「キャリア権」が働き方を変える?中小企業が考えるべき「仕事が好き」な職場の条件

「キャリア権」という言葉をご存知でしょうか?これは今、働く人々の人生全体にわたる「職業選択と成長の自由」を保障しようという新しい人権概念です。2025年6月、認定NPO法人キャリア権推進ネットワークが総会を開き、具体化に向けた活動展開が示されました。熊本県内の中小企業にとっても、「働きやすさ」や「やりがい」を見直すきっかけとなる重要な話題です。
「キャリア権」とは何か?
キャリア権とは、働く人が自分の人生を主体的に設計し、希望するキャリアを実現するための支援を社会が保障すべき、という考え方です。近年では配置転換において従業員のキャリア形成についての期待に配慮すべきという労働判例が出ており、注目されています。。
キャリア権推進ネットワークの総会で語られた、危機感と展望
6月の総会では、理事長・諏訪康雄氏が登壇し、「仕事が好き」と答える人の割合が減っていること、自発的に学び直す人が1割しかいない現実に警鐘を鳴らしました。さらに、将来的に日本の一人当たりGDPがロシア以下の45位にまで落ち込む可能性にも言及。これは決して他人事ではなく、地方の中小企業にとっても深刻な問題です。
熊本の中小企業にとっての示唆
熊本県内の企業も、人材確保や定着に苦労しているケースが多いのではないでしょうか。今後は「キャリア支援」が企業の責任の一部となり、「働きやすい環境」だけでなく「働きがいのある職場」をどう設計するかが問われていきます。
たとえば:
- 従業員のキャリア面談を定期的に実施
- 社内でのスキルアップ制度の整備
- 中途採用者向けのリスキリング支援
こうした取り組みが「仕事が好き」と感じてもらえる職場につながります。
社労士としての視点:裁判例にも見る「キャリア配慮」の必要性
最近では、労働裁判においてもキャリア権的な視点を重視する判例が出始めています。
たとえば安藤運輸事件(名古屋高裁令和3年1月20日判決)や医療法人社団弘恵会事件(札幌地裁令和3年8月5日判決)では、使用者が労働者のキャリアに対する期待に一切配慮しないまま配置転換を行ったことが、権利濫用として無効とされました。
キャリア権が憲法上の人権として明文化されたわけではありませんが、判例上も「従業員のキャリアに一定の配慮をすること」が企業のリスク管理・組織運営上の重要な責務になりつつあります。
こうした配慮は、紛争の未然防止だけでなく、従業員のエンゲージメント向上にもつながることから、特に中小企業こそ意識すべきポイントです。
まとめ
「キャリア権」という抽象的な概念が、熊本の企業経営にどう関係するのか。最初はピンとこないかもしれません。しかし、社員一人ひとりが「自分の働き方に納得し、前向きに仕事と向き合える」ことこそが、持続可能な経営の鍵です。
このテーマについて、今後も当事務所のブログやセミナー等で取り上げてまいります。興味のある方はぜひご相談ください。
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