広い分野で人材確保が課題となっています。
こうした状況の中、外国人労働者の活用は、企業にとって必要不可欠な選択肢となっています。技能実習生や特定技能制度を活用する企業が増えており、外国人雇用の成功事例も多く見られます。しかし、単に採用を増やすだけでは、長期的な人材確保にはつながりません。
本記事で紹介した成功事例に共通するポイントは、外国人労働者が働きやすい環境を整えることです。例えば、言語の壁を克服するための研修制度や、住居支援などの生活サポートを充実させることで、外国人労働者の定着率を向上させ、企業の生産性や安定性を高めることができます。
また、外国人雇用に関する法的リスクにも十分な注意が必要です。労働基準法の遵守はもちろんのこと、社会保険の適用、不法就労の防止、適切な雇用契約の締結など、企業が適切に対応しなければならない点は多くあります。特に、在留資格の管理を怠ると、企業側が法的責任を問われるケースもあるため、定期的なチェックが欠かせません。
熊本県の企業が今後取り組むべきこと
今後、熊本県の企業が外国人雇用を成功させるためには、次のような取り組みが求められます。
① 外国人労働者の受け入れ体制の強化
- 日本語教育の充実(社内研修の実施、外部の語学学校との連携)
- 職場環境の整備(外国人でも理解しやすいマニュアルの用意、多文化共生の意識醸成)
- 生活支援の提供(住居の手配、銀行口座開設のサポート、医療機関の利用支援)
② 労務管理の適正化
- 最低賃金の遵守(2024年10月時点で熊本県の最低賃金は952円)
- 労働時間の管理(1日8時間、または週40時間を超える場合は「36協定」の締結が必要)
- 雇用契約の明確化(外国人が理解できる言語で契約内容を説明)
③ 不法就労防止の徹底
- 在留カードの定期確認(在留資格や就労制限のチェック)
- 適切なビザの取得(行政書士などの専門家と連携)
- 企業側の責任の認識(不法就労が発覚した場合、企業も厳しい罰則を受ける可能性がある)
④ 最新の法改正情報の把握と専門家への相談
- 社会保険労務士や行政書士と連携し、最新の制度を把握
- 外国人雇用に関する研修への参加(自治体や業界団体が実施するセミナーを活用)
外国人雇用は企業の競争力向上にもつながる
外国人雇用は、単に人手不足を補う手段ではなく、企業の競争力向上にも貢献します。特に、熊本県の製造業や建設業では、外国人労働者の定着が事業の安定につながるだけでなく、多様な視点や新しい技術の導入を促すきっかけにもなります。
また、TSMCの進出により、熊本県は今後、国際的な企業や人材が集まるエリアへと発展していく可能性があります。そのため、今から外国人労働者の受け入れ体制を整え、多文化共生の意識を高めることは、企業にとっても地域社会にとっても大きなメリットとなるでしょう。
企業が外国人雇用を成功させるためには、「雇用後のサポート」や「働きやすい環境づくり」が重要です。適切な労務管理を行いながら、外国人労働者が活躍できる企業を目指しましょう。
次の章では、外国人雇用に関する具体的な相談方法について解説します。
社会保険労務士に相談する理由とお問い合わせ情報
外国人雇用を進める際、労務管理や法的手続きの複雑さに悩む企業も多いのではないでしょうか。特に、適切な在留資格の確認、雇用契約の作成、労働条件の適正化、社会保険の適用などは、専門的な知識が求められます。こうした問題を適切に解決するために、社会保険労務士(社労士)への相談が有効です。
社労士は、労働法や社会保険の専門家として、企業のリスクを最小限に抑えながら、外国人雇用を円滑に進めるサポートを行います。具体的には、以下のような支援が可能です。
✅ 在留資格に応じた適切な雇用手続きのアドバイス
✅ 外国人向けの労働契約書の作成支援
✅ 労働時間管理や給与計算の適正化
✅ 社会保険・雇用保険の適用手続きの代行
✅ 外国人労働者が定着しやすい環境づくりのサポート
外国人雇用に関するお悩みがある場合は、社会保険労務士に相談することで、法令遵守しながら安心して雇用を進めることができます。お気軽にお問い合わせください。
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