賃金のデジタル払い、ついに本格運用へ?熊本県内中小企業が知っておきたいポイント

2023年4月にスタートした『賃金のデジタル払い』制度。厚生労働省の最新発表によれば、すでに1万7,000件以上の口座が労働者によって利用され、取扱金額も1.3億円に達しています。制度開始から1年が経過し、徐々に広がりを見せるこの新しい賃金支払い方法に、熊本県内の中小企業はどう向き合うべきなのでしょうか。
制度の概要:賃金デジタル払いとは?
賃金のデジタル払い』とは、資金移動業者(例:PayPay)を通じて、労働者の口座に直接賃金を支払う制度です。従来の銀行振込に代わる新しい選択肢として、2023年4月に制度が正式に創設されました。導入には労働者の同意と指定業者の活用が必要で、現在はPayPay㈱など4社が指定されています。
利用状況の現状と広がり
厚生労働省の報告によると、2024年度末時点での利用口座件数は1万7210件、月間の総取扱金額は1.3億円に上りました。一口座あたりの平均残高は約4,168円と、現時点では小口利用が中心と見られますが、今後の拡大が注目されます。
熊本県内中小企業が押さえるべき実務ポイント
1. 制度導入は義務ではないが、希望者には配慮が必要
労働者の同意による任意制度ですが、対応を求められた場合の準備はしておくべきでしょう。
2. 給与規程の改定が必要な場合も
デジタル払いを導入するには、就業規則や給与規程の見直しが必要になるケースがあります。
3. 送金上限や残高制限に留意
1口座あたりの残高上限が100万円と決まっているなど、実務上の制約があります。高額給与者の場合は慎重な運用が求められます。
今後に向けた視点:選択肢としてどう位置付けるか
すべての労働者に一律導入するものではなく、あくまで選択肢の一つとして、若年層やスマホネイティブ層の利便性を高める施策と捉えることが現実的です。中小企業にとっては、従来の給与支払体制を見直す契機ともなり得る制度といえます。
関連記事
-
出生数68万人台と過去最少 少子化の加速と熊本県の企業が直面する課題 出生数68万人台と過去最少 少子化の加速と熊本県の企業が直面する課題 -
AI活用と勤務設計で実現する「働きやすさ」と「生産性」 岐阜県事例に学ぶ中小企業の実践策 AI活用と勤務設計で実現する「働きやすさ」と「生産性」 岐阜県事例に学ぶ中小企業の実践策 -
教員給与 改正法が成立―中小企業にとって「働き方改革」の示唆とは? 教員給与 改正法が成立―中小企業にとって「働き方改革」の示唆とは? -
労基法違反繰返しは「必ず送検」へ:熊本の中小企業に求められる労基署対応とは 労基法違反繰返しは「必ず送検」へ:熊本の中小企業に求められる労基署対応とは -
ゴールドマン・サックスの生成AI導入が示す未来:中小企業も他人事ではない ゴールドマン・サックスの生成AI導入が示す未来:中小企業も他人事ではない -
「介護はまだ先」の油断が企業リスクに?厚労省の新支援ツールに学ぶ、仕事と介護の両立支援の勘所 「介護はまだ先」の油断が企業リスクに?厚労省の新支援ツールに学ぶ、仕事と介護の両立支援の勘所