「高卒採用が難しい」を脱するために 求人票を「高校生目線」で見直すという発想

高卒採用市場は今、「超売り手市場」と言われるほど、企業にとって厳しい状況にあります。特に中小企業では、求人票に応募が集まらないという悩みが顕著です。そんな中、宮崎新卒応援ハローワークが進めている「高校生に選ばれる求人票」への取り組みは、熊本県の企業にとっても多くのヒントを含んでいます。今回は、社会保険労務士としての視点から、この取り組みを読み解きつつ、熊本の中小企業が採用活動を成功に導くための具体策をご紹介します。
「求人票の改善」がなぜ必要なのか
2025年春卒業予定の高校生を対象にした求人申込みが、6月から本格的に始まりました。しかし、宮崎県では高卒者の求人倍率が2.28倍(10年前の約2倍)となり、高卒人材の採用は非常に困難になっています。これは、熊本でも同様の傾向があり、採用難を背景に「求人票の見直し」の必要性が増しています。
特に、高校生は社会経験がないため、「仕事内容がわからない」「どんな企業か想像できない」といった理由で応募を避ける傾向があります。企業にとっては「普通に書いている」つもりでも、高校生から見れば「何の仕事かわからない」と思われている可能性が高いのです。
宮崎新卒応援ハローワークの取り組みに学ぶ「選ばれる求人票」
宮崎新卒応援ハローワークでは、5月に「高校生に選ばれる企業とは?」をテーマに説明会を実施。その中で、以下のような改善事例が紹介されました。
- 「一般事務業務全般」→「社内外の会議やスケジュール調整」
- 「ホールスタッフ業務」→「注文を正確に受け取り、キッチンスタッフに伝える」
このように、「実際に頭の中でイメージできる表現」にすることで、高校生の関心が高まることが示されています。
さらに、「研修制度あり」ではなく、「入社後1カ月間は本社での接遇マナー研修を実施」と明記することで、「安心して入社できる」印象を与える工夫も行われています。
熊本県の中小企業に求められる「発想の転換」
熊本でも、業種・規模に関わらず、「なぜ応募が来ないのか?」と悩む企業は少なくありません。その理由の多くは、求人票の表現にあります。
採用活動は「企業からのラブレター」とも言われます。特に高校生にとっては、求人票が初めて接する「社会との接点」であり、そこから受ける印象で応募の可否を決めることがほとんどです。
したがって、求人票は「事実を書くもの」にとどまらず、「未来をイメージさせるもの」であるべきなのです。
実務経験からのアドバイス 採用戦略としての求人票改善
社会保険労務士として、また企業の人事支援を行う立場から、以下のような工夫をお勧めします。
1. 仕事内容は「動詞+目的語」で具体的に
例:「書類の整理」ではなく、「社内文書を決まったルールでファイリングする」など。
2. 教育制度は「何を・いつ・どこで・どのように」伝える
例:「研修あり」ではなく、「入社後1週間は先輩社員がマンツーマンで業務を指導します」。
3. 写真・動画の活用
高校生は「雰囲気」を重視します。職場の写真や先輩社員の声を掲載するだけでも、印象が大きく変わります。
4. 「会社説明会」ではなく「体験入社」型イベントの導入
可能であれば1日職場体験を設けることで、実際の業務を肌で感じてもらえる機会を作りましょう。
まとめ 高卒採用を「他社との差別化戦略」に
求人倍率の上昇は、採用が難しいことを意味する一方で、「改善すれば差がつく」ことでもあります。つまり、求人票を通じて企業の魅力を伝える工夫を重ねることで、他社との差別化が可能になるのです。
熊本の中小企業が「採用される側」ではなく「選ばれる側」に変わるために。求人票改善という「小さな改革」から始めてみませんか?
当事務所では、「採用に結びつく求人票」の作成支援、企業の発信についての支援も行っております。お気軽にご相談ください。
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