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生成AIの活用

⑩最新セミナーから学ぶ!生成AI活用Q&Aと中小企業の安全運用ポイント

熊本市の特定社会保険労務士、荻生清高です。

全10回にわたり、中小企業の人事労務における、生成AI活用とリスク管理について説明します。
10回目の今回は、生成AIの活用でよくある質問Q&Aと、中小企業で安全に運用するポイントを解説します。

なお、2025年4月28日に行った、当事務所セミナーの内容をまとめています。


よくある質問でわかる生成AI活用のコツと落とし穴

生成AIの労務管理分野への導入が進むなか、「導入してみたいが具体的に何から始めればいいのか」「どんなリスクに注意すべきか」「実務でよくあるトラブルは?」という声を多くいただきます。ここでは、社労士として実務支援・セミナー講師を務める立場から、よくある質問に沿って生成AI活用のコツと注意点をわかりやすく解説します。これから活用を検討する企業様や労務担当者にとって、初めの一歩とリスク回避の参考になる内容です。

Q1:生成AIはどのように使い始めればよいですか?

まずは、「普段の業務で面倒だなと感じている作業」をピックアップしましょう。例えば、求人広告の原稿づくり、社内問い合わせに対する文面作成、簡易的な規程文のドラフト作成などです。これらを生成AIに投げてみると、ほぼスピード感を持ってアウトプットが得られます。AIから出てくる文章は7割~8割完成のドラフト程度と捉え、そこから修正し仕上げるイメージです。最初から完璧を求めず、試行錯誤しながら活用の幅を広げましょう。

また、面倒に感じる問い合わせ文の返信文や議事録の作成支援、助成金申請書類チェックなどもAI活用の良い入口です。無理に難解な法律相談や評価業務の全自動化を目指すのは時期尚早で、人間のチェックと併用しながら進めることが成功の秘訣です。

 

Q2:どうすればAIにうまく質問や指示を出せますか?

生成AIの労務活用で躓くひとつが「プロンプト(AIに指示するテキスト)の作り方」です。しかし最近はAI自身に「効果的な質問の仕方を教えてください」「必要な情報があれば質問してください」と尋ねることで、自然にスムーズなコミュニケーションが可能になっています。

私自身も初めは色々なプロンプト集を試しましたが、かえって面倒に感じ、現在はその都度AIに質問を促し、不足情報を補うスタイルで運用しています。ポイントは、具体的な条件や制約(例えば「中小企業向けで丁寧語で説明してください」など)を明確に伝えること。そして疑問があれば追加でAIに質問させて情報精度を高めることです。

 

Q3:情報漏洩のリスク対策はどうしたらよいですか?

生成AIは多くのサービスで入力情報を学習に利用するケースがあり、結果的に機密情報が外部に流出する危険性があります。会社名、従業員氏名、顧客情報、売上数字などの個人情報・機密情報をAIに入力しないのは絶対ルールです。

実務上は、まず情報入力前に必ずテキストエディタ等にコピーし、固有名詞や特定情報をマスキング・削除します。また、AIサービスのプライバシー設定や学習利用の取り扱いを管理者が把握し、「学習利用停止」を必須設定として運用します。これらはツールにより異なりますので、利用規約やFAQを必ず確認してください。

さらに、社内に生成AI利用ガイドラインを明文化し、全従業員に周知徹底することも効果的です。違反した場合の報告義務や懲戒規定も規定し、リスク感度を上げましょう。

 

Q4:AIが誤った情報を出す“ハルシネーション”への対応策は?

ハルシネーションとは、AIが根拠のない誤情報や虚偽情報を「それらしく」生成してしまう現象です。労務管理では不存在の判例を示す、誤った法改正の解釈を載せるなどのリスクがあります。

このため、AIの生成文を鵜呑みにせず、必ず法令対応に精通した人(社労士や労務担当)がチェックを行います。特に就業規則や労働契約、社内規定の重要文書は二重三重のレビュー体制を構築し、正確性と法適合性を担保することが欠かせません。

また、AIが返す回答の一貫性や根拠を常に意識し、不自然な断定表現や曖昧表現がないかを監査します。不安な点は専門書や公的資料などでファクトチェックしましょう。

 

Q5:著作権侵害を避けるために気をつけることは?

