安定昇給と職能給維持が生む人材定着戦略 安藤・間の人事制度改革に学ぶ中小企業の実践ヒント

若手の早期登用と高年齢者の処遇改善を両立する――建設業大手、株式会社安藤・間の人事制度改革が、今後の中小企業の賃金制度設計に示唆を与えています。本記事では、同社の施策を踏まえ、熊本県内の中小企業経営者にとっての実務的な学びを探ります。
若手登用と年功的昇給の両立という発想
安藤・間では、若手の早期管理職登用を促すために昇格要件(滞留年数や年齢)を緩和する一方で、入社5年目までの自動昇格や非管理職層への「習熟昇給」も併用しています。これは、能力主義と年功的安定昇給の折衷モデルといえ、若手のモチベーション維持と離職防止を同時に狙った戦略と捉えられます。
「逆転現象」への実務的対処
初任給引上げ競争のなかで起こりがちな「後輩の方が給与が高い」問題。このリスクに対して、安藤・間は初任格付けとその上位等級に滞留年数を設け、自動昇格で逆転を回避しています。中小企業でも、同様の逆転現象はしばしばトラブルの火種となるため、制度設計上の重要ポイントです。
高齢社員の活用と処遇設計の工夫
60歳以降の再雇用社員について、同社は「役職・職能給の維持」「エリア限定転勤によるコスト調整」「後進育成を担うシニアアドバイザー役職の創設」など、多角的に再設計を行いました。熊本県内でも課題となりやすい「高齢社員の処遇」に対して、同社の柔軟な対応はヒントが多くあります。
「役職の格」と専門性の可視化
また、専門人材に対して「マイスター」などの新職位や役職手当を新設し、成果や専門性の可視化・処遇への反映を図っています。これは技術職が多い建設業ならではの視点ですが、中小企業においても「肩書き」「専門資格の活用」はモチベーション設計の鍵になります。
熊本県内企業への示唆
この制度全体から見えるのは、「画一的な制度」ではなく、「現場ニーズに合わせた柔軟な制度運用」の重要性です。昇給制度や再雇用設計、役職と等級の連動性など、制度設計の目的を明確にし、経営と現場をつなぐ設計が、中小企業にも求められています。
まとめ
安藤・間の事例は「大企業の話」で終わらせるには惜しいヒントが詰まっています。今後の人手不足時代、特に熊本のような地域密着型中小企業では、安定昇給・柔軟な職能制度・高齢者活用といった視点が重要になってきます。自社の人事制度を見直すきっかけとして、ぜひ参考にしてみてください。
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