警備業の倒産が倍増 人手不足時代における「働きやすさ」の再設計とは?

2025年上半期、警備業の倒産が前年の倍となる過去最多ペースで進行しています。熊本県内でも他人事ではありません。慢性的な人手不足、低賃金、劣悪な労働環境という三重苦が中小事業者を直撃するなか、人材確保と事業継続の鍵となるのは「働きやすさの再設計」です。
警備業の現状:倒産急増と背景要因
帝国データバンクの発表によると、2025年上半期の警備業倒産件数は16件。前年同期の倍で、すでに年間最多を上回る水準です。主な要因は以下の3点です:
- 警備員の給与水準が全産業平均より約6万円も低い(月給26万8300円)
- 正社員・非正社員問わず約9割の企業が人手不足を訴える
- 深夜・早朝勤務を含む不規則なシフト体系
特に中小・零細の警備会社にとって、低単価の受注構造が利益圧迫要因となり、賃金上昇に対応できず廃業に追い込まれるケースが増えています。
熊本県内中小企業への示唆
警備業の現状は、警備に限らず多くの労働集約型産業に共通する課題です。熊本県内でも建設、介護、物流など類似の構造的問題を抱える業種が多数存在します。では、どう対処すべきか。
「働きやすさ」改善の実務的アプローチ
人材定着や採用難を乗り越える鍵は、単なる賃上げではなく「働きやすい環境づくり」にあります。以下の施策は、警備業に限らず中小企業全体にとっても有効です:
1. シフト管理の見直し:
勤務希望を取り入れた柔軟なスケジューリングシステムの導入
2. 業務のデジタル化・省力化:
AI監視カメラ、遠隔モニタリングシステムの活用による人的負担の軽減
3. 職務評価と報酬制度の再構築:
業務の危険度や拘束時間に応じた報酬体系の整備
4. 福利厚生の拡充:
資格取得支援、健康診断の充実、社内表彰制度などの導入
まとめ:中小企業の経営者に求められる視点
今後、人口減少と高齢化の進行により、人材の確保は一層困難になります。そのなかで生き残る企業は「選ばれる職場づくり」に本気で取り組んでいるところです。業界構造の限界を嘆くよりも、自社の強みを活かした改善策の実行が、倒産リスクを遠ざけ、永続的経営への第一歩となります。
当事務所では、働き方改革や人事制度見直しのサポートを行っております。御社の「働きやすさ」向上に向けた第一歩、ぜひご相談ください。
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