生成AIはウェブ上の著作物を膨大に学習しているため、類似文書や画像が生成される可能性があります。求人広告や社内規定作成で他社の文書を丸写しした例などは侵害リスクが高まります。

具体的には、他社の規定文をそのままAIに投入して類似文を得たり、有名作家の文体を真似た表現を依頼することは控えましょう。自社独自性の高い表現を心がけ、AI生成後も専門家が著作権面を含めたチェックを行うことが重要です。

社員教育で著作権の基礎知識を伝え、安易なコピー・引用を防ぐ体制も有効です。

 

Q6:社内ルールや従業員教育はどのように進めるべきでしょうか?

生成AI活用は、単にツールを導入するだけでは効果が出ません。周知されたルールと理解の浸透、定期的な教育・研修の実行が必須です。

まずはAI利用目的・禁止事項・情報入力時の注意点・チェック義務などを明文化し、就業規則や情報セキュリティ規程と一体として整備します。就業規則への組み込みも効果的です。

導入時には社労士による説明会や研修を実施し、具体的なトラブル事例やリスクを共有して危機意識を醸成します。年1~2回のフォローアップやQ&Aセッションを設け、変化に対応する体制づくりも重要です。

さらに日常的に利用ログを確認し、違反や誤使用を早期発見・改善するサイクルを確立しましょう。

 

Q7:専門家への相談はどんなときに必要?

生成AI導入は便利な一方で、リスク管理や法令遵守は専門知識が欠かせません。判断に迷う場合やAIアウトプットの法令適合性チェック、社内ルールの策定・見直し、教育プログラムの設計、労務トラブル対応などは必ず社労士等の専門家に相談してください。

また継続的に最新の改正法律や判例情報をフォローアップし、生成AIの最新版動向を踏まえた運用改善を行うことも専門家の助力が望ましいです。

生成AIは業務効率化に大いに貢献しますが、その利便性ゆえに油断すると情報漏洩や誤情報拡散のリスクも高まります。上述のQ&Aを参考にしつつ、必ず「人間の確認体制」と「明確な社内ルール」「従業員教育」をセットで進めることが中小企業の安全かつ持続可能なDX推進の鍵です。社労士として私も、自社のリスク管理と成長を両立させるサポートを積極的に行っています。

 

セミナー実例に学ぶ、成功企業の運用ポイントとトラブル事例

近年、生成AIの活用が中小企業の労務管理の現場に急速に浸透しています。その中で、私が主催するセミナーにおける実例を通じて確認された成功企業の運用ポイントと、実際に発生したトラブル事例から得られた知見を共有します。これから生成AI導入を検討される企業様や労務担当者の皆さまが現実課題に即し、適切に対応できることを目指すものです。

まず成功企業に共通するポイントを整理します。一つ目は、生成AIの役割を「業務の補助ツール」と明確に位置付けていることです。AIに過剰な期待をかけず、生成されたアウトプットはあくまで「案」であると認識し、必ず専門家や社内の労務担当者が法令遵守や運用実態に合わせて精査し、修正を加える運用体制が構築されています。この「人間の目」と「AIの補助」を融合させることが、誤った情報の拡散や法令違反リスクの低減にとって最重要です。

二つ目は、情報漏洩対策を徹底している点です。成功企業では部署間で連携し、AIに入力するデータは必ず事前にマスキングや要約を行い、個人名や会社固有の数字など機密性の高い情報を排除しています。AIサービスの利用規約を詳細に確認し、学習データとしての使用設定を停止することも運用ルールの一環としています。こうした厳格な情報管理は、生成AIの性質を踏まえたリスク回避策として欠かせません。

