はじめに―「働けない」ではなく「働き方を変える」という選択肢
人手不足が続くなか、「求人を出してもなかなか応募がない」「採用しても定着しない」といった悩みを抱えている中小企業は少なくありません。
2026年版中小企業白書でも、2010年代以降、多くの業種で人手不足感が強まっており、今後、生産年齢人口の減少によって人手不足がさらに深刻化する可能性が指摘されています。
こうした状況では、新しい人を採用することだけでなく、今いる社員にできるだけ長く働き続けてもらうことも重要な人手不足対策ではないでしょうか。
ところが、本人に働く意欲があっても、これまでと同じように働くことが難しくなることがあります。
たとえば、自身が病気になり治療を続けながら働くことになった場合、子育てのため勤務時間を短くする必要が生じた場合、あるいは親などの介護を担うことになった場合です。
フルタイム勤務は難しくても、勤務時間や勤務日数、仕事内容などを調整すれば、仕事を続けられるケースもあるでしょう。
そのとき会社として考えたいのが、「これまでどおり働くか、退職するか」という二者択一ではなく、「働き方を変えて雇用を継続する」という選択肢です。
一方、働く時間を減らせば、一般的には給与も減少します。給与が大きく下がったにもかかわらず、それまでの給与をもとにした社会保険料の負担が続けば、社員にとっては働き方を変えるうえでの負担の一つとなります。
そこで2027年1月から、治療、育児、介護などと仕事を両立するために就労を調整し、給与が大きく減少した場合について、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額を早期に見直すことができる新しい特例が始まります。
この記事では、この新特例を単なる「社会保険の手続きの変更」としてではなく、治療・育児・介護と仕事との両立を支え、大切な人材の離職を防ぐために会社が活用できる仕組みの一つという観点から解説します。
治療・育児・介護による離職は、会社にとって人材流出でもある
本人に働く意思があっても離職につながることがある
治療や育児、介護を理由に会社を辞める人のすべてが、「仕事を辞めたかった」わけではありません。
本当は働き続けたいと思っていても、これまでと同じ勤務時間や働き方を続けることが難しくなり、結果として退職を選ばざるを得ないケースがあります。
育児については、その傾向を示す調査があります。
厚生労働省の令和7年度「仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」では、妊娠・出産・育児等を理由として離職した人のうち、離職前に正社員・職員だった人について、「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立が難しかったため」と回答した割合は、男性44.1%、女性41.7%でした。
つまり、育児を理由に離職した人の中には、仕事を続ける意思がありながら、両立が難しいために退職した人が少なくないということです。
さらに、仕事を続けるためにどのような支援があればよかったかという質問では、「気兼ねなく休める休業、休暇制度」のほか、「1日の勤務時間を短くする制度」を挙げる人も多くなっています。
働くことそのものが難しいのではなく、「今までと同じ働き方」が難しくなっている場合があることに注目したいところです。
介護離職は中核人材の流出につながることも
介護についても、中小企業にとって他人事ではありません。
厚生労働省によると、2022年の雇用労働者のうち、介護をしている人の割合は55~59歳で12.3%となっています。およそ8人に1人です。
50代といえば、長年の経験や専門知識を持ち、管理職や現場の責任者として会社を支えている社員も多い年代です。
厚生労働省も、働き盛りの世代には企業で管理職や職責の重い仕事を担う人が少なくなく、経験を積んだ熟練従業員や管理職などの中核人材が介護との両立に悩んで離職することは、企業にとって大きな損失になると指摘しています。
特に中小企業では、一人の社員が担当している仕事の範囲が広く、その人にしか分からない顧客情報や技術、業務上のノウハウを持っていることも珍しくありません。
そうした社員が退職すれば、採用活動だけでなく、業務の引継ぎ、新しい社員の教育、残された社員への負担増など、さまざまな影響が生じます。
介護と仕事の両立支援は、社員個人への福利厚生というだけでなく、会社の中核となる人材を失わないための経営課題として考える必要があります。
