熊本県最低賃金1,034円へ引き上げ 「賃上げ支援」への現実的対応を考える

熊本でも賃金の大幅改定へ
熊本労働局は2025年1月1日から、県内の最低賃金を時給1,034円(+82円)に引き上げると発表しました。
この改定幅は過去最大級であり、全国的な物価上昇や人材確保難を背景に「賃上げの流れを止めない」ことが狙いです。
10月28日には、熊本労働局長が熊本市の大西市長に対して、中小企業への追加支援を要望。
「国の助成金だけでは不安」「地元自治体としての後押しを」との現場の声を代弁する形となりました。
経営現場のリアル:賃上げの“二重の壁”
社会保険労務士として中小企業の現場を見ていると、今回の賃上げは「必要性」と「現実性」の間で揺れるテーマです。
– ✅ 必要性:人材確保のためには、地域でも賃上げが不可欠。
– ⚠️ 現実性:単価転嫁が進まず、原価やエネルギーコストが高止まりしている中での82円アップ。
特に、労働集約型のサービス業・製造業では、人件費比率の上昇が収益を直撃します。
「助成金があっても一時的」「継続的な原資が見えない」という声はもっともです。
求められるのは「助成金+構造転換支援」
単なる賃金補助ではなく、
- 業務効率化投資(デジタル化・自動化)
- 単価交渉支援・地域連携による価格転嫁の後押し
- 中小企業版の人的資本経営支援
といった「構造的な底上げ」への支援が欠かせません。
熊本市や県、商工団体が一体となって「生産性向上 × 持続的賃上げ」の枠組みを整備できるかが鍵になります。
当事務所からの視点:賃上げを“守り”ではなく“攻め”に変える
賃上げ対応は「コスト増」ではなく、組織力を再設計する契機とも言えます。
職務設計・人事評価制度の見直し、教育投資、業務の標準化…。
これらを同時に進めることで、「賃上げが経営力強化につながる」構造をつくることが可能です。
当事務所でも、
– 賃上げ対応のための人件費試算・助成金活用
– 人事制度・評価設計の再構築
– 生産性向上を見据えた業務設計
などを通じて、熊本の中小企業の「持続的賃上げ支援」に取り組んでいます。
まとめ:地域全体で“持続可能な賃上げ”を
今回の賃上げは、単に「最低賃金が上がる」というニュースではなく、
地域経済の転換点を示す動きでもあります。
経営者・行政・労働者が「対立」ではなく「協働」で、
持続可能な賃上げをどう実現していくか——。
その答えを熊本から発信できるよう、実務の現場から提案を続けていきたいと思います。
📩 賃上げ対応や助成金活用のご相談は
社会保険労務士 荻生労務研究所(熊本市)まで。
現場の実情に即した「現実的な打ち手」を一緒に考えましょう。
関連記事
-
36協定の無効が命取りに? 外国人実習生の残業で送検、他人事ではない36協定のリスク 36協定の無効が命取りに? 外国人実習生の残業で送検、他人事ではない36協定のリスク -
スタッフがサングラス? 熊本城の「暑さ対策」から考える、企業に求められる熱中症対策の現在地 スタッフがサングラス? 熊本城の「暑さ対策」から考える、企業に求められる熱中症対策の現在地 -
奨学金代理返還支援制度による人材確保 社会保険料取扱と助成金に着目を 奨学金代理返還支援制度による人材確保 社会保険料取扱と助成金に着目を -
熊本の労働市場に何が起きる? TSMC進出後の人手不足と賃金上昇の未来 熊本の労働市場に何が起きる? TSMC進出後の人手不足と賃金上昇の未来 -
愛知県「カスハラ防止条例」から学ぶ、熊本の中小企業が取るべき対策とは? 愛知県「カスハラ防止条例」から学ぶ、熊本の中小企業が取るべき対策とは? -
企業に「カスハラ対策」義務化へ │改正労働施策総合推進法の公布と熊本県中小企業の対応ポイント 企業に「カスハラ対策」義務化へ │改正労働施策総合推進法の公布と熊本県中小企業の対応ポイント