三つ目は、社内ルールの整備と従業員教育の充実です。生成AIの使用目的、禁止事項、情報入力に関する注意点、生成物のチェック体制などを文書化し、就業規則や情報管理規程に組み入れています。また導入時だけでなく、年に一度以上のフォローアップ研修やQ&Aセッションを設け、利用者のリテラシーを継続的に向上させていることが成否を分けていると言えます。

このような成功のポイントを踏まえつつ、現場では幾つかのトラブルも報告されています。実例として挙げられるのは、ある企業で生成AIに社名や従業員の個人情報を含む情報を入力し、学習用データとして蓄積された疑いが生じたケースです。この結果、情報管理上の重大なインシデントとなり、社内調査や関係者説明に多大なコストが発生しました。原因は、AI利用ルールの周知が不足していたこと及び、入力情報の適切なマスキング手順が運用されていなかったことにあります。

また、AIが生成した求人広告文案の中に、実態と異なる勤務条件の記述が紛れ込んだ事例もあります。これはAIがインターネット上の一般的な情報から無批判に文章を生成したことに起因し、誤った情報が基で応募者とのトラブルに発展しました。結果として、企業ブランドに影響を及ぼす可能性があったため、AI出力に対する専門家の細やかなチェック体制が不可欠であることが改めて認識されています。

さらに、AIに依存しすぎて人間の確認が疎かになり、一連の評価文書や就業規則改訂案に誤解を招く曖昧な表現が混入する問題も散見されました。これに対しては、労務経験豊かな社労士が二重三重にレビューすることでリスクを最小化する対策が推奨されています。

これらトラブルから得た教訓は、いわば「技術活用の罠」を認識し、適切な「人間とAIの協働体制」を整えることに尽きます。AIの便利さに過信せず、社内体制としては以下の5点に注力するのが望ましいです。

  1. 利用目的と禁止事項を明確化し、全従業員に周知
  2. 個人情報・機密情報の取り扱いを厳格にルール化し徹底させる
  3. AI出力に対する多重チェック体制を構築し、誤情報・著作権リスクを排除
  4. 定期的な社員教育とリスク意識の醸成、疑問点相談体制の整備
  5. AIシステムの設定・バージョンアップを常に監視し、社内ルールのアップデートを図る

最後に、私自身の経験からも、生成AIの導入を単なるツール導入として終えず、DX推進の一環として労務管理の質と効率を両立させるプロジェクトに位置付けることが、中小企業の持続的成長には極めて重要だと考えます。セミナーで共有している実例を基に、トラブルの先回り対応と成功への道筋を構築ください。中小企業にとって、これらの運用ポイントは単なる理論ではなく、実践的かつ現実的な助言として必ず役立つはずです。

 

社労士が提案する中小企業向けAI導入チェックリスト

生成AIの実務活用が急速に広まる中、中小企業にとって労務管理分野でAIを安全かつ効果的に取り入れることは、業務効率化やコンプライアンス強化の大きな鍵となっています。しかし、情報漏洩や誤情報生成、著作権問題といったリスクも同時に存在し、単にツールを導入するだけではなく、適切な管理と運用体制が不可欠です。私、荻生清高が現場支援やセミナーの中で提案している、AI導入の成否を分ける「中小企業向けAI導入チェックリスト」をここで詳しく解説します。これは単なる導入手順ではなく、労務管理を担う実務者が「安心して使いこなせる」ための実践的な指針であり、DX推進の基盤となるべき内容です。

 

1.導入目的の明確化と社内浸透

まず、社内で生成AI導入の目的を明確に共有することが重要です。「効率化のため」や「質の高い労務文書作成の支援」といった目的を具体的に言語化し、役員や管理職、社労士担当者、従業員まで共通認識として浸透させます。これにより、目的外の利用や誤用を防止し、AI活用を「業務支援ツール」と位置付けることが可能となります。また、目的達成に必要な業務範囲や利用シーンを限定し、無制限の利用を避けることがリスク低減につながります。

 

