「介護はまだ先」の油断が企業リスクに?厚労省の新支援ツールに学ぶ、仕事と介護の両立支援の勘所

「うちはまだ関係ない」と思っていませんか?
厚労省が提示した新たな支援ツール素案は、40歳以降の社員を対象とした情報提供や、事前研修の重要性を強調しています。中小企業経営にとって、介護離職のリスクは見過ごせない課題。制度の「正しい伝え方」と「備え」を解説します。
介護は突然やってくる——経営者こそ備えるべき時代
高齢化が進む中、介護は誰にでも訪れる可能性のあるライフイベントです。厚生労働省が今回示した支援ツールの素案は、「まだ関係ない」と感じている層にも、事前に情報提供や研修を行う必要があると明記。つまり、介護は「全社員が対象」と考えるべき時代が来たということです。
中小企業の場合、一人の社員の離職が業務に大きな影響を与えるケースが少なくありません。特に「介護による突然の離職」は、企業にとっても本人にとっても大きな痛手となり得ます。
新支援ツールの3ステップ構成とは?
今回の素案では、実務対応を次の3つのステップに整理しています。
ステップ1:前もって準備しておくこと
研修や相談窓口の整備、自社制度の事例収集と紹介など。制度の趣旨をきちんと伝えることが重視されています。
ステップ2:社員が40歳になったら
介護が現実味を帯びる年齢です。この段階で具体的な情報提供を行い、将来の選択肢を意識させます。
ステップ3:介護に直面したと言われたら
申出を受けた際に適切な対応が取れるよう、制度の説明と希望の聞き取りを行います。
制度は整っていても、「伝え方」がすべて
多くの中小企業では、「制度自体はあるが社員が知らない・使い方が分からない」という課題があります。
今回の素案では、「正しく伝える」「申出先を明確にする」といった基本動作の徹底が求められています。特に、介護休暇・介護休業・時短勤務などは、具体的な事例とともに示すことで、利用ハードルを下げることができます。
相談窓口の設置も実務的には鍵
休み方・働き方の相談は社内窓口が対応し、介護の中身に関しては地域包括支援センターなどへつなぐ。この役割分担も、中小企業にとっては有用なヒントです。すべてを自社で抱える必要はなく、外部資源と連携することが実効性を高めます。
まとめ
介護支援は、制度導入だけで終わりではありません。「誰に」「いつ」「どう伝えるか」が重要です。
経営者の皆さまには、制度の整備だけでなく、「当事者意識の醸成」まで視野に入れた取り組みをぜひ進めていただきたいと思います。
今後、厚労省からの正式ツールの公表も予定されています。今のうちに現状確認と備えを進めておくことが、持続可能な経営のカギとなるでしょう。
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