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労働判例評釈

パワハラ慰謝料160万円「長時間労働が当たり前」の職場文化が問われた判決

「年度末なんだから当たり前」その一言が、パワハラ認定の決め手となりました。

2025年5月、東京地裁は、長時間労働が常態化した職場での代表取締役らの言動について、パワーハラスメントに該当するとして慰謝料160万円の支払いを命じました。
本判決は、ただの「言葉」の問題ではなく、背景にある職場環境の在り方を問うものです。熊本県内で中小企業を経営・管理されている皆様にとっても、非常に示唆に富む内容となっています。

事件の概要と背景

この裁判は、東京都内の構造物設計会社に勤務していた労働者2名が、代表取締役と取締役らからパワハラを受けたとして訴えを起こしたものです。会社では、10月から翌年3月までが繁忙期で、多くの従業員が月100時間を超える時間外労働をしていました。

判決で注目されたのは、5つの具体的な言動(例:「年度末なんだから当たり前」「徹夜をやめろと言いながら業務量を減らさない」など)と、それらが過重労働を前提とした上で行われていたという点です。裁判所はこれらを「業務上必要かつ相当な範囲を超えた不法行為」と認定しました。

長時間労働がパワハラの土壌に

この事案では、単に「発言内容が不適切」というよりも、その発言が行われた「職場の文脈」が大きく影響しています。裁判所は、月100時間を超える残業が連続し、体調を崩す従業員が出ている状況下での指導や発言は、意図の有無にかかわらずパワハラと評価されると判断しました。

熊本県内企業が学ぶべき教訓

熊本県内でも、建設、設計、製造業などで年度末に業務が集中し、繁忙期に長時間労働が発生する企業は少なくありません。そうした中、「少し厳しく言っただけ」「昔はもっと厳しかった」といった認識が、現代の基準では通用しないことを今回の判決は示しています。

経営者や人事担当者は、「労働時間の実態」まで含めたハラスメントのリスク評価を行うことが不可欠です。

社会保険労務士としての提言

私はこれまで、長時間労働の是正とハラスメント防止をテーマに数多くのご相談を受けてきました。本件は、両者が密接に関係していることを象徴する事例です。
これを機に、自社の就業実態・業務量・労働時間管理・コミュニケーション手法を見直し、「何が働きやすい環境か」を従業員と共に再考することをお勧めします。

職場文化の見直しこそがパワハラ防止の第一歩

今回の判決は、「過重労働の職場での不用意な発言」が、いかにパワハラとして厳しく評価されうるかを示しました。経営者として意識すべきは、業務負荷の実態と、それを支える職場文化の見直しです。ハラスメントのリスクは、「言葉」よりも「環境」に潜んでいます。

貴社が持続的に成長し続けるために、今こそ労務環境の再点検を行いましょう。

 


特定社会保険労務士 荻生 清高|社会保険労務士 荻生労務研究所(熊本市)
中小企業の労務トラブル防止・職場環境改善をサポートします。お気軽にご相談ください。

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