【2026年版】ストレスチェック義務化が50人未満企業にも拡大!熊本県内中小企業が今すぐ始めるべき準備とは?社労士が徹底解説

令和7年法改正で中小企業も義務化対象に
令和7年の労働安全衛生法改正により、これまで「努力義務」とされていた従業員50人未満の事業場におけるストレスチェックが、「義務」へと変わりました。施行時期は公布後3年以内、つまり令和10年度(2028年度)前後と想定されています。
熊本県内の中小企業経営者の皆さまにとって、「また新しい義務が増えた…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ストレスチェックは単なる法令遵守の問題ではなく、社員の健康を守り、経営リスクを減らすための重要な仕組みです。
本記事では、社会保険労務士の視点から、ストレスチェック義務化の背景、中小企業が直面する課題、今から始めるべき具体的な準備ステップ、外部委託のポイントまで、熊本県内の中小企業経営者に向けて徹底解説します。
ストレスチェック制度とは?基本をおさらい
ストレスチェックの目的
ストレスチェックは、労働安全衛生法に基づくメンタルヘルス対策の一環で、厚生労働省が推進する「一次予防(未然防止)」の仕組みです。従業員が自分のストレス状態を把握し、メンタル不調を未然に防ぐことを目的としています。
従来のメンタルヘルス対策は、不調になった後の相談窓口やカウンセリング、職場復帰支援など「二次予防・三次予防」が中心でしたが、ストレスチェックは「問題が起きる前に予防する」ことに焦点を当てた制度です。
制度の2つの柱
1. 個人のストレス状態の把握
従業員自身がストレスの程度を知り、早期に対処できるようにする
2. 職場環境の改善
集団分析を通して組織全体のストレス要因を見える化し、職場環境の改善につなげる
なぜ50人未満企業にも義務化されたのか?背景を理解する
メンタルヘルス不調の増加
2000年代後半以降、うつ病などのメンタルヘルス不調による休職・離職者が増加しています。厚生労働省の調査でも、精神疾患による労災請求や相談件数の増加が明確に示されており、「過労死」や「過重労働」に関する労災認定も長期的に増加しています。
小規模企業ほど影響が大きい
厚生労働省の検討会では、「小規模企業ほど、一人の不調が業務全体に影響しやすい」と指摘されています。
例えば、従業員10人の企業で1人が突然休職すると、残り9人で業務をカバーしなければなりません。これは全体の10%の戦力ダウンを意味し、残された社員への負担増、業務の停滞、顧客対応の遅れなど、経営に直結する深刻な問題となります。
一次予防の強化が国の方針
こうした背景から、国は「すべての働く人に一次予防を行き渡らせる」という政策目標を掲げ、今回の義務化拡大に至りました。
熊本県内中小企業が直面する5つの課題
1. 個人が特定されやすい(匿名性の確保が最大の壁)
従業員数が少ない事業場では、部署別の集団分析を行うと「あの人のことだろう」と推測されるリスクがあります。「回答が会社に知られるのでは?」という不安が参加率低下の要因になります。
【対処策】
– 全社一括での集団分析にする
– 10人未満のグループは分析対象外とする
– 属性別分析を行わない
2. 産業医・実施者の確保が難しい
50人未満企業は産業医選任義務がないため、専門職とのつながりがない場合が多く、実施者(医師、保健師など)の確保そのものが困難です。
【対処策】
– 外部委託サービスの活用
– 地域産業保健センター(熊本労働基準監督署管内)の活用
3. 制度運営の事務負担が大きい
実施規程の作成、従業員への説明、結果通知の仕組みづくり、面接指導フローの設計、個人情報管理ルールの整備など、多岐にわたる準備が必要です。
「総務が1人しかいない」「社長が人事も兼ねている」といった熊本の中小企業では、これらすべてを自社で対応するのは極めて困難です。
【対処策】
– 社会保険労務士への相談
– 外部委託サービスのサポート活用
4. プライバシー保護体制の整備が難しい
ストレスチェックの結果は要配慮個人情報にあたります。個人情報保護法では、特に厳格なルールが定められており、不適切な取り扱いは大きな問題につながります。
【対処策】
– 結果が事業者に渡らない仕組みの構築
– 個人データの保存・削除ルールの明確化
– 委託先の情報管理体制の確認
5. 高ストレス者対応への不安
高ストレスと判定された従業員が医師の面接指導を申し出た場合、事業者は必ず対応しなければなりません。しかし、「面接指導を依頼できる医師がいない」「業務調整の余裕がない」といった不安が大きいのが実情です。
【対処策】
– 地域産業保健センターの無料面接指導サービスの活用
– 外部委託サービスでの面接指導対応
義務化に向けて今すぐ始めるべき6つのステップ
ステップ1:制度の目的と法改正内容を正しく理解する
まず、経営者自身が制度の目的を正しく理解し、社内で共有することが重要です。
【押さえるべきポイント】
– ストレスチェックは「一次予防(未然防止)」の仕組み
– 義務化は法律で確定している
– 個人結果は事業者に渡らない
– 目的は処罰ではなく、健康支援と職場改善
「会社が従業員を監視するための制度」「評価に使われる」といった誤解を防ぐことが、制度を成功させる第一歩です。
ステップ2:実施体制の構築(実施者選任・外部委託の検討)
50人未満企業では産業医の選任義務がないため、外部委託がほぼ前提となります。
【外部委託先の選定チェックポイント】
– 資格者(医師・保健師等)の体制は十分か
– 個人情報保護の仕組みは適切か
– 集団分析の方法は小規模企業に適しているか
– 高ストレス者面接指導の対応範囲はどこまでか
– 費用体系(追加費用含む)は明確か
熊本県内にも複数のストレスチェック委託サービスがありますので、複数社を比較検討しましょう。
ステップ3:実施規程(ルール)の整備