治療と仕事の両立支援も企業に求められる時代に
病気についても考え方が変わってきています。
病気になったら仕事を辞めて治療に専念するというケースだけでなく、通院や治療を続けながら働く人もいます。
こうした状況を背景として、2026年4月1日からは、病気を抱える労働者の「治療と就業の両立支援」が事業主の努力義務となりました。
厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」では、相談に対応できる体制を整えることに加えて、病気の状態や治療方法などを踏まえながら、必要な就業上の措置や配慮を検討していくことが求められています。
病気になったことだけを理由に「もう働けない」と考えるのではなく、治療を続けながらどのような働き方なら可能なのかを、本人と会社が一緒に考えることが重要になっています。
人手不足への対応というと採用活動に目が向きがちですが、採用が難しい時代だからこそ、今いる社員が事情を抱えたときに働き続けられる選択肢を用意することも重要です。
そして、勤務時間などを調整して雇用を継続するとき、問題の一つとなるのが給与減少後の社会保険料です。
これまでの社会保険制度では給与減がすぐに反映されない場合があった
治療、育児、介護と仕事を両立するために勤務時間を短くした場合、働く時間が減ることで給与も下がることがあります。
では、給与が下がれば健康保険や厚生年金保険の保険料もすぐに下がるのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
社会保険料は「標準報酬月額」で決まる
会社員が加入する健康保険・厚生年金保険の保険料は、毎月実際に支給された給与額そのものに保険料率を掛けて計算しているわけではありません。
給与などの報酬を一定の幅で区分した「標準報酬月額」を決定し、それをもとに毎月の保険料を計算します。
標準報酬月額は原則として毎年1回見直されます。これが「定時決定」と呼ばれる仕組みです。
一方、昇給や降給などによって給与が大きく変わった場合、一定の要件を満たせば年の途中でも標準報酬月額を見直します。
これが「随時改定」、給与計算などの実務では「月額変更」と呼ばれる手続きです。
通常の随時改定では3か月の報酬を確認する
通常の随時改定では、基本給や時給、各種手当などの「固定的賃金」に変動があり、その後の3か月間に支払われた報酬の平均額から算出した標準報酬月額と、従来の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合など、一定の要件を満たす必要があります。
要件を満たした場合には、固定的賃金が変動した月から数えて4か月目から標準報酬月額が改定されます。
たとえば4月に固定的賃金が下がった場合、4月・5月・6月の3か月間の報酬を確認し、要件を満たせば7月から標準報酬月額を変更する、というのが基本的な考え方です。
つまり、給与が下がったからといって、その月から直ちに標準報酬月額も下がるわけではありません。
治療や育児、介護との両立のため勤務時間などを調整し、給与が大きく下がった場合でも、従来の仕組みでは標準報酬月額をすぐに実際の収入に近づけられないケースがありました。
こうした問題に対応するため、2027年1月から新しい特例が始まります。
2027年1月から治療・育児・介護による給与減に新しい特例
2027年1月1日から、治療、育児、介護と仕事を両立するために働き方を調整し、その結果として給与が大きく減少した人について、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額を早期に見直すことができる新しい特例が始まります。
厚生労働省は、この特例を設けた趣旨について、「療養等と仕事の両立を支援する観点」から、実際の収入の状況に合った標準報酬月額へ、より速やかに改定できるようにするためとしています。
どのような人が対象になるのか
対象となるのは、治療、育児または介護と仕事を両立するため、本人と職場の合意のもとで勤務時間などの働き方を調整した人です。
対象となる事情には、社員本人の療養だけでなく、家族の療養に伴う看護、小学校就学前の子の育児、要介護認定または要支援認定を受けている家族の介護などがあります。
こうした事情と仕事を両立するために、所定労働時間を短くしたり、時間外労働を抑制したりするなどの「就労調整」を行い、その結果として給与が大きく減少した場合に特例を検討します。
ただし、治療、育児、介護をしていれば自動的に対象になるわけではありません。
主な要件として、
