「辞める前に相談を」増加する介護離職と企業に求められる両立支援とは

介護を理由に離職する従業員が年間7.3万人──。団塊世代が75歳を超える今、企業は従業員の仕事と介護の両立をどのように支援すべきか。2024年4月の法改正をふまえ、中小企業経営者が取るべき対応と備えについて解説します。
介護離職が止まらない社会背景
厚生労働省の雇用動向調査によると、2023年に介護・看護を理由に離職した人は7.3万人にのぼります。50代以降の従業員が中心で、今後も増加傾向が続くと見込まれています。特に2025年問題(団塊の世代全員が後期高齢者となる年)を前に、介護と仕事の両立は多くの家庭と職場にとって喫緊の課題です。
介護離職を防ぐには「相談」と「制度活用」が鍵
「介護に直面する前に相談してくれていれば、離職を防げた」という例は多いです。実際、介護休業の制度内容や取得条件を正しく理解していないケースが多く、「93日間つきっきりで介護する期間」と誤解されがちです。
介護離職を防ぐには、介護支援制度の正しい周知と、相談しやすい職場環境の整備が必要不可欠です。今回の法改正では、40歳を迎える従業員への情報提供が企業に義務付けられ、対応の早期化が促されています。
熊本の中小企業が今すぐできる対応
1. 介護休業制度の社内周知の強化
就業規則への明記だけでなく、定期的な研修やガイドブックの配布で従業員の理解を深めましょう。
2. 40歳前後の従業員に対する情報提供
該当者に対し、介護保険制度や地域包括支援センターの存在を個別に伝える仕組みを検討してください。
3. 「相談できる」風土づくり
介護は話しづらいテーマです。上司や人事担当者が定期的に面談を行い、プライベートな事情も聞き取れるような信頼関係を築くことが大切です。
4. 柔軟な働き方の導入
在宅勤務やテレワーク、短時間勤務制度の導入・運用を通じて、介護と両立しやすい就業環境を整備しましょう。
介護離職は企業にとってもリスク
介護離職は、優秀な人材の喪失というコストを企業にもたらします。さらに、復職が困難なため、再雇用・教育コストもかさみます。逆に、仕事と介護の両立支援に積極的な企業は、従業員からの信頼や定着率の向上にもつながります。
経営者こそ「早めの一歩」を
介護離職は、本人・家族・企業すべてにとって不幸な結果を招きます。しかし、制度の理解とコミュニケーション次第で避けられるケースも多いのです。
熊本で活動する中小企業の経営者の皆様、ぜひ今一度、介護と仕事の両立支援体制について見直してみませんか。御社にとっても、従業員にとっても、大きな安心につながるはずです。
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