令和8年度からどう変わる? 雇用保険助成金制度の主な改正ポイント【中小企業向けまとめ】

令和8年度から、雇用保険制度に基づく各種助成金制度に、大きな見直しが加えられます。熊本県内の中小企業経営者の皆さまにとって、雇用環境の改善や人材確保のための支援策を活用するうえで、制度変更への対応が重要です。本記事では、実務経験豊富な社会保険労務士の視点から、押さえておくべき改正ポイントをわかりやすく整理しました。
Ⅰ. 雇用保険法に基づく助成金の改正
1. 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)
- これまで出向元事業主のみが対象だった支給対象に、出向先事業主も追加されます。
- 出向から復帰後に育児休業等を取得した場合など、復帰後の6か月の全ての月において賃金が支払われない場合は、例外措置が設けられます(具体的な内容は別途決定)。
2. 早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース、Bコース、UIJターンコース)
- 「中途採用拡大コース」は、採用人数や中途採用率の要件が緩和される一方で、「賃金5%以上の上昇」が必須要件として追加されます。
- 助成単位が従来の「事業所ごと」から「1人当たり」に変更され、さらに生産性向上などの成長要件を満たす場合は10万円の加算措置が設けられます。
- 「45歳以上の中途採用に対するBコース」および「UIJターンコース」は令和7年度で廃止予定です。
3. 65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース、高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢者無期雇用転換コース)
- 「65歳超継続雇用促進コース」では、これまでの1回限りの支給制限が撤廃され、段階的な対応でも助成対象となります。定年引上げ等の措置に応じて15~240万円の助成が受けられます(現行制度は10~160万円)。
- 継続雇用制度の導入については、希望者全員を対象とする措置を講じた場合に、助成額を増額して支給されます。
- 「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」は、整備内容に応じた助成額へと見直され、能力評価制度や賃金体系整備を実施する場合は60万円(中小)まで拡充されます。
- 「高年齢者無期雇用転換コース」では、転換者1人当たりの助成額が40万円(中小)に増額されます。
4. 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース、成長分野等人材確保・育成コース)
- 「特定就職困難者コース」において、60歳以上の対象者には、ハローワーク等による就労支援(担当者制の職業相談の個別支援等)を受けていることが、新たな要件となります。
- 「成長分野等人材確保・育成コース」は利用実績が少ないため、令和7年度をもって廃止されます。
5. 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース奨励金)
- 「地域雇用開発コース」では、地域活性化雇用創造プロジェクトに参加する事業主について、正規雇用者を1名以上雇用していれば、非正規雇用者も助成対象に含まれるように見直されます。
- 「能登半島地震の特例措置」は、地域の状況を踏まえ、令和7年度限りで廃止されます。
6. 両立支援等助成金(出生時両立支援コース、介護離職防止支援コース、育休中等業務代替支援コース、柔軟な働き方選択制度等支援コース)
- 「出生時両立支援コース」では、支給対象となる事業主の条件が「常時雇用する労働者が300人以下」に統一されます。また事実婚状態にある男性労働者の育児休業も、正式に対象とされます。
- 「介護離職防止支援コース」では、所定外労働や深夜業の制限が対象から外れ、有給の介護休暇制度が独立した支給類型として新設されます。導入・利用で最大50万円、有期雇用労働者利用時には10万円が支給されます。
- 「育休中等業務代替支援コース」では、企業規模要件(常時雇用労働者数300人以下)が撤廃され、業務代替手当の助成期間上限が2年へ延長。新規雇用(派遣の受入れを含む)における1年以上の長期代替区分を新設、最大81万円の助成が新設されます(プラチナくるみん認定事業主には99万円)。
- 「柔軟な働き方選択制度等支援コース」は、障害児・医療的ケア児を育てる家庭について、子が18歳になる年度末までを対象とすることで20万円の加算が受けられるようになります。子の看護等休暇制度の有給化について、支給要件に当該制度の導入に加え、利用実績が加わります。
7. 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)
- 「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」では、賃金を7%以上引き上げた場合、機器導入費用の助成率が1/4加算される優遇措置が設けられます。
8. キャリアアップ助成金(正社員化コース)
- 「正社員化コース」では、非正規雇用労働者の処遇改善に向けた取り組みの一環として、正社員転換等をした有期雇用労働者等の数等の情報を公表した事業主に対し「情報公表加算」(中小企業で1人当たり20万円)が新設されます。
9. 人材開発支援助成金(人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コース)
- 「人材育成支援コース」では、45歳以上の労働者を対象とする「中高年齢者実習型訓練」(OJT+OFF-JT)の仕組みが新設されます。
- 「人への投資促進コース」では、長期教育訓練休暇制度を導入し、代替要員の新規雇用や職務代行手当を支給した場合の助成が加わります。
- 「事業展開等リスキリング支援コース」では、訓練終了後に設備導入と賃上げを実施した場合に、導入費用の1/2が助成される制度が追加される一方で、eラーニングの助成上限額が見直されます。
10. 地域活性化雇用創造プロジェクト(地域雇用創造利子補給金)
- 「地域雇用創造利子補給金」については、支給が完了したことから根拠規定が削除され、制度として終了します。
Ⅱ. 建設労働者の雇用改善に関する改正
1. 人材確保等支援助成金(建設分野:若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース)
- 「建設分野若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース」では、魅力発信から入職・定着までの一体的な取組が助成対象となり、定着が確認されると1人当たり42万円の上乗せ助成が支給されます。
- 雇用管理研修を実施した場合の賃金助成単価が、通常1日当たり9,500円、賃上げ時1日当たり11,500円へと引き上げられます。
2. 人材開発支援助成金(建設分野:建設労働者技能実習コース)
- 「建設労働者技能実習コース」では、技能実習に係る賃金助成単価が引き上げられます。たとえば中小建設事業主でCCUS(建設キャリアアップシステム)登録者・賃金要件を満たした場合、1人1日あたり11,405円が支給されます。
- また、「CCUS普及促進措置」は令和9年3月末まで延長されることが決定しています。
【まとめと実務への示唆】
今回の制度改正は、労働者の処遇改善や多様な働き方の推進、中高年齢者の活用といった政策的な方向性がより明確に打ち出された内容です。熊本県内の中小企業においても、人材確保や定着支援を目的とする助成金の活用がますます重要となります。各助成金の改正内容をしっかり把握し、自社の課題に合わせた選択と申請準備を進めていきましょう。
助成金制度の活用支援についてのご相談は、荻生労務研究所までお気軽にお問い合わせください。
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