- 治療、育児または介護と仕事を両立するための就労調整が行われていること
- 就労調整によって報酬が急減していること
- 急減後の報酬から算出した標準報酬月額が従来より2等級以上低下すること
- その状態が3か月以上続くことがあらかじめ見込まれること
- 特例による改定について本人が書面で同意していること
などがあります。
従来の月額変更との大きな違い
通常の随時改定では、固定的賃金の変動があり、その後3か月間の報酬を確認したうえで、原則として4か月目から標準報酬月額を変更します。
今回の特例では、固定的賃金が変わったかどうかにかかわらず対象となる可能性があります。
さらに、実際に3か月が経過するまで待つ必要もありません。
就労調整による給与の減少が3か月以上続くことがあらかじめ見込まれ、その他の要件も満たして届出を行えば、報酬が減少した月の翌月から標準報酬月額を改定することができます。
たとえば4月から就労調整を始め、4月の給与が大きく減少した場合、通常の随時改定であれば原則として4月・5月・6月の報酬を確認し、7月から改定します。
一方、新しい特例の要件を満たせば、4月の報酬をもとに標準報酬月額を決定し、5月から改定することが可能になります。
給与が減少した後、実際の収入に見合わない社会保険料を負担する期間を短くできることが、この特例の大きな特徴です。
具体例―親の介護で勤務時間を短縮した社員の場合
たとえば、長年会社で働いている社員から、
「親の介護が必要になり、しばらくこれまでと同じ時間働くことが難しい」
という相談を受けたとします。
本人には仕事を続ける意思があり、会社としても雇用を継続したいと考えています。
そこで本人と会社が相談し、一定期間、勤務時間を短縮することにしました。
勤務時間が短くなったことで給与も大きく減少します。
新しい特例の要件を満たせば、報酬が減少した月の翌月から標準報酬月額を見直すことができます。
つまり、
介護が必要になる
→ 退職ではなく勤務時間を調整する
→ 給与が減少する
→ 標準報酬月額を早期に見直す
→ 働き方を変えながら雇用を継続する
という選択を、社会保険制度の面から支える仕組みが新たに加わります。
ただし、社会保険料が下がるからといって、それだけで治療・育児・介護と仕事の両立が実現するわけではありません。
また、この特例は会社の判断だけで自由に適用できる制度でもありません。
この制度で経営者に知っておいてほしいこと
会社が勝手に社会保険料を下げられる制度ではない
今回の特例を利用するためには、対象となる社員本人の書面による同意が必要です。
厚生労働省の通知では、事業主はあらかじめ本人に対して、この特例による改定が将来の年金額や健康保険の給付額に影響することを十分に説明し、本人の同意を得ることとされています。
「社会保険料が安くなりますから手続きをしておきます」という会社側だけの判断では進められません。
本人に制度の内容と影響を説明したうえで、特例を利用するかどうかを判断してもらう必要があります。
将来の年金や健康保険の給付にも影響する
標準報酬月額が下がれば、健康保険・厚生年金保険の毎月の保険料負担は軽くなります。
一方、厚生年金の将来の年金額は、加入期間だけでなく、その期間の標準報酬月額などをもとに計算されます。
そのため、標準報酬月額が低くなった期間があれば、将来受け取る老齢厚生年金などの額に影響する可能性があります。
また、健康保険から支給される傷病手当金や出産手当金も、一定期間の標準報酬月額をもとに支給額が計算されるため、特例による標準報酬月額の引下げが給付額に影響する場合があります。
したがって、
「現在の社会保険料負担が軽くなること」と「将来の年金や健康保険の給付に影響する可能性があること」の両方を理解したうえで判断する
必要があります。
就労状況が元に戻ったときにも手続きがある
治療が一段落したり、育児・介護の状況が変わったりして、社員が従来の働き方に戻ることもあります。
就労調整が終了し、報酬が回復した結果、現在の標準報酬月額と比べて2等級以上上昇する場合には、固定的賃金の変動があったかどうかにかかわらず、標準報酬月額を改定するための届出が必要になります。
つまり、給与が下がったときに標準報酬月額を下げて終わりではありません。
会社としては、その社員の就労調整がいつ終了したのか、その後給与がどの程度回復したのかまで把握しておく必要があります。
大切なのは「手続き」より前の会社と社員の話し合い
ここまで社会保険の仕組みを説明してきましたが、今回の特例を利用すること自体が目的ではありません。
本来考えたいのは、治療、育児、介護などの事情を抱えた社員が、働き方を調整しながら仕事を続けられる環境をつくることです。
社員から相談を受けたとき、まず考えたいのは、
「この社員が仕事を続けるためには、何を変えればよいのか」
ということです。
社員から相談を受けたときに、すぐ退職の話にしない
これまでと同じ働き方ができなくなったとしても、それは必ずしも「働けなくなった」という意味ではありません。
1日8時間の勤務は難しくても6時間なら働けるかもしれません。週5日の出勤が難しくても、勤務日数を減らせば続けられる場合があります。
社員から相談を受けたときには、たとえば次のようなことを本人と確認していきます。
- 現在、仕事をするうえで何が難しくなっているのか
- どの程度の勤務時間・勤務日数であれば働けるのか
- その状態はどのくらい続く見込みなのか
- 現在の仕事内容をそのまま続けられるのか
- 出退勤時間の変更や在宅勤務などで対応できないか
- 利用できる休暇・休業制度はないか
もちろん、本人が希望する働き方をすべて会社が実現できるとは限りません。
特に人員に余裕のない中小企業では、他の社員への負担や業務運営への影響も考える必要があります。
だからこそ、本人の希望と会社の事情の双方を確認しながら、継続可能な働き方を探していくことが重要です。
社会保険だけでなく労働条件全体を考える
勤務時間を変更することになれば、社会保険以外にもさまざまな問題が関係してきます。
労働時間、勤務日数、仕事内容、賃金、休暇・休業、就業規則、社会保険などを一体として考える必要があります。
社会保険の特例だけを先に考えてしまうと、「保険料を下げるために勤務時間をどうするか」という話になりかねません。
順番は逆です。
まず本人と会社が、仕事を続けるための働き方を考える。その結果として労働時間や給与が変わり、新特例の要件に該当するのであれば社会保険の取扱いも検討する。
この順序が大切です。
「一度決めたら終わり」にしない
治療、育児、介護を取り巻く状況は変化します。
そのため、一度決めた働き方をそのまま続けるのではなく、「この働き方で無理なく続けられているか」「職場に過度な負担が生じていないか」「勤務時間を見直せる状況になっていないか」などを、一定のタイミングで確認することも重要です。
両立支援では、本人も周囲の社員も無理なく働き続けられる方法を考えることが必要です。
そして、どれだけ制度を整えても、社員が相談できなければ両立支援は始まりません。
社員から相談されたときに「辞めるしかない」と結論を急がず、「働き続ける方法がないか一緒に考えてみよう」と対応し、会社だけでは判断が難しい問題は人事労務担当者や専門家につなぐ。
そのような相談の流れを作っておくことが、人材流出を防ぐ第一歩になります。
2027年1月に向けて企業が準備しておきたいこと
今回の特例への対応を、人事労務担当者だけの問題にしないことも重要です。
社員から相談を受けたときの社内ルートを決める
治療、育児、介護について、社員が最初に相談する相手は人事労務担当者とは限りません。
直属の上司に相談することも多いでしょう。
管理職に求められるのは、社会保険制度などを詳しく説明できることではありません。
大切なのは、その場で結論を出さず、適切な社内担当者につなぐことです。
「治療・育児・介護などについて社員から相談を受けた場合には、人事労務担当者へ連絡する」といったルールを決めておくだけでも対応は変わります。
自社の就業規則や制度を確認する
次に、自社にはどのような選択肢があるのかを確認しておきましょう。
たとえば、
- 育児・介護休業や短時間勤務などの制度
- 子の看護等休暇や介護休暇
- 休職制度
- 年次有給休暇や会社独自の休暇制度
- 始業・終業時刻の変更
- 時差出勤やフレックスタイム
- テレワーク
- 一時的な職務・配置の変更
などです。
すべての制度を新しく導入する必要があるという意味ではありません。
業種や仕事内容、従業員数によって実現できる働き方は異なります。
重要なのは、「当社では何ができるのか」を事前に把握しておくことです。
実際の運用と就業規則の内容が一致しているかも確認しておきましょう。
「誰に相談すればよいか」を社員にも伝えておく
社員が「こんなことを会社に相談していいのだろうか」と迷っている間に状況が深刻になり、退職を決意してから会社に報告するという事態は避けたいところです。
大掛かりな相談窓口を設置しなくても、
「治療や育児、介護によって現在の働き方を続けることが難しくなった場合には、直属の上司または人事担当者に相談してください」
と明確にしておくだけでも違います。
退職の申し出を受けてから対応するのではなく、働き続ける方法を検討できる段階で相談してもらう。
そのための環境をつくることが重要です。
該当しそうな社員がいる場合は、働き方を変更する段階で相談する
実際に社員から相談を受けた場合には、勤務時間、給与、利用できる休暇・休業制度、就業規則との整合性、社会保険の新特例の対象になるかなど、複数の問題を整理する必要があります。
そのため、判断に迷う場合には、給与を変更してから社会保険の手続きだけを相談するのではなく、働き方を変更する段階で社会保険労務士に相談することをおすすめします。
早い段階で相談すれば、労働条件と社会保険の両方を確認しながら、本人と会社にとって現実的な働き方を検討できます。
2027年1月の新特例への対応をきっかけに、
「社員から治療・育児・介護について相談されたら、当社ではどう対応するのか」
を一度確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ―両立支援を「人材を守る仕組み」として考える
治療、育児、介護は、特別な人だけに起こる問題ではありません。
これまで会社を支えてきた社員が、ある日、病気の治療を始めることになるかもしれません。子育てとの両立が難しくなることもあれば、親の介護を担うことになるかもしれません。
そのとき、これまでと同じ働き方ができなくなったからといって、その社員が「働けなくなった」とは限りません。
勤務時間や勤務日数、仕事内容などを一時的に調整することで、これまで培ってきた経験や能力を生かしながら仕事を続けられる場合があります。
人手不足が続く中、新しい人材を採用することはもちろん重要です。しかし同時に、今いる社員が事情を抱えたときに、退職せずに働き続けられる環境をつくることも、人材確保の一つではないでしょうか。
2027年1月から始まる社会保険の新しい特例は、そのための選択肢を一つ増やすものと考えることができます。
ただし、今回の記事でお伝えしたかったのは、「新しい社会保険の手続きが始まる」ということだけではありません。
大切なのは、社員から相談を受けたときに、
「今までと同じように働けないなら仕方がない」と結論を急ぐのではなく、「どうすれば働き続けられるだろうか」と考えることです。
会社として可能な働き方を本人と話し合い、必要に応じて労働時間、仕事内容、賃金、休暇・休業、就業規則などを確認する。その結果として給与が変わるのであれば、社会保険についても適切な対応を検討します。
2027年1月の新特例の開始を、自社の社会保険手続きを確認するだけで終わらせず、「当社では、治療・育児・介護を抱えた社員が働き続けられるだろうか」と考える機会にしてみてはいかがでしょうか。
もし社員から治療・育児・介護と仕事との両立について相談を受け、「どのような働き方にすればよいのか」「給与や社会保険をどう取り扱えばよいのか」「就業規則はこのままでよいのか」と判断に迷う場合には、働き方を変更する前の段階から社会保険労務士へご相談ください。
社員にとって無理がなく、会社にとっても継続できる働き方を一緒に考えることが、人材流出を防ぎ、長く働ける職場づくりにつながります。
参考情報・出典
本記事の作成にあたり、以下の厚生労働省・中小企業庁の資料を参考にしています。
- 厚生労働省「療養、育児又は介護により報酬が急減した者についての健康保険法及び厚生年金保険法の標準報酬月額の保険者算定の特例について」(令和8年7月31日)
2027年1月1日から始まる今回の標準報酬月額の特例について、対象者、適用要件、手続き、本人同意などを定めた通知。 - 厚生労働省「仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業(令和7年度)」
育児等を理由として離職した人の離職理由や、仕事を続けるために必要だった支援などについて、本記事中のデータの参考とした調査。 - 厚生労働省「仕事と介護の両立~介護離職を防ぐために~」
介護を担う労働者の継続就業や、企業による仕事と介護の両立支援について解説した厚生労働省の情報。 - 厚生労働省「治療と仕事の両立について/治療と就業の両立支援指針」
2026年4月から事業主の努力義務となった治療と就業の両立支援について、企業に求められる取組などを示した資料。 - 中小企業庁「2026年版 中小企業白書」
中小企業を取り巻く人手不足の状況や、人材確保・人材活用に関する分析について参考とした資料。

