精神障害の労災支給が過去最多に カスタマーハラスメント対応が企業の喫緊課題に

厚生労働省が発表した令和6年度の「過労死等の労災補償状況」で、精神障害に関する労災支給件数が初めて1000件を超え、過去最多を記録しました。特にカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)に起因する件数の大幅な増加が注目されます。熊本県内の中小企業も無関係ではいられません。本記事では、最新データをもとにその背景と今後企業が取るべき対応策を考察します。
精神障害の労災支給、初の1000件超え
令和6年度の精神障害に関する労災請求件数は3780件、支給決定件数は1055件に達し、いずれも過去最多を更新しました。特に支給決定件数が初めて1000件を超えた点は、現場の深刻さを物語っています。
医療・福祉業界での負担が顕著
業種別では、医療・福祉業界が最も多くの請求・支給件数を占めています。熊本県内でも、病院や介護施設などでの人手不足・業務負荷が背景にあると考えられます。
カスハラによる精神障害が急増
支給決定の要因を見ると、「上司からのパワハラ」に次いで多かったのが「カスハラ」でした。顧客や取引先からの迷惑行為により精神障害を発症したケースが108件に達し、「セクハラ」による件数を初めて上回りました。これは令和5年9月の認定基準改定で、カスハラが正式に認定要因に加えられた影響もありますが、実態として被害が深刻化している表れでもあります。
熊本県内中小企業への示唆
中小企業では、顧客対応を現場任せにしているケースが多く、現場担当者がストレスを抱え込む傾向があります。今後は「カスハラ対応マニュアルの整備」「従業員のストレスチェックの強化」「第三者機関との連携による相談体制の構築」など、組織的な対策が不可欠です。
労災認定リスクと企業の責任
精神障害が労災認定されれば、企業は補償責任を負うだけでなく、労働基準監督署の是正勧告や企業イメージへの悪影響も避けられません。ハラスメント防止は経営課題であるという認識が求められます。
まとめ
精神障害の労災支給が過去最多となった背景には、職場環境の複雑化と対人ストレスの増加があります。熊本県内の中小企業こそ、今のうちに対応策を講じることが、従業員の健康を守り、組織の持続的成長を支えるカギとなります。
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