2.情報管理ルールの策定と運用体制構築

生成AIは入力情報を学習やサーバー保存に利用する可能性があるため、人事情報や個人情報、営業秘密などの機密情報の取扱いは最重要課題です。AIを活用する際には、

  • 社名、人名、顧客名、具体的な売上数値などの固有情報は必ずマスキングや抽象化を徹底する
  • AIサービスのデータ利用設定(学習利用の有無、保存期間など)を管理者が把握し、必要に応じて学習利用停止設定を適用する
  • 情報漏洩リスクを踏まえた入力禁止事項を明文化し、全従業員に周知徹底する

ことが必須です。これらを含めた情報管理に関わる運用ルールを就業規則や情報セキュリティ規程、AI利用規定などに盛り込み、厳格に管理します。運用管理者を任命し、定期的にルール遵守状況を監査する仕組みも合わせて整備しましょう。

 

3.利用範囲と権限の限定

従業員がAIを利用できる範囲や業務内容、対象データを限定します。例えば、

  • 一般社員は求人広告・社内案内文など文書ドラフト作成に限定
  • 労務担当者や管理者のみ就業規則改訂案の作成に利用可能
  • AI入力前に必ず専門家が機密情報除去・要約を確認

といった具体的な権限設計を行い、無制限の利用や不適切な情報投入を未然に防ぎます。システムのアクセス権設定やログ管理と合わせ、利用履歴の確認ができる体制が望ましいです。

 

4.AI生成物の多重チェック体制の確立

生成AIが作成する労務文書や評価資料には誤情報(ハルシネーション)が含まれる潜在的リスクがあります。そのため、

  • AI生成文書は必ず労務専門家(社労士や法務担当者)による精査・修正を義務付ける
  • 表現の曖昧さや法令適合性をチェックし、必要に応じて法改正や最新判例を反映させる
  • 特に就業規則や労働契約書など重要文書は二重チェック以上の承認フローを設ける

ことが重要です。人間によるファクトチェックを欠かさず、AIのアウトプットをそのまま使用しない運用を徹底しましょう。

 

5.従業員への教育と定期フォローアップ

AI活用に関するルールや注意点は、単に文書で示すだけでは定着しません。導入時には

  • 効果とリスク、具体的なトラブル事例を含めた集合研修を実施
  • ワークショップやケーススタディで実践的理解を促進
  • 定期的なフォローアップ研修を設け、最新情報や運用課題を共有

して、従業員の意識向上と安全運用の実践を支援します。社内相談窓口やヘルプデスクを用意し、疑問や不安の早期解消も重要です。教育には必ず労務管理専門家やITリスク管理者が講師として関与しましょう。

 

6.継続的なモニタリングと運用ルールの改善

生成AIや関連システムはアップデートを繰り返し、法改正や技術変化に応じて社内運用ルールも常に見直す必要があります。具体的には、

  • 利用ログの定期監査でルール違反や誤使用を早期発見する
  • 不適切事例の分析をもとに運用ルールや教育内容を再設定
  • 経営層、労務担当者、IT部門、社労士専門家で定期的に運用状況をレビューし改善策を検討

するPDCAサイクルを確立します。これにより、運用ルールは生きたルールとなり、変化に強い組織体制を構築できます。

 

7.専門家(社労士)との連携強化

労務管理における生成AI活用は専門的な法令知識とリスク管理ノウハウが不可欠です。AI導入の企画・運用・ルール策定、AI生成物のチェック・修正、教育プログラム設計において、社会保険労務士が重要なパートナーとなります。私が代表を務める荻生労務研究所では、生成AI導入に関する支援をワンストップで提供しており、中小企業に最適な体制構築もご提案可能です。

 

本チェックリストは、生成AIを単なるツールではなく、人事労務の質的向上を実現する「信頼できる業務パートナー」として活用するためのロードマップです。特に中小企業においては、過度な期待や安易な使用を避け、十分な準備と体制づくりを踏まえてDXを推進することが持続的な成長に直結します。現場の皆さまが安心してAIを活用できるよう、今後も丁寧かつ実務に沿ったサポートを続けて参ります。

 

全10回の連載記事は、これで終わりです。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 


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特定社会保険労務士 荻生 清高|社会保険労務士 荻生労務研究所(熊本市)
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