TSMC効果とインバウンド回復で好調も、利益圧迫の影も——熊本主要企業2024年度決算の労務的視点

熊本県内の主要企業40社の2024年度決算では、6割弱の企業が増益または黒字転換と、全体として堅調な業績が見られました。インバウンド需要とTSMC進出効果が経済を押し上げる一方、人件費の増加が利益を圧迫する要因となっています。今回はこの動向を、中小企業経営者にとっての「労務管理のヒント」として読み解きます。
業績好調の背景:インバウンドと半導体産業の波
2024年度、熊本の観光・小売業界では訪日客(特に台湾・香港)需要の回復が顕著で、ホテル日航熊本や鶴屋百貨店などが好調でした。また、TSMCを中心とした半導体関連の波及効果により、金融機関や建設、不動産分野でも活発な投資と融資が行われました。
人件費上昇と利益圧迫:労務コストの再考が急務
一方で、特に小売・運輸・サービス業では「人材確保のための賃上げ」が増益の足を引っ張る結果に。熊本県内でも労働力不足が深刻化しており、単なる賃上げではなく、採用・定着戦略の抜本的な見直しが必要です。人材育成・キャリアパス設計・働き方改革の具体化が、利益確保と両立するカギとなります。
赤字・減益企業の特徴:構造的課題も明らかに
自動車販売では、メーカーの不祥事が販売減につながり、直接的な打撃を受けた企業も。こうした外的要因への対応には、事業ポートフォリオの見直しや、新規事業・サービス開発など「柔軟性ある経営体制」が求められます。
中小企業への示唆:成長の波にどう乗るか
今回の決算分析は、「波に乗れた企業」と「乗り遅れた企業」の差を浮き彫りにしました。中小企業にとっても、地域経済の追い風を逃さないためには、労務戦略と経営戦略を一体で考える視点が不可欠です。単なる制度対応にとどまらず、自社の強みを活かした「選ばれる職場づくり」を早急に進めるべきタイミングに来ています。
まとめ
熊本経済は確かに活気づいていますが、その果実をつかめるかは「人の力」にかかっています。経営者として、今こそ人材戦略を軸に据えた経営再構築が求められています。
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