小規模事業所の賃上げ実態が明らかに|平均改定率4.7%、パート時給も過去最高に【令和7年・厚労省調査】

令和7年の上半期における小規模事業所の賃上げ状況を、厚生労働省が調査・公表しました。熊本を含む全国の中小企業経営にとって、「他社の賃上げ状況」は、経営判断の一つの指標になります。
今回は、実施率や業種間格差、パート労働者の賃金動向、地域別の違いまで、実務に活かせる要点をわかりやすく整理しました。
49.2%が賃上げ実施、平均改定率は4.7%
令和7年上半期(1~6月)に賃金引上げを実施した小規模事業所(常用労働者30人未満)は49.2%で、前年の42.8%から6.4ポイント上昇。平均改定率は4.7%と3年連続で4%台を維持しています。
一方で、26.7%は「今年は賃上げしない」と回答しており、企業間で二極化が進んでいることも明らかです。
業種・地域で差が顕著に
業種別では、最も実施率が高い「医療・福祉」が67.5%、最も低い「生活関連サービス・娯楽業」は36.8%と、30ポイント以上の差が生じました。
地域別(A~Cランク)では、Bランクが5.2%、Cランクが4.8%と比較的高めですが、Aランク(都市部中心)は4.0%とやや抑えられる結果に。とくに飲食・小売などサービス業では改定率が低下傾向です。
なお、熊本県の地域別ランクは、Cランクに区分されています。
パート賃金の上昇続く|定着対策の重要性増す
パートタイム労働者の時給は全国平均で1,273円(前年比36円増)と、全業種で1,000円を超える水準に。上昇率は2.9%で、過去10年間ほぼ一貫してフルタイムを上回る伸びを示しています。
求人市場でも募集時給が上昇しており、定着率や人材確保には「時給+働きやすさ」の両面からのアプローチが不可欠となっています。
経営者への示唆|“様子見”はもはや少数派に
今年は賃上げを「7月以降に実施予定」とする企業が33.5%と、例年の15%前後から大きく増加。最低賃金改定をにらんで判断を先送りする傾向も見られました。
ただし、「今年も実施しない」企業は減少傾向にあり、賃金改定が“常識化”しつつあると言えます。今後は「人件費を原資としてどう捻出するか」がますます経営課題として問われるでしょう。
まとめ
熊本県内の中小企業においても、従業員確保や定着を図るために、他社の動向を注視しつつ、自社に適した賃金戦略が求められます。特に、業種特性や地域格差を踏まえた柔軟な対応と、パートも含めた総合的な処遇改善が、今後の競争力を左右すると言えそうです。
関連記事
-
【注意喚起】2025年熊本県の最低賃金引き上げと「月給制の落とし穴」―経営者が確認すべきポイント 【注意喚起】2025年熊本県の最低賃金引き上げと「月給制の落とし穴」―経営者が確認すべきポイント -
令和7年度版キャリアアップ助成金の注意点 申請前に見直すべき労務管理とは 令和7年度版キャリアアップ助成金の注意点 申請前に見直すべき労務管理とは -
日本版DBSガイドライン素案公表:子どもに関わる事業者が今から準備すべきこと 日本版DBSガイドライン素案公表:子どもに関わる事業者が今から準備すべきこと -
定年延長が進む中、熊本の中小企業が備えるべきこととは? 定年延長が進む中、熊本の中小企業が備えるべきこととは? -
休憩時間の「見せかけ」が企業リスクに 丸亀製麺・労災再認定事案から学ぶ労務管理の盲点 休憩時間の「見せかけ」が企業リスクに 丸亀製麺・労災再認定事案から学ぶ労務管理の盲点 -
熊本県の医療機関が直面するカスタマーハラスメント問題と経営リスク 熊本県の医療機関が直面するカスタマーハラスメント問題と経営リスク