実施前に必ず実施規程を整備します。
【実施規程に記載する主な内容】
– 対象者(正社員、契約社員、パートなど)
– 実施時期(年1回、何月に実施するか)
– 調査票(57項目等)
– 実施者と実施方法
– 結果通知の方法
– 面接指導フロー
– 個人情報の取り扱いルール
– 集団分析の方法
– 不利益取扱いの防止
外部委託サービスによってはテンプレートが提供されるため、効率的に整備できます。
ステップ4:従業員への事前説明と不安解消
制度が成功するかどうかは、従業員が安心して参加できるかに大きく左右されます。
【従業員への説明ポイント】
– 個人結果は本人にのみ通知される
– 事業者は個人結果を取得できない(法令で禁止)
– 結果を評価・人事に利用しない
– 目的は健康支援と職場改善である
– 面接指導は本人が希望した場合に行われる
特に熊本の中小企業では、社長と社員の距離が近いからこそ、「社長に知られたくない」という心理的ハードルが高い場合があります。丁寧な説明が不可欠です。
ステップ5:ストレスチェックの実施と結果管理
実施にあたっては、以下の業務が発生します。
– 受検用URLまたは調査票の配布
– 回収と未回答者へのフォロー
– 結果の本人への通知
– 高ストレス者からの面接指導申出の受付
– 面接指導の調整
– 面接指導結果に基づく医師の意見聴取
– 必要な措置の検討
– 労働基準監督署への報告書提出(50人以上の場合)
外部委託先のサポート範囲を事前に確認しておくことが重要です。
ステップ6:集団分析の活用と職場環境の改善
ストレスチェックの最も重要な段階は、集団分析に基づく改善活動です。実施して終わりではなく、結果を活かすことが本当の目的です。
【職場改善の具体例】
– 作業量の偏りの是正
– 業務プロセスの見直し
– コミュニケーション機会の確保(朝礼、ランチミーティング)
– 管理職との1on1強化
– 休暇取得状況の是正
熊本の中小企業は、大企業と比べて意思決定が早く、改善を即座に実行できる強みがあります。この強みを活かしましょう。
外部委託のポイント|費用と選び方の完全ガイド
費用相場と構造
【一般的な費用相場】
– 1人あたり:500〜1,500円程度
– Web方式は低価格、紙方式は割高
【追加で発生しやすい費用】
– 高ストレス者の面接指導費用(1件15,000〜30,000円)
– 集団分析レポートの追加料金
– 紙調査票の印刷費・回収費
– 導入サポート・社内説明会のオプション費用
– 最低利用料金(30,000円前後)
【費用シミュレーション例】
– 最低利用料金30,000円で従業員10人の場合 → 実質1人あたり3,000円
– 最低利用料金30,000円で従業員5人の場合 → 実質1人あたり6,000円
見積では、「総額でいくらになるのか」を必ず確認しましょう。
選び方の5つの重要ポイント
1. 実施者(資格者)の体制が整っているか
2. 個人情報の保護体制が十分か
3. サポート範囲が明確であるか
4. Web方式・紙方式の選択肢があるか
5. 契約内容・追加費用の明確さ
社労士に相談するメリット|専門家活用で費用とリスクを最適化
ストレスチェックは労働安全衛生法に基づく制度であり、運用には法的理解と社内規程の整備が欠かせません。
【社労士に相談するメリット】
1. 不要なオプション契約を防ぎコストを最適化
法令上何が必須か、どのオプションが不要かを判断できるため、ムダな追加費用を避けられます。
2. 実施規程・説明資料の整備で外部委託費用を削減
社労士が実施規程や従業員向け説明資料を作成することで、外部委託のオプション費用を削減できます。
3. 法令違反リスクの回避
個人情報保護法、労働安全衛生法、労働契約法など、複数の法令に関わるため、専門家のチェックが不可欠です。
4. 助成金の活用支援
ストレスチェック実施に活用できる助成金(団体経由産業保健活動推進助成金など)の申請をサポートできます。
5. 継続的な職場改善のサポート
集団分析結果をもとに、具体的な職場改善策を一緒に考え、実行までサポートします。
罰則について|未実施に罰金はないが報告義務違反には罰則あり
ストレスチェック未実施自体には直接的な罰則規定はない
現在の労働安全衛生法では、未実施自体に対する罰金はありません。今回の法改正後も同様です。
ただし労基署への報告義務違反には罰則がある
労働安全衛生法第120条により、報告書を提出しなかった場合や虚偽の報告をした場合には、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
安全配慮義務違反のリスク
さらに重要なのは、安全配慮義務違反として問われるリスクです。従業員がメンタルヘルス不調に陥り、その原因が職場環境にあると判断された場合、ストレスチェック未実施が安全配慮義務違反と認定され、数千万円の損害賠償を命じられたケースもあります。
まとめ:早めの準備が成功のカギ
令和10年度前後の義務化施行まで、まだ時間があるように感じるかもしれません。しかし、制度の理解、実施体制の整備、外部委託先の選定、社内説明など、準備には複数のステップが必要です。
【義務化直前に慌てて対応すると…】
– 外部委託先の混雑
– 費用の高騰
– 社内理解不足
– 制度がうまく機能しない
【早めに準備を始めるメリット】
– 余裕を持って委託先を選定できる
– 従業員への丁寧な説明ができる
– 制度を職場改善のチャンスにできる
– 社員の信頼を得られる
ストレスチェックは「やらされる制度」ではなく、「社員を守り、会社を強くするための仕組み」です。
熊本県内の中小企業が、これからも元気に続いていくために、今から少しずつ準備を進めていきましょう。ご不明な点があれば、お近くの社会保険労務士にお気軽にご相談ください。
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