「労働基準監督署調査」とは? 企業が理解すべき対応手順
労働基準監督署調査(労基署調査)は、企業の労務管理が労働基準法などの労働関連法令に適合しているかを確認するために実施される行政調査です。働き方改革の推進に伴い、時間外労働や未払い残業、ハラスメント対応など労働問題への社会的関心が高まっていることから、調査件数は年々増加傾向にあります。企業にとっては、突然の調査に備えて日頃から適切な労務管理を行うことが非常に重要です。
労働基準監督署調査の目的と役割
労基署調査の最大の目的は、労働基準法・労働安全衛生法の遵守状況を調査することで、労働者の健康と安全を守り、企業の健全な運営を促進することです。監督官は企業が法令に違反していないかを確認すると同時に、必要に応じて改善指導や是正勧告を行います。調査は必ずしも企業を罰するためだけに行われるものではなく、労務リスクを早期に発見して改善へ導くための行政的サポートの側面も持っています。社会保険労務士としては、この目的を踏まえて企業が適法状態を維持できるよう支援することが求められます。
労基署調査が行われる主なきっかけ
調査は「定期監督」「申告監督(労働者の申告によるもの)」「災害時調査」などのケースで実施されます。特に、残業代の未払いに関する申告は多く、労働者からの通報が端緒となることは珍しくありません。また長時間労働が疑われる企業や、労災発生件数が多い企業は重点監督の対象となることもあります。士業として顧問先に伝えるべきことは、原因の多くは“日常の労務管理”に潜んでおり、調査契機を未然に防ぐためには適切な体制構築が不可欠であるという点です。
調査当日の主な流れ
調査は事前予告あり・なしの両方のケースがありますが、当日はまず監督官によるヒアリングが行われ、就業規則、賃金台帳、労働者名簿、勤怠記録、36協定などの書類確認が続きます。その後、必要に応じて職場の実地確認や従業員への個別ヒアリングも行われます。社労士としては、顧問先が必要書類を速やかに提示できるよう日頃から書類整備を促し、調査時には対応手順や発言内容の注意点をサポートすることが重要です。
指摘を受けた場合の対応と是正報告
調査の結果、法令違反が認められた場合は是正勧告書が交付され、一定期間内に改善を行い「是正報告書」を提出する必要があります。是正内容には、未払い残業代の支払い、就業規則の改定、労働時間管理の見直しなどが含まれることが多いです。士業が支援する際には、単なる書類作成だけでなく、再発防止のための社内体制づくりや規程整備まで踏み込んだ実務サポートが求められます。
事前に準備しておくべき労務管理体制
労基署調査に備える最も効果的な対策は、日常的な労務コンプライアンスの徹底です。法改正に合わせた就業規則の更新、正確な勤怠管理、36協定の適正な届け出、ハラスメント体制の整備などは欠かせません。また、労使トラブルを未然に防ぐための相談窓口や労務マニュアルの整備も有効です。専門家としては、顧問先が「突然調査が来ても慌てない状態」を標準化できるよう定期監査やスポットレビューを提案することが望まれます。
まとめ
労働基準監督署調査は企業にとって負担となる側面もありますが、適切な労務管理を実現するための重要な機会でもあります。特に中小企業では人事労務の専門知識が不足しがちなため、行政書士・社会保険労務士などの専門家が日常的にサポートすることで調査リスクを大幅に低減できます。突然の調査に備えるためにも、顧問先企業には定期的な労務点検や規程整備の見直しを促し、必要に応じて専門家へ早めに相談することをおすすめします